お題:求めていたのは姫君 必須要素:ぬりかべ 制限時間:15分 読者:37 人 文字数:1010字

壁。
 そのおぞましい石壁は、昔なにかで読んだ妖怪の、ぬりかべを彷彿させるものでした。
 今にでも倒れてくるのではないか、その付近を歩く人間すべてが一度は思ったでしょう。誰が作ったのか、なんのために創られたのかわからないその壁。そんなおぞましい石壁は、今日も人々を威圧していきます。
 
 ある日のことです、そんないかがわしい壁があることをしったおてんばな王女様が、配下の者に是非ともその壁を見てみたいと言ってきました。彼女に仕える兵士は戸惑います。今まではなにもなかったけれども、もし万が一にでも王女が見に来た時になにかが起きたら大変です。だから配下の者たちは王女様に危険な場所だからと告げてきます。しかしながら王女様は止められてしまったからか、もっともっと行きたくなりました。配下の者たちは彼女の父親である王様にこのことを話しました。もちろん、大事な娘をそんな場所に行かせるわけにはいきません。王様も配下の者たちと同じように、危険だから言っては行けないと王女様に告げました。

「いいもん。一人で行っちゃうもん。だいたいお父さまもみんなも、本当に危険なら民のことを考えてさっさと壊したりすればいいのに。ほんっと中途半端なんだから!」

 配下に止められ、親に止められたとしても、彼女は止まりませんでした。許可が得られないのなら、無許可で一人でいけばいい。このお嬢様は、数多い王様も子たちの中でも、一番おてんばなのです。だから今回みたいにお城を勝手に抜け出すことも多々あります。だから、王女様は夜、誰しもが寝ている時間に勝手に外に出て、その石壁に向かうことにしました。

「うわあ。本当に怖ろしいわ。でも、なんでこんなに怖ろしいのかしら?」
 石壁にたどり着いた王女様は、独り言を言いながら、その壁をペタペタと優しい手付きで触っていきます。きめ細やかな指先から伝わる感触は、いたって普通の石壁と変わりません。ですが、やはり夜だからでしょうか、王女様も不思議と恐怖を感じています。

「でも、可愛そうね。なにもしていないのに、みんなから怖がられちゃうなんて……。ごめんね。勝手に怖がっちゃって」
 なにもない普通の石壁なのに、人々を怖がらせている石壁。そんな石壁を哀れと王女様は思い、そっとその石壁にキスをしてから、その場所を離れました。

 翌日以降、不思議とその石壁からは怖さはなくなった、と誰しもが言うようになりました。
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