お題:来年のダンス 制限時間:1時間 読者:62 人 文字数:899字

持つべきものは足の砕ける親友
「俺さ、ダンス苦手なんだよ」

 意を決して放った一言に、きょとんと眼を丸くして、それからトニーは鼻で笑った。

「あー、いいかマイク。お前には、そのー、ショッキングなことだと思うんだが…知ってた」

 階段に腰を下ろしている俺に目を合わせると、トニーは気を落とすなとでも言った風に肩を叩く。

「中学の時のダンスパーティーは凄かったな。お前の相手する奴は大体足が腫れあがってんだ。知ってるか? 裏じゃお前、ストンプマンとか言われてたんだぜ」

 くくくと腹を抑えて笑うトニーを横目に睨むと、彼は両手を上げて俺を宥めた。

「大丈夫だ、普通のダンスに才能がないってだけで、あー、そう! タップダンスならイケると思うぜ」

「ああ、誰の足も踏まなくて済みそうだね」

 自虐的な俺を見かねてか、トニーは俺の横に座ると肩に手を回してくる。

「まあ気を落とすなよ、な?」

「来年は、ホームカミングがあるだろ? どうしても踊らなきゃならない。愛想つかされたくないからね」

 言いながらふと恋人の顔が思い浮かんだ。普段は胸が高鳴るものだが、今日はどうにも気分が下がる。

「確かにタップダンサーにゃきついな。練習したらどうだ?」

 俺はトニーを見て、自虐的な笑みを浮かべる。

「足が腫れあがるまで付き合ってくれる人なんかいないよ、その前に愛想つかされるのがオチだしね」

 そこまで言ってから、ふと、自分の頭にバチりと電流が走ったかのように天啓が思い浮かんだ。
 思わず顔が綻ぶ。普段は首に負担を掛けるだけの脳みそだと思っていたが、中々どうして切羽詰まると役立ってくれる。
 俺はトニーの肩に手を置いて

「トニー!」

 俺の名案を察したトニーが首を横に振る。

「おい、冗談だろ? 俺にそっちの趣味はないぞ」

「大丈夫、ただ動きをまねてくれればいいんだよ」

「親友の足を砕くつもりか?」

 青ざめるトニーにしかしながら僕は満面の笑みを浮かべる。

「親友なら足が砕けても手伝ってくれるよね? さあ、いこう!」

 逃げ出そうとするトニーを引っ掴んで僕は足取り軽く階段を駆け下りた。



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