お題:猫の風 制限時間:15分 読者:62 人 文字数:853字

神社
 小声で歌を歌いながら、僕は階段を歩いていく。
 二段飛ばし、足取りは軽く。
 今日の僕はとっても気分が晴れやかだった。

 理由はわからないけど、なぜか直感でそう思った。
「何かいいことが起こりそうだ」
「今日はなんでもできそうな気がするぞ」
 そんなことを考えて家を飛び出した僕は、近所の神社へと向かっていた。

 階段を登り切り、一息。
 冷え切った空気に、白い煙を吐き出す。
 そのまま振り返ると、青く澄んだ青空があった。

「よし」
 それだけ言って、鳥居をくぐる。
 なんとなく一礼をしながら、わきを通っていく。
 どこかのテレビで見たのだ、中央は神様の通る道だと。
「人に邪魔されただけで怒るなんて神様は小さいなぁ」
 なんて思ったけれども、僕も邪魔しないように譲り合おうと行き違いになったことを思い出す。
 そうやって考えたら、道が決まっている方が気楽なのかもしれないな。

 靴越しに石を噛んだ靴の感触が伝わる。
 こすれて、割れる音。
 僕はこの音が好きなのだ。
 よく、気が向いたら神社に来ているのはたぶん、そのせい。

 そんなことを考えながら横に視線をずらすと、一匹の猫がいた。
 猫が警戒したような目でこっちを見てくる。
「走っても追いつけないと思うんだけどなあ」
 とりあえず、しゃがんでみた。
 猫も安心したのか、足を畳んでこっちを見てくる。
 何度立ち上がってしゃがんでも目線を合わせ続けてるのが面白くて、ついつい何度も繰り返してしまった。

「これがいいことなのかなぁ」
 何度も繰り返したせいか、猫が森の中へと駆けていく。
 それを見送りながら、背を伸ばすように立ち上がる。
 冷えた空気に、勢いのある風が混じる。
 途端に肌寒くなって、思わず手を袖に仕舞った。

「もう、帰ろうかなぁ」
 また、鳥居の端を通りながら空を見る。
 澄んだ空に、隣町へと沈んだ太陽。
 今日もいい物が見れました。
 そんな風に神様に報告しながら、僕はまたお辞儀をして、階段を降り始めた。
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