お題:臆病な信仰 制限時間:15分 読者:37 人 文字数:857字

先生とぼく
ぼくはいつも先生の言うことを聞くことにしている。そうすると褒めてくれるからだ。褒められると嬉しい。ぼくは褒めてくれる先生がだいすきだ。

クラスの他の友達は、わるいことをして先生に怒られている。先生は怒るととても怖い。大きな声を出して、わるいことをした子の名前をさけぶ。ぼくまでびっくりする。

でも、ぼくは怒られたことはない。先生にとって良い子だからだ。だいすきな先生にとって、良い子どもでありたい。

「いくじなし」とクラスメイトはぼくを笑う。いつも5人くらいでぼくを囲んで、からかってくる。わるいことをする方がわるい。先生の言いつけをまもるぼくの方がぜったいにえらいし、おまえらは先生にきらわれてるんだ。かわいそうに。


やがてぼくと先生は離れ離れになることになった。先生がほかの学校に行ってしまうことになったのだ。ぼくは先生に「今までありがとうございました」と伝えた。先生は「おまえは良い子でよかったよ。来年からも頑張ってな」と笑顔で返してくれた。

やっぱり先生にとってぼくは良い子だったんだ。うれしい気持ちで胸がいっぱいになった。




今日は先生に久し振りに会える。15年も経つし、いくらか老け込んでいるかも。でも見たらすぐにわかるだろうし、先生も良い子だった僕のことはよく覚えているだろう。

少し遅れて同窓会の会場に着くと、当時のクラスメイトたちはすでに少し酔っ払っていた。あの時の「わるい子」らが、一番奥に座る先生に絡んでいる。わるい子の名前を呼ぶ先生。笑っている。

しばらく待って、先生がひとりになったところに話しかけに行った。

「先生。覚えてますか。中村です」

「え?ああ…すまないな、全員は覚えられなくて」

僕は絶望した。

先生にちょっかいを出しまくっていたあいつらのことは覚えていて、あんなに良い子だった僕のことは忘れたのか。


その先のことは覚えていない。

ただひとつ気がついたのは、僕が先生に抱いていたのは、尊敬ではなく、畏怖だったということだけだった。




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