お題:悲観的な山 必須要素:ペペロンチーノ 制限時間:15分 読者:44 人 文字数:983字

然り、あの頃から彼女は魔女だった。
「そう悲観的になることないじゃない。山っていっても富士山とかクソ高い山ってわけじゃないんだし」

へらへらと笑うミチノを恨めしげに睨む。
デスマーチ明けの希少なお休みだったのに朝から叩き起こされ、無理やり山に連れ出された私の怒りったらそりゃ言わずもがなだし、それに加えて遭難となればひとしおだった。

「だからゴメンって、ヤツハちゃん。ピクニック、絶対楽しいと思ったんだけど」
「ピクニック気分で遭難する羽目になるとは思わなかったよ」
「いやーはは、近所の山でも遭難とかするんだね」

失敗失敗、とミチノが無邪気に笑う。
30を越えても尚、学生時代の若々しさをたたえた笑顔に若干の妬ましさを覚えてしまう。
この笑顔に惹かれていた学生時代の私は、今では意地悪な童話の魔女めいた人間になっていたらしい。

「軽く考えてるみたいだけど、どうするの? 私は携帯持ってきてないんだけど」
「アタシのスマホもバッテリー切れだしねぇ。うーん、参った参った」
「参ったじゃなくてさ。本気で考えてる?」
「考えてますよー。考えてるからこうして、まずは腹ごしらえをってことで」

はーい、茹で上がったよーと軽薄な声。
簡易コンロに載せた鍋で茹で上げたパスタを紙皿に盛り、ミチノは慣れた手つきでインスタントのパスタソースを掛け、和える。

「はい、ヤツハ。ペペロンチーノでーす」

ニンニクとオリーブの刺激的な匂いが鼻を刺激する。
朝から何も食べていない中に、この匂いは刺激的すぎた。

「……ずいぶん」

準備がいいね。そんな言葉を寸前で呑み込んだ。
ミチノはきょとんとした顔で私を見つめてから、照れ臭そうにはにかんで自分用のパスタを盛り始めた。

然り、準備が良すぎた。
日帰りのピクニックに簡易コンロ? 食事の用意?
挙げ句の果てにテントまで?

「いやー、ほんとに困っちゃったね。いつ帰れることやら」

まったく困ったそぶりを見せず、ミチノは笑う。
気のせいでなければ、その瞳の奥に熱っぽい情熱が見える。

学生時代のあの気持ちは、わたしからミチノへの一方通行だと思っていたけれど。
もしかすると、それは私の思い込みだったのかもしれない。意地悪な魔女の私は、大人らしい客観的な見地からそんな仮定を得る。

ぞくりと背筋を這う悪寒に肌を震わせながら、私はペペロンチーノに口をつけた。
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