お題:僕が愛した宴 制限時間:1時間 読者:59 人 文字数:708字

 時折吹き抜ける風が周囲の木々を騒めかせ、煌々と光を放つ熾を爆ぜさせる。
 パチリと飛んだ火花が顔の表皮をさらっては熱さを残して消えていく。
 
「俺さ」

 揺蕩う火の輪郭を見つめると、不思議と心が落ち着ていく。
 思えばこの旅を始めた最初の夜もそうだった。
 深い藍色の帳が降りたこの夜闇の中で、こうして焚火を見つめていると、高ぶっていた心が、なぜかすっと静まるのだ。

「うん?」

「結構好きなんだよね」

「何が?」

「これが」

 視界の隅に映る馴染みの顔は、ちょいと不思議そうな顔をしてこちらを見た後、鼻をならして両手を火へ翳した。

「焚火が? 変な奴だな」

「悪いか?」

「いんや」

 侘び寂びの分からないやつだと心の中で毒づく。
 しかしながら俺がこうして、焚火を中心に車座に座るのが好きな理由の一端には、この昔馴染みが、旅を始める前も今も、何ら変わらぬ性根をしていることが要因の一つになっている。
 村に住んでいたころには考えられなかった今時分にあって、こうして腰を落ち着けていられるのは、偏にこの昔馴染みの存在が、この特異な旅すらも村に住んでいたころからの延長線に過ぎないと示してくれているからだ。

「明日」

 皮袋の中に入れていた、油紙で包んである乾肉を取り出して半分に千切り、馴染みに放って渡す。
 残った肉を口に含むと香辛料の刺激が舌を打つ。

「明日でケリをつけようと思う」

 片手をぐっと握ると、そんな俺を見ていつものように馴染みが笑う。

「いいぜ」

 村を出ると告げた時と同じ言葉で以て、この旅の間、幾度となく続けられた小さな宴の、その最後を馴染みは締め括った。
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