お題:臆病な信仰 制限時間:15分 読者:83 人 文字数:857字

先生とぼく
ぼくはいつも先生の言うことを聞くことにしている。そうすると褒めてくれるからだ。褒められると嬉しい。ぼくは褒めてくれる先生がだいすきだ。

クラスの他の友達は、わるいことをして先生に怒られている。先生は怒るととても怖い。大きな声を出して、わるいことをした子の名前をさけぶ。ぼくまでびっくりする。

でも、ぼくは怒られたことはない。先生にとって良い子だからだ。だいすきな先生にとって、良い子どもでありたい。

「いくじなし」とクラスメイトはぼくを笑う。いつも5人くらいでぼくを囲んで、からかってくる。わるいことをする方がわるい。先生の言いつけをまもるぼくの方がぜったいにえらいし、おまえらは先生にきらわれてるんだ。かわいそうに。


やがてぼくと先生は離れ離れになることになった。先生がほかの学校に行ってしまうことになったのだ。ぼくは先生に「今までありがとうございました」と伝えた。先生は「おまえは良い子でよかったよ。来年からも頑張ってな」と笑顔で返してくれた。

やっぱり先生にとってぼくは良い子だったんだ。うれしい気持ちで胸がいっぱいになった。




今日は先生に久し振りに会える。15年も経つし、いくらか老け込んでいるかも。でも見たらすぐにわかるだろうし、先生も良い子だった僕のことはよく覚えているだろう。

少し遅れて同窓会の会場に着くと、当時のクラスメイトたちはすでに少し酔っ払っていた。あの時の「わるい子」らが、一番奥に座る先生に絡んでいる。わるい子の名前を呼ぶ先生。笑っている。

しばらく待って、先生がひとりになったところに話しかけに行った。

「先生。覚えてますか。中村です」

「え?ああ…すまないな、全員は覚えられなくて」

僕は絶望した。

先生にちょっかいを出しまくっていたあいつらのことは覚えていて、あんなに良い子だった僕のことは忘れたのか。


その先のことは覚えていない。

ただひとつ気がついたのは、僕が先生に抱いていたのは、尊敬ではなく、畏怖だったということだけだった。




作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:なちゅの創作 お題:臆病な信仰 制限時間:15分 読者:91 人 文字数:502字
信仰しているものがある。それはごくごく一般的な宗教で、決して怪しいものなんかでは無い。でも、なぜだろう。時々不安にかられてしまう。ただの偶像崇拝にすぎないと心の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:あにぃぃ お題:メジャーな彼氏 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:764字
何となく、私は一人でいいと思う。いや、一人でも良かったのかもしれないと思っている。そう思っているだけで、実際は愛する彼がいて、恐らく何事もなければこのままいずれ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:俺は病気 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:448字
朝、目がさめると、壁が目の前にあった。 いや、壁ではない。少し視線を動かしてみると電気が付いている。寝ぼけた頭でもわかる。これは天井だ。 はっきりと目が覚めて 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
不器用な嘘 ※未完
作者:谷矢チカフミ お題:賢い嘘 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:446字
不審そうな視線に笑顔を返せば、結局は誰も口出しをしない。忠義だの恩だのと言う者達は、主のお気に入りである参謀の私に口出しは出来ない。笑いながらお決まりの言葉を 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:最弱のサラリーマン 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:1071字
静まり返った街中を、レールを軋ませながら電車が走り抜ける。酒で酔って寝ている人、大声で喋る化粧の濃い女性、疲れ切った顔で携帯を見るサラリーマンの群れ。私もその中 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
トラブル回避 ※未完
作者:にい お題:弱いゴリラ 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:886字
真正面から歩いてくる男と目が合ったとき、喧嘩をふっかけられると直感した。血に飢えているやつは目でわかる。そして大体、野獣のような顔つきをしている。幅の狭い道だ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:弱いゴリラ 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:396字
威嚇された一頭のゴリラがすくみ上って、こちらに向かってきた。「今回も、失敗ですね」「うーん、ちゃんと自分を主張できれば、他のゴリラに引けは取らないはずなんだけ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:茂吉 お題:猫の窓 制限時間:15分 読者:7 人 文字数:435字
「なんで猫が家の中にいるんだ?」 愛猫で、さぼトラのペレが絨毯の上に座って、蒼い目をこちらに向けている。家の中には決して入れないようにしていた。室内が汚れること 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
信頼の価格 ※未完
作者:匿名さん お題:高い税理士 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:370字
誰かが言った。「同じ仕事を頼むなら安いほうにするよ。」別の誰かが言った。「そんな金額、払えるか!」そんな言葉を何度聞いただろうか。高い税理士。それが俺の世間での 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:日ノ宮理李@いい日旅立ち お題:アルパカのにおい 制限時間:15分 読者:11 人 文字数:884字
お前の眠る部屋は家にないからと両親に追い出された俺が向かった先は、子度の頃から一緒に育ったアルパカたちの小屋。アルパカたちは俺を歓迎してくれるようで、キレイな 〈続きを読む〉

とよの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:とよ お題:犯人は克服 制限時間:30分 読者:59 人 文字数:2099字
「つかさちゃん、おはよ~!」 私はA組、つかさちゃんはD組。私は3クラスぶんの廊下を超えて毎朝つかさちゃんに会いに行く。つかさちゃんと私は小学校の頃からいつも 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:とよ お題:潔白な結婚 制限時間:30分 読者:134 人 文字数:1414字
3年付き合った彼女にプロポーズをした。彼女はサプライズが嫌いだから、普段通りのデートの途中に決行した。指輪を差し出して「結婚してください」と言った。 彼女はそ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:とよ お題:淡い衝撃 必須要素:直木賞 制限時間:1時間 読者:143 人 文字数:1802字 評価:6人
「ぼくもお父さんみたいな小説家になりたい」無邪気にそう言っていたのが25年前。30歳も間近になった今、営業マンとして働きづめの毎日だ。月曜から木曜は外回り、金曜 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:とよ お題:限りなく透明に近い潮風 制限時間:15分 読者:62 人 文字数:445字
自転車で坂を下る。通学路の中でここで一番スピードが出るから、一番寒い。坂の下には冬の海が広がり、岸壁に波が打ちつけている。冬も夏も潮の匂いは同じだ。慣れたにおい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:とよ お題:幸福な霧雨 制限時間:30分 読者:77 人 文字数:1053字
7時14分。新宿方面のホーム。みな同じ顔をした人間たちが続々と電車に乗り込む。 きっと今日も会社に行けば怒られる。昨日、退勤する前、上司から「明日話があるから 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:とよ お題:コーヒーと部屋 必須要素:1万字以上 制限時間:1時間 読者:187 人 文字数:1718字 評価:4人
築20年のアパート。1階、1Kの部屋。駅から徒歩15分。隣人は何年もいないから、騒音も気にならない。 ここに住み始めて6年が過ぎた。学生時代こそ家に友人を呼ん 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:とよ お題:免れた真実 必須要素:「い」仕様禁止 制限時間:1時間 読者:90 人 文字数:2096字 評価:1人
「あなたたちは、トロッコ問題というものを知っていますか?」大学の一般教養科目。この教授の授業は眠たい。声も低いし、話も盛り上がりに欠ける。でも出席さえしていれば 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:とよ お題:臆病な信仰 制限時間:15分 読者:83 人 文字数:857字
ぼくはいつも先生の言うことを聞くことにしている。そうすると褒めてくれるからだ。褒められると嬉しい。ぼくは褒めてくれる先生がだいすきだ。クラスの他の友達は、わるい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:とよ お題:人妻の雲 制限時間:30分 読者:95 人 文字数:1306字
僕は妻が大好きだ。会社から帰るとあたたかいご飯を出してくれるし、朝はお弁当も持たせてくれる。同い年で話も合う。結婚して一緒に住むようになってから、さらに好きにな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:とよ お題:彼が愛した狂気 制限時間:30分 読者:133 人 文字数:1231字
「絶対に、この子は性格良い!」浩一はスマホの画面を俺に見せつけながら熱弁した。静かなカフェに高い声が通っていく。奴はマッチングアプリにハマっていて、「良い子」を 〈続きを読む〉