お題:真実のボーイズ 必須要素:奴の小指 制限時間:1時間 読者:60 人 文字数:2978字 評価:0人

キアヌコンスタンティンリーブス
「どういうときに、頑張ったなーって思いますか?」
カウンセラーっていうワインセラーみたいな、あるいはセーラームーンみたいなエントリーネームの奴が、持ってるバインダーに何かを書き込みながら聞いてきた。だから答えた。なるべく優し気な感じの声、顔、笑みそういうのに注意して、細心の注意を払って、咳ばらいをして、
「んー、それはまあ、奴らの小指をシガーケースに並べているときかな・・・」
胸ポケットにしまい込んでいたシガーケースを出して実際見せてみた。奴らの小指。ワインセラーが小さく息を吸う声が聞こえた。ひゅって。



雨の降っている街をあてもなく車で流していると、叫び声が聞こえてきた。女の叫び声だ。妙齢の女の声に聞こえた。路肩に車を止めて声のするほうに向かう。歩いてる間にたばこに火をつける。一度軽く吸って、吐き、二度目は思いっきり吸う。軽く眩暈。しかしそれが気持ちいい。

路地を曲がると、女がぎゃーと今まさに叫んでいるところだった。推しメンに出会ったときに発するような声ではなかった。いや、わからない。推しメンに出会ってうれしさのあまり、ナイフでめった刺しにされたように叫ぶ奴もいるかもしれない。あるいは頭を壁に何度もたたきつけられてるように叫ぶ奴もいるかもしれない。

「おお」
しかし、この時はそうではなかった。女は何かの怪物に襲われていた。何かの怪物。怪物の定義は難しい。たとえば子供は自分と違う、あるいはクラスというある種の世界の中で、その集団に著しく属さないもの、見た目、容姿など、あるいは家の環境とか、親が何かの犯罪者であるとか、そういう属性を持ったやつのことをつまはじきにして、怪物扱いすることがある。怪物。けがなどもその部類に入る。とにかくそうやってサンドバックのようなものをこしらえておいて、ストレスが高じたときにそれで処理する。
「怪物だ」
「怪物だ」
とはやし立てる。そいつがショックで次の日学校を休めば、1点。一週間なら、5点。自殺したら50点。先生にばれたら、-5点。

しかし、今女が襲われているのは、そういう怪物ではなかった。それにしても女は何ともまあ叫んでた。
「うぎゃあー」
って言ってる。高そうなスーツを着た女が、雨の路地裏に尻をついて、うぎゃあーって言ってる。もうすでにとどめの一撃を加えられたかのような様だ。スーツのクリーニング代もいくらになるものか。
見目麗しい、映画などに出る女優で、ホラー映画やサスペンス映画などで叫びまくっている奴のことをスクリームクイーンというそうだ。昔何かの本で読んだ。何だったか・・・。
「助けて!」
女が物陰から見物しつつタバコをふかしている俺に気が付いてこちらに救いの手を差し伸べてきた。あんまり差し伸べたり手を伸ばしたりしないほうがいい。
怪物は、動くものから攻撃する。銀行強盗が人質の中から走って逃げ出した奴の背中に反射的にショットガンを打ち込むみたいに。だからその手が、手首から切り落とされても文句は言えないぞ。

「ねえちょっと、助けて!」
怪物にもいろいろといる。足が4、5本あったり、腕が無茶苦茶あったり、皮膚が全部はがれていたり、あばら骨がかみついてきたり、頭が眉間の間から左右に分かれたり、あとはバイオハザードみたいなのもいるしサイレントヒルみたいのもいるし、寄生獣みたいのもいれば、あとなんだ、ドラクエみたいのもいれば、FFみたいのもいるし、ポケモンみたいのもいる。

で、今見えるのは、
「これはまた、見つかった時にはすでに末期がんだったみたいなやつだ」
足は多脚砲台のように前後左右に6本ついて倒れないようになっており、それに対して上半身は腕ばかりが大きくて茶色くてぬめぬめしててかっていて、ブリの照り焼きみたいになってる。顔はさけるチーズを真ん中で裂いたみたいに左右に垂れ下がっている。

「フェーズ4だな」
フェーズは確認されているもので6まで存在する。その中の4。地震で言ったら震度5くらいかな。

「あんた、ポケモンボール持ってないのか?」
俺はなおも物陰に身を潜ませたまま言った。女に対してだ。モンスターが出てもポケモンボールがあったら捕まえられるだろう?

「何言ってんの助けて!」
女の声は包丁をガラスで研いだみたいにキンキンしていて、耳に障る。まあ、ないよな。そんな便利なボールがあってくれたら、こういうのが出ても楽になるだろうになあ。

「ん・・・ふー」
煙草を一本吸い終わると、吸い殻をポケット灰皿に入れて、もう一本取り出して火をつける。それを少し吸って火を定着させてから、壁の隙間に挟む。そこなら降っている雨に当たらない。万が一火が消えることもない。

「今日の晩御飯はブリの照り焼きかな・・・」
いや、肉にしよう。ブリの照り焼きみたいなのを見た後にそれを食べるって、ない。ないな。

「おい、でかぶつ」
物陰から出て、身構える。女に向いていた怪物の顔がこちらに向いた。
「このくそったれ」
その瞬間顔の脇をでかいだけのブリの照り焼きみたいな手が通り過ぎて、後ろの壁を貫通して大きな音が出た。セコムも鳴った。
「へたくそめ」
その腕がそのまま横にスライドしてきて、俺の体は吹っ飛んだ。



「うっげえええええ」
奴のさけた脳天に自分の持っていたブローチを挟み込み、脳天を左右から力任せに押し込んでやると、怪物の頭、目鼻、口、耳、などの穴の部分から白い煙がもうもうと立ち上り、怪物は苦しそうに暴れだしうめき声を上げ始めた。
「奴によろしく。あっちに帰ってそう伝えてくれ」
機能しているかどうかもわからない左の耳にそう伝えて、右手の中指を突っ込んだ。奥までがっつりと突っ込んだ。
「ぎいいいいい」
怪物は穴という穴から黒い汁を出して地面に倒れ絶命した。そして怪物は死ぬと人間だったころの形に近づく。戻るというべきか。

「はあ、はあー」
もとは何だったか?何か身分を証明するものはないか?体、服、など、怪物にされる前に近かった部分を探る。

「なんだ」
胸ポケットから身分証が出てきた。滝田、カウンセラー。と書いてあった。もとは女のようだった。皮膚がはげて、頭皮も全部むしられているからわからなかった。

「また奴が出たか」
確かめてみると、その女の手には小指がなかった。これもサインか。俺に対する当てつけか?
「回りくどいことをしやがるな」

自分の体も傷だらけだったが、立てないこともなかった。今回もどうやら生き延びたらしい。

その場から立ち去ろうとすると、
「大丈夫?ねえ大丈夫?」
と、金切り声の女が戻ってきた。

「ギリギリ」
でもまあ、半ズボンの子供が森で走り回ったくらいのけがだよ。大丈夫。

「そう、じゃあ、とどめを刺さないとね」
女はそういうと自分の顔を左右に裂いて、とびかかってきた。俺は壁に挟んだ煙草をつかむと、その日を女の裂けた顔の中心に押し付けた。

「ぎゃあああ」
と言って、女も浄化された。

路地から出ると、車の前に、知ってる顔が立っていた。
「お疲れ様」
「いいよそういうのは」
そういうと、車の後部座席に乗り込んだ。

次はどういうのが来るだろう?

そう思いながら疲れていたので寝ることにした。
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