お題:光の国 制限時間:15分 読者:22 人 文字数:1347字

韜晦
毎夜毎夜、どこからか声が聞こえてくる。

(ねぇ…)

私は、その声に知らないふりをし続けていた。

次の日も、その次の日も。

どんなに声が聞こえても、決して反応しない。

それでも、声が止むことはなかなった。

(はぁ…今日もダメ…か)

そう言われても、返事はしない。

だって、見えないものに返事をしたら…。

そう思うと、とても怖いから。

(また明日、ね)

それでも、声は必ず聞こえる。

いつからこの声は聞こえるようになったんだっけ。

ゆっくりと記憶をさかのぼる。

あれはたしか…そうこの家に来た日から。

両親の突然の死によって、親戚の家に来たその日。

暗く、悲しい気持ちになっていた時、何かが私に話しかけてきたんだ。

(…大丈夫?)

はじめは、親戚の人が声をかけてくれたのかと思った。

けれど、辺りを見渡しても、だれもいない。

不思議に思って問いかけようとした。

けれど、その最中暗闇の中で何かが動くのが目に映った。

小さな人形。

金色の髪に透き通る青い瞳。

ひまわり…とでも言ったらいいのだろうか。

それほどまでに、人形が美しく見えた。

だけど、すぐさまその思考はかき消される。

だって、人形が話すはずがないのだから。

そう思いながらも、声は聞こえてくる。

(はじめて見る顔ね)

その声に、頷きそうになる。

だけど、そうしてはいけないと、心の奥で何かが止めた。

きっと、その先にあるのは、おとぎの国。

前に本で読んだことがある。

一度誘われたら、抜け出すのにとても大変だと。

特に、父も母も死んだ今だ。

この声はきっと私を連れて行こうとするだろう。

遠い遠い、どこかの国へ。

それが、どことなく嫌だった。

何故なのか、理由はわからない。

その声に答えて、両親のところへ行けるなら…。

そう思うことこそ、きっと人形の策略。

だから、私はただ眠り続けた。

それが正しいことだと思っていたから…。

目が覚める。

外を見ると日が出ており、部屋を照らしている。

部屋の奥の方へ目を向けると、昨日の夜見た人形がそのまま壁に座っていた。

あんなところにあっただろうか。

そう思って、人形に手を伸ばす。

触ってみても、何も起こらない。

一息つき、安堵を覚える。

この人形は一体なんだろう。

私に語り掛けてきたあの言葉は…。

その真意を知ることなく、数か月の時が過ぎた。

未だに、人形に返事はしていない。

気まぐれなんか起こしたらダメだ。

…そう思っていた。

それでも、どこか毎日声をかけてくれる姿…、いや姿勢に心が揺らぎ始めていた。

一度だけなら。

そう、きっと一度だけなら大丈夫だろう。

そんな風に考えながら、日中を過ごした。

あっという間に日は落ち、夜になった。

人形を見つめる。

さぁ、今日こそ会話をするんだ。

そう思って、人形を見つめ続ける。

けれど、いつまでたっても、声は聞こえてこない。

ねぇ、そこにいるんでしょう?

そう問いかけた。

だけど、一切返事はない。

私の勘違いだったのだろうか。

その日を境に声は聞こえなくなった。

あれは、一体なんだったのだろう。
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