お題:隠された嘔吐 必須要素: 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:903字
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拒食症
 びちゃびちゃと雨が降り続いている。

 僕らは傘をさして歩いていた。

 いわゆる、あいあい傘というヤツだ。それもとびきりの美少女と一緒に。

「…………」

 少女は喋らない。銀色の髪に色白の肌。人間離れした美貌。

 町外れ。雨の中、言葉もなく立ち尽くしていた彼女。僕は見かねて声をかけた。よろしければ一緒に行きませんか、と。下心があったことは否定できない。どこどこまでも平凡な男だけど、こんな美少女と少しでもお近づきになれれば、とは思っていた。

 果たして彼女は何も答えなかったが、ただ頷いた。どこか行きたいところがあるのだろうか。そこまで一緒に行けないかな。そんなふうに思って、僕は傘を差し出した。そして彼女の超然とした雰囲気にいつの間にか主導権を握られ、あいあい傘のまま、彼女に連れられるようにして歩いていた。

「……止みませんね」

 僕が独り言のように呟くと、それはまさしく独り言に終わった。

「……くっ」

 うめき声が漏れる。

 傘を握る手が――痛い。

 じくじくと。傘を握る手が濡れている。ぽたぽたとしずくが降り注ぐ。

 じわじわと手が、溶けている。雨にゆっくりと、溶かされていた。

 雨――そう呼んでいいのだろうか、このどことなく濁った液体のシャワーは。

 吐き気をもよおすような、すえた臭いは。

 スニーカーが腐食しつつある。空からは何が降り注いでいるのだ? 僕にはわからない。

 町外れにいたはずなのに、いつの間にかアスファルトがボロボロに崩れたような、廃墟にいるのはなぜだ。ところどころ、水たまりに浮かぶピンク色の塊は何だ?

 僕は、『何』と一緒に歩いている?

「……ここ、どこですか?」

 美少女は答えない。

「……僕、帰れるんですかね」

 独り言。

 びちゃびちゃびちゃ。

「……ごぽぁ」

 やがて、隣を歩く――それが、音を発した。

 びちゃびちゃびちゃ。

「…………」

 ああ、彼女はまた、食べたくもないようなものを食べて、吐き出すことになるんだろうな、と。

 僕は薄れゆく意識の中で、ぼんやりと感じた。
 
 びちゃびちゃ。
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