お題:暗黒の消費者金融 必須要素:海老のしっぽ 制限時間:30分 読者:49 人 文字数:1093字

エビフライと借金取り
「あといくらだ?」
社長は味噌汁をすすりながら俺にそう尋ねた。
「ざっと600万ってとこですかね。でも社長、やっぱりあの利子はやりすぎじゃあ」
「金がないってやつに貸しただけだ。返せる宛もないのに借りた奴に何を同情してるんだ」
動く箸を止め、弾丸のようなするどい眼光で俺をにらんだ。
「は、はい」
相変わらずおっかねえ。社長の気迫には誰にも敵わない。
「お前もさっとそれ食って行くぞ」
社長のエビフライ定食はあっという間になくなっていた。慌てて俺も蕎麦をすすり、お茶をなどへ流し込んだ。車に乗り込み、社長はビートルズのCDをかけながら取り立ての家へと向かう。
「いいかお前、取り立ててって言うのはな、ロマンチックな世界じゃないんだ」
社長の持論が飛び交う中、俺は気づいてしまった。社長の歯の間に挟まる巨大なエビフライの尻尾に。きっと社長も慌てて食べたから気がつかなかったんだ。
「ってことだ。わかったか?」
やばい。エビフライの尻尾の存在感が強すぎて何も入ってこなかった。だが指摘をしまうと何を言われるかわからない。
「さすがです! 社長!」
とりあえずこう言っておけば社長は納得して、俺に話しかけることはなくなる。案の定社長は無言の運転の時間に戻った。
取り立て先の古アパートに着くころにも、社長はエビフライの尻尾の存在に気がつかない。このままでは客にバレてしまい、社長がなめられてしまう。
「社長! 便所は済ましてきましたか?」
「当たり前だ。飯屋で済ました」
鏡を見る機会を設けたかったが、無駄に終わった。
社長は客の部屋のインターホンを押す。
「おいこら! いるんだろ! 今月分まだもらってねえぞ!!」
地獄の底から響くような大声で社長は言うが、開いた口の歯の隙間から見えるエビフライの尻尾の癖が強すぎる。
「うるせえなあ」
渋々出てきた髭面の客はジロジロと社長の顔を見た。
「あんた、どこで飯食ってきた?」
客は社長に物怖じせずにそう言う。
「それが今関係あるのか?」
「田中食堂のエビフライの尻尾は、歯に挟まりやすい。だが絶品だ」
客は社長の歯に指をさす。
「わかるよ、社長さん」
「お前も、田中食堂を知っていたのか」
「ああ、あそこはいい店だ。あんたに金を借りてでも行きたかったね」
その後二人は小一時間田中食堂について語り合い、最終的にその客の借金の利息分はチャラにすると言う結論に至った。
「いいか? 田中食堂好きに悪人はいない。お前もよく覚えておけ」
社長は歯の隙間からエビフライの尻尾をのぞかせながらそう言った。
せめて取れよ尻尾。
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