お題:アルパカのカップル 必須要素:3000字以上 制限時間:1時間 読者:54 人 文字数:3639字 評価:0人

アルパカたちのグダグダ話
「己たちのようなものをアルパカと言うらしいぞ」
「なんじゃ、それは」
「だから、アルパカだな、アルパカ」
「動物だかの名前だろう、それは。お前のような間の抜けた面ぁした、のべーっとした様子のもっしゃもっしゃと草を食むことしか楽しみがないような動物じゃのう」
「酷いことを言うなあ」
「鬼じゃもの」
「鬼だからか」
「……」
「今、鬼と言ったか?」
「応とも」
「むう、なんということだ、お前とは長く飲み友達をしていたが、そんなことつゆ知らずだった」
「……この頭についている角を見える目を、おぬしは持っておらんのか……?」
「変わった飾りをつけている奴だ、まあ、趣味が悪いが好みなのだろう、酒の好みは悪くないのだから放っておこう、とそのように思っていた」
「おぬし、危機感がないと良く言われたりはしないのか」
「お前はどうして生き残れたんだと、真顔で言われたことは何度かあった」
「なるほど、鬼であるこの身がおぬしを食いたいとは思えぬ理由がわかっというものじゃ」
「というと?」
「食ったところで顔色一つ変わらないのが目に見えているのじゃもの、生きの悪すぎる獲物は食いでがない」
「いやー、たべないでー」
「……そのクソのような棒読みに、鬼であることとは無関係にイラっと来た、おぬしの腕の一本でもツマミで食わせろ」
「仕方のない奴だなあ」
「どうして素直に腕をそこで差し出すのじゃ」
「?」
「どうして不思議そうな顔をそこでするのじゃ」
「なんだ、食いたいと言ったじゃないか!」
「どうしてこの身が怒られなければならんのじゃ」
「もういい、酒を注いでくれ」
「手酌でやれ」
「寂しいことを言う奴だ」
「……それで?」
「うん?」
「あるぱかがどうとか言っておったが、結局なんなんじゃ?」
「そんなことを言ったか、己」
「酒を飲むのはもう止めよ」
「待て、嘘だ、覚えているから取り上げるな――ええと、なんだったかなあ……」
「没収」
「ああ、己の酒が! なんてことをする鬼娘だ」
「鬼じゃもの」
「なるほど鬼だった」
「下らんことだとはわかっておるが、どうにも気になるものじゃ」
「アルコールをパカパカ空けるの略でアルパカだそうだ、要するにウワバミだな」
「予想以上に下らなかったなあ……」
「ふふん、己がためになる話とか少しでもできると思っているのか」
「まったく思わんな」
「断言をされると、それはそれで寂しいものだぞ?」
「ええい、近寄るな鬱陶しい。まったく、鬼にここまで無頓着に近づくものなどそうはいないぞ」
「これで近親周囲に被害が出るとなれば話は違うが、まあ、食われて襲われるのが己ひとりでは、そこまで騒ぐほどのことでもあるまい」
「ふぅむ……?」
「あ、己の周囲の人間を襲おうと考えていないか?」
「少し考えた、そうした時、おぬしはどのような顔をするのか、どのように激怒するのか、どのようにこの身に襲い掛かるのか、その想像をもてあそんではいたな。ふふ――」
「なにを笑う」
「少し、楽しい」
「なるほど、鬼だなあ」
「鬼じゃとも」
「己の不幸をツマミに酒を飲まんで欲しい」
「人の不幸は蜜の味と言うじゃろう」
「鬼の言う人の不幸とは、もう完全に向こう側の他人事の食べる相手をもてあそぶことでは」
「うむ」
「頷かれてしまった……」
「人の幸運よりは、人の不幸の方が鬼好みじゃ」
「たしかに宝くじが当たった奴のところに鬼が好んで遅いには来ないだろうなあ」
「代わりに見たこともない親類縁者がわんさと押し寄せるらしいがな。人間とは、鬼よりよほど他人の幸不幸に目ざといものじゃ」
「買ったことはないなあ、宝くじ」
「そうなのか」
「うん、己が買いに行こうとすると、帰り道に宝くじはなく、代わりに酒瓶を手にしている」
「まったく、酔っぱらいめ」
「不思議なこともあるものだなあ」
「なにも不思議ではなかろう」
「どうして酒は飲んだらなくなるのか、不思議じゃないか?」
「うむ、とても不思議だ」
「飲んでも飲んでもなくならない酒とかないのかなあ」
「あるかもしれんが天仙か、さもなければ年経た鬼の首魁のものじゃろう、人の手にも、ただの鬼の手にも持てるものではないじゃろう」
「空に月! 隣に美人! あとは酒!」
「なんじゃ突然」
「月も美人もなくならないというのに、酒だけ無くなるのは道理に合わん」
「月は欠けるし美人は鬼だ、酒が減るのも道理じゃろう」
「えー、鬼の力でどうにかできないのか」
「おぬしの息の根を止めるくらいしかできぬとも」
「――」
「だから、どうしてそこでワクワクとした目をするかな、おぬし」
「美人に食われたいは男の夢のひとつだろう?」
「おぬしの夢が、おぬし一人しか抱えておらぬことくらいは鬼にもわかるというものじゃ」
「まったく連れない、アルパカ仲間だっていうのに」
「仲間か」
「仲間だ」
「鬼じゃのに?」
「酒を呑んでる以上、あんたは鬼である以上にアルパカだ」
「……妙なものにされてしまった……」
「当然、己もまたアルパカだ、さあさあ酒飲みたちよ、人である身を捨て、いざ今こそアルパカにならん!」
「人を捨てるのでならば、もうちょっとくらい上等なもんにならんか」
「贅沢言っちゃいけませんぜ、鬼の癖に」
「志が低すぎるぞ、人間の癖に」
「なんだとう! ならアルパカになってみろよう! やってみたらきっと案外難しいだろ!」
「酔っておるな」
「ひひーん!」
「……この身はあるぱかについて詳しくないが、少なくともそうは鳴かんじゃろう」
「アルパカ、奥が深い……」
「おぬしが珍妙なだけじゃ」
「あ、ところでね、お気に入りの酒があるんだ」
「また突然話が飛んだのう」
「高くはないがあんまり手に入らず、遠くの品ぞろえが良いって評判の酒屋に行って、ようやく手に入れた」
「そうか」
「で、飲んでみたが、味が違う」
「ほう」
「日本酒ながら甘くて飲みやすいはずだった、だが、これはどういうわけだか辛口だ、これはこれでスッキリしているが、己が好んだあの味じゃあない」
「ふぅむ」
「どうしてなんだろうなあと思った」
「だろうな」
「……」
「ん?」
「……いったい、どうしてなんだろうなあ、不思議だなあ――」
「オチは!?」
「うん?」
「理由はどうした! なぜお気に入りの酒の味が変わったんじゃ!」
「さあ?」
「調べろ! スッキリせんじゃろうが!」
「己だってもやもやしている、一緒にこの気分の悪さを味わおう」
「最悪じゃな、おぬし!」
「本当に楽しみにしていたから、なおさらがっかりした、調べるだけの気力も湧かなかった」
「今度その酒を持って来い、この身で味を確かめてやる」
「いや、前のを知らずに飲んだのなら、普通に飲みやすい酒だとしか思わないはずだ」
「それでもだ、というよりもじゃ、そんなにもガッカリするようなものだったのか?」
「そうじゃない、そうじゃないんだが――」
「なんだ、その気色の悪い手の動きは」
「美味い不味いじゃあないんだ、己が求めてやまなかった味、「あの味」としか言いようがないものを探していたのに、いざ見つり飲んでみれば別の味だった――そのがっかり感こそを己は言いたかった」
「クソ迷惑じゃ、そんなものを共有しようとするな」
「そういえば、美味い人間、不味い人間はいるのか」
「おぬしの話の行方は常に迷子じゃな」
「人種によっても違いそうだな、烏骨鶏は美味いみたいに北の方に住む人間の方が美味いとか」
「違いがわかるほど人間を食ってはおらぬよ」
「えぇえ……」
「そこで心底がっかりされる方が驚きじゃ」
「鬼なんだから、もっと積極的に食ってこうぜ!」
「おぬし本当に人類か?」
「アルパカです」
「人間に食われてしまえ」
「つまり、それは己がアルパカであるあなたを食っても構わないということ?」
「この身があるぱかだと称したことは一度もない」
「己が人間でも食わない、アルパカでも食わない、いったいどうすればいいというのだ!」
「そこまで食われたいのか、おぬし」
「うん!」
「却下、拒否、嫌じゃ」
「――」
「そこまで絶望的な顔をせんでも」
「夢がついえた……」
「そこまで暗くなるな、酒でも飲め」
「くそう、飲んで忘れて寝ている間に己のことを襲ってはくれないか……」
「おぬしの都合のいいように、この身を扱うな」
「アルパカにならない、鬼にもなれない、だからといって食ってもくれない、己はいったいどうすればいいのか!」
「酒でも飲めばよかろう」
「だってあの酒、己の好みじゃなかった!」
「仕方ない、なら探してやろう」
「え?」
「今年がダメでも去年のは良かったのじゃろう? ならば探せばあるはずじゃ」
「お、おお」
「いや対価として腕を差し出すな、それはいらん」
「ならどうすれば!」
「ここで、あるぱかでいろ」

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