お題:阿修羅平和 必須要素:映画 制限時間:15分 読者:41 人 文字数:785字

三つの顔と平和に映画。
 酸性雨の酷い日に雨宿りをしている時に、野生のケルベロスの子どもを拾った。
 大きな怪我はしていなかったが、それでもお腹を空かせていた。俺を見て即座に食いかかってる気力すら無くなっていたらしく、萎れていたその三つの顔は、今でもよく覚えている。
 俺は背負っていた鞄の中から、栄養だけはたっぷりの固形食を三本を、ケルベロスの前へと置いた。三つの顔は揃って首を傾げた。ああ、これが食料だと気がつかないのかもしれない。鞄からもう一本取り出して、今度は自分の口の中に放り込んだ。そして咀嚼をして嚥下する。これは食べ物だよと言ってみたら、やっとケルベロスは固形食を口に含んで言った。
 うっすらと見えた口の中は、強靱な牙を持つとされているケルベロスとは思えないほど貧相であったものの、それでも三つの顔は固形食を必死で食べていた。
 口元が固形食のカスで汚れている顔は、俺の方をじーっと見ていた。ナニカ期待してそうな雰囲気であった。ああ、まだお腹が空いているんだなと。
 だから俺は持っている携行食全てを鞄から取り出してみせた。ケルベロスの六つの目はキラキラと輝いて携行食を見つめていた。
 包み紙を空けて、一個一個を、今度は俺の手で運んで上げる。一つ目の顔は唾液をたくさんこぼしながら、二つ目の顔は幸せそうな表情を浮かべながら、三つ目の顔はただひたすらに黙々と、それぞれ思い思い形で固形食を食い上げていった。

 そうしていると、雨が止んでいた。雲の隙間からうっすらと太陽の日差しが差し込んできたのを見て、俺は立ち上がってまた移動をする。集落までは一時間歩けばつくだろう。だからこそ、こいつらに全て食事を上げることが出来た。

「じゃあな」
 俺はそういったケルベロスから離れようとしたが、どうやらそうはいかないらしい。一応は怪物であるのに、こんなにも簡単に懐柔できてしまうのか。
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