お題:暗黒の消費者金融 必須要素:海老のしっぽ 制限時間:30分 読者:30 人 文字数:1093字

エビフライと借金取り
「あといくらだ?」
社長は味噌汁をすすりながら俺にそう尋ねた。
「ざっと600万ってとこですかね。でも社長、やっぱりあの利子はやりすぎじゃあ」
「金がないってやつに貸しただけだ。返せる宛もないのに借りた奴に何を同情してるんだ」
動く箸を止め、弾丸のようなするどい眼光で俺をにらんだ。
「は、はい」
相変わらずおっかねえ。社長の気迫には誰にも敵わない。
「お前もさっとそれ食って行くぞ」
社長のエビフライ定食はあっという間になくなっていた。慌てて俺も蕎麦をすすり、お茶をなどへ流し込んだ。車に乗り込み、社長はビートルズのCDをかけながら取り立ての家へと向かう。
「いいかお前、取り立ててって言うのはな、ロマンチックな世界じゃないんだ」
社長の持論が飛び交う中、俺は気づいてしまった。社長の歯の間に挟まる巨大なエビフライの尻尾に。きっと社長も慌てて食べたから気がつかなかったんだ。
「ってことだ。わかったか?」
やばい。エビフライの尻尾の存在感が強すぎて何も入ってこなかった。だが指摘をしまうと何を言われるかわからない。
「さすがです! 社長!」
とりあえずこう言っておけば社長は納得して、俺に話しかけることはなくなる。案の定社長は無言の運転の時間に戻った。
取り立て先の古アパートに着くころにも、社長はエビフライの尻尾の存在に気がつかない。このままでは客にバレてしまい、社長がなめられてしまう。
「社長! 便所は済ましてきましたか?」
「当たり前だ。飯屋で済ました」
鏡を見る機会を設けたかったが、無駄に終わった。
社長は客の部屋のインターホンを押す。
「おいこら! いるんだろ! 今月分まだもらってねえぞ!!」
地獄の底から響くような大声で社長は言うが、開いた口の歯の隙間から見えるエビフライの尻尾の癖が強すぎる。
「うるせえなあ」
渋々出てきた髭面の客はジロジロと社長の顔を見た。
「あんた、どこで飯食ってきた?」
客は社長に物怖じせずにそう言う。
「それが今関係あるのか?」
「田中食堂のエビフライの尻尾は、歯に挟まりやすい。だが絶品だ」
客は社長の歯に指をさす。
「わかるよ、社長さん」
「お前も、田中食堂を知っていたのか」
「ああ、あそこはいい店だ。あんたに金を借りてでも行きたかったね」
その後二人は小一時間田中食堂について語り合い、最終的にその客の借金の利息分はチャラにすると言う結論に至った。
「いいか? 田中食堂好きに悪人はいない。お前もよく覚えておけ」
社長は歯の隙間からエビフライの尻尾をのぞかせながらそう言った。
せめて取れよ尻尾。
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:清水裕@TSっ子になりたい。 お題:高貴な高給取り 必須要素:海老のしっぽ 制限時間:30分 読者:28 人 文字数:265字
今もっとも高級取りな職業はなんだって?! そりゃあ決まってるだろ、海老のしっぽ取りの仕事だぁ!! そしてさいっこうの海老のしっぽ取りを見せてくれるのはこいつだ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:白いダイエット 必須要素:海老のしっぽ 制限時間:30分 読者:33 人 文字数:1342字
いつも通りの学校からの帰路、ただひとつだけいつもと違うことがある。「せんぱーい、なんでそんなにムスッとしてるんですかー? あ、もしかして可愛い後輩と一緒に帰る 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:afternoon runnner お題:猫のピアノ 必須要素:海老のしっぽ 制限時間:30分 読者:33 人 文字数:740字
彼女との出会いは小学校で、何にでも名前をつける子だったことを覚えている。色とりどりの鉛筆がぎっしり詰まって膨らんだ僕の筆箱を指して『ふぐのダイナマイト』と呼ん 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:にい お題:アブノーマルな小説訓練 必須要素:海老のしっぽ 制限時間:30分 読者:58 人 文字数:1468字
そいつが隠し事をしているというのがまず生意気で、隠し持っているものに気づいてさっそく取り上げてみたところ、それは婚約指輪でも入っていそうな小箱だった。厳重にセ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:経験のないロボット 必須要素:海老のしっぽ 制限時間:30分 読者:35 人 文字数:1170字
あくびを噛みころしながら改札を抜ける。ねぼけた顔や疲れの残った顔を行き会いながら階段を降りてゆく。目じりに残った涙が、生温い風を初夏の風を受けると、やっぱりす 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
歩く演算機 ※未完
作者:蒼井やまと お題:知らぬ間の計算 必須要素:海老のしっぽ 制限時間:30分 読者:94 人 文字数:640字
僕には変な癖がある。変な、という自覚があるからには直す努力をするべきなのだろう。しかし、幾度となく試みた『変な癖を直す』努力はその一切が無駄となり、僕からこの癖 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:知らぬ間の計算 必須要素:海老のしっぽ 制限時間:30分 読者:90 人 文字数:1063字
私が海老の尻尾を残すのには、きちんとした理由がある。そもそも、海老の尻尾とはエビフライの先端の赤い部位のことである。なんというのか、私はあの部位だけはどうしても 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:誰かの黒板 必須要素:海老のしっぽ 制限時間:30分 読者:113 人 文字数:767字
昔々、深い海の底に竜宮城があったとさ。竜宮の王様は独り身で、このままでは子供もできずに自分の代で王族の血が途絶えてしまうことをなやんでおったそうな。そこで王様は 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:小栗ジョン お題:たった一つの村 必須要素:海老のしっぽ 制限時間:30分 読者:216 人 文字数:785字
「マツコデラックスが来たぞ!!」 その声によって村中の人々の悲鳴が響き渡る。「うわぁぁ!」「この村ももうおしまいだ!」 すぐに避難しようと駆ける人たち。そこにや 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:古街 お題:永遠の作家デビュー 必須要素:海老のしっぽ 制限時間:30分 読者:144 人 文字数:605字
10/11(水曜日) 俺の書いた小説が明日出版される。ジャンルはミステリー。この世の悪を暴く、まるでシャーロック・ホームズみたいに世界中に名を轟かす。そんな探 〈続きを読む〉

ろくなみのの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:ろくなみの お題:バイオドア 必須要素:戦闘機 制限時間:30分 読者:12 人 文字数:1074字
「こちら3号機、2号機、応答願います」「うわあ!!」「どうした、2号機」「こ、こちら3号機」「い、いやすまん。たった今、YouTubeを見ていたところでな」「お 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろくなみの お題:どす黒いパイロット 必須要素:バッドエンド 制限時間:30分 読者:12 人 文字数:855字
余命宣告をあんたはされたことあるか? 俺はな、されたんだ。それだとさ、ヤケになりたくもなるだろ? 色々考えたさ。全裸で駆け回るとか、世界一周だとか、性犯罪とか 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろくなみの お題:静かな冬休み 必須要素:コショウ 制限時間:30分 読者:15 人 文字数:1366字
学校は好きじゃない。自分の時間というもののほとんどが奪われてしまうから。夏休みや冬休みの、なにもしないダラダラとした時間というものは、ある意味人間として最も適 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろくなみの お題:地獄道 必須要素:ご飯 制限時間:30分 読者:13 人 文字数:1040字
「なあ、これはなんの罰なんだよ」 俺は今、ひたすら箸で米を口に運び続けている。周りにはドロドロとした血の池があり、鉄の匂いが伝わってくる。「いいから黙って食え」 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろくなみの お題:暗黒の消費者金融 必須要素:海老のしっぽ 制限時間:30分 読者:30 人 文字数:1093字
「あといくらだ?」 社長は味噌汁をすすりながら俺にそう尋ねた。「ざっと600万ってとこですかね。でも社長、やっぱりあの利子はやりすぎじゃあ」「金がないってやつに 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろくなみの お題:悔しい高給取り 必須要素:靴下 制限時間:30分 読者:14 人 文字数:778字
「俺、靴下会社に就職決まったわ」 一人暮らしのワンルームで大学の同期は、黙々と一人用RPGをしながら言った。「靴下会社? そこ給料は?」「やっすいよ。お前の受か 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろくなみの お題:気高い交わり 必須要素:正月 制限時間:30分 読者:14 人 文字数:1755字
「総理、ここがテラというものか」 アメリカ大統領は寒そうに手を突っ込んで、震えながら息を吐く。白い息がふわりと虚空へ消えた。「いえ、大統領。似ていますがこれが神 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろくなみの お題:うわ・・・私の年収、オチ 必須要素:セリフ無し 制限時間:30分 読者:26 人 文字数:480字
夫はヒモである。どれくらいヒモであるかと言うと本当に働かない。家事はしないしパソコンをするか寝ているだけだ。一時期はエリートサラリーマンだったにもかかわらずリ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろくなみの お題:12月の独裁者 必須要素:ドイツ 制限時間:15分 読者:20 人 文字数:666字
「例えばの話なんだけどさ」 ドイツ、アウシュビッツ強制収容所。ユダヤ人である我々にも12月は平等にやってくる。 寝心地の悪い二段ベッドの上にいる名も知らない男が 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろくなみの お題:同性愛の墓 必須要素:全力のグロテスク 制限時間:30分 読者:30 人 文字数:557字
今日はどこにする? 昨日は足の小指だったね。涼くんのは綺麗な形だから僕はすごい好きだったよ。今でも枕元に置いてるんだ。最近はもう抵抗しなくなったね。たまには声 〈続きを読む〉