お題:簡単な酒 制限時間:15分 読者:41 人 文字数:795字

熟成された空気
(#129)

 グツグツグツ…。
 異様な臭気が漂っている四畳半ほどの小さな部屋。
 そこは地下室であるためか、開口部は出入り口である木製のドアひとつだけしか見当たらない。
 それ以外の内装は、床も壁も天井もすべて無骨なコンクリートである。
 その部屋の床の中心に、両手で抱えられる程度の大きさの壺が置いてあった。
 壺の中はドロドロとした粘液が入っているようだが、その中身は計り知れない。
 光量乏しい室内であるから粘液の色すら判別できず、得体が知れない。
 臭気は壺の中身、すなわち粘液から立ち上っているようであった。
 沸騰しているのか、何らかの化学反応が今まさに進行中であるためか。
 粘液は気体を生成し続けている。
 木製のドアが時々苦しそうな軋み声を上げる。
 室内の気圧が高まり続けており、そろそろ限界が近づいているのに違いない。
 恐らくもうじき木製のドアが破壊され、室内の気体は外部へ勢いよく流れ出るであろう。
 そうなれば終わりだ。
 これまで長い年月をかけて創り上げてきたものが無駄になる。
 だけれど、誰も管理する者はいないのだ。
 未来は神のみぞ知る。
 木製のドアがまた苦しそうに呻き声を上げた。
 そして…。

「あ、どうやらあそこだぞ」
「本当だ!」
 ぼうぼうに伸びきった雑草に行く手を阻まれながらも、二人の男性が歩を進めていた。
 その頭髪は白く、肌には茶色いシミが多く見られる。
 水分を失ってミイラのように干からびた指先を使って、彼らは小さな建物の扉をこじ開けた。
 目の前には地下へと通ずる石造りの階段が伸びていた。
 二人はペンライトを手に、慎重に階段を下りた。
 鼻を刺すような異臭にはすぐに慣れた。
 ギシギシという軋み音が先の方から聞こえる。
 ライトで照らすと、木製のドアが音を立てているようだった。
 男たちは勢いよくドアを蹴破った。
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