お題:許されざる計画 必須要素:もみあげ 制限時間:15分 読者:75 人 文字数:1095字
[削除]

なんでも無い話は海の絵のように
 きっかけが何だったのかは覚えていない。
 だけど彼女は海の絵を描きだしたし、先生は髪の毛を減らし始めたし、僕はもみあげを伸ばしだした。
 僕らのスタートには、それぞれ何の関係も無いのかもしれない。
 そんな寂しいことを思う。僕らは繋がれない。一人きりで空を見上げている。

 彼女の絵がキャンバスの4分の1を埋めるころ、先生のハゲ方は円形脱毛症であることが判明した。
 これだって二人の間には何の関係もないことだ。
 僕のもみあげが若干カールし始めたことも、おそらく二人とは関係ない出来事だっただろう。
 寂しさを抱えながら人は生きていくのだ。冷たい海を見つめている。

 最初に彼女に声をかけたきっかけも覚えていない。
 きっと、僕は寂しかったのだ。
 ただ一人でハゲていく先生。ただ一人でもみあげがカーブしていく僕。
 そしてただ一人で海の絵を描く彼女が、一人で生きていく他人同士の僕らが、いつか繋がり合えるのを願っていたのかもしれない。

「海の絵を描いてるんだ。なんで?」

 そう問いかけてた僕に対し、彼女はぶっきらぼうに答えた。

「好きだから、って以外の答えがあるとでも?」

「そりゃそうだ」

 きっと彼女は無遠慮な質問をぶつけてきた僕のことが嫌いだっただろう。
 あるいはいきなり話しかけてきた男に対する警戒心もあっただろう。
 だけど僕は自分に言い聞かせるようにしてそんな感情を無視した。
 自分のやりたいように、自由気ままを気取り、彼女の隣に腰掛けて言った。

「町田先生ってさ、ハゲてるの知ってる? 10円ハゲ」

 彼女はやや眉間に皺を寄せたあと、どうでもいいとばかりの表情だったけど、僕の質問に答えてくれた。

「ミヤコ達が言ってたから知ってる」

「なんで先生は一人でハゲていくんだろうね?」

 彼女は今度の質問には答えてはくれなかった。
 あるいは質問の意図が十分には理解できなかったのかもしれない。
 眉間に皺を寄せながらこちらを見返す彼女に、僕は言った。

「どうして人は一人でハゲていくんだろうってさ。一人きりって寂しいと思うんだ。ハゲるにしたってみんなで一緒にハゲた方が優しい世界だよね」

「その考え方はおかしい」

 ツッコミを入れてくる彼女に、僕は言葉を続ける。
 自分らしく、気ままさを演じて。

「僕のもみあげもカーブしてきたんだ。笑っちゃうよね? もみあげカーブだよ。みんなのもみあげもカールすればいいのに」

 彼女は少し苦笑を漏らした。

「結局は自分だけ変なもみあげなのが嫌なんでしょ?」

 そりゃそうだ。
 僕は笑った。
この作品をツイート

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:ssk_ksk お題:忘れたい儀式 必須要素:もみあげ 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:444字
雷の鳴る夜、大雨の降る昼間、雪が積もって家の中に閉じ込められた朝。そんなときにあいつは決まって部屋をノックした。ノックするだけなのだからこちらが入れなければいい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:evening お題:茶色い接吻 必須要素:もみあげ 制限時間:15分 読者:26 人 文字数:1185字
イタリアはピエモンテの郷土菓子に、「バーチ・ディ・ダーマ」というものがある。 訳せば「貴婦人の接吻」ほどの名前だが、どうしてそんな名になったのか、二人の若い紳 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:高い机 必須要素:もみあげ 制限時間:15分 読者:32 人 文字数:978字
高い机を購入した。「いえーい」数年前からずっとアマゾンほしいものリストに入っていて、半ば私のほしいものリストの主みたいになっていたんだけども、「これはもう買う気 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
朝のカミサマ ※未完
作者:鷲野眼 紘 お題:朝の神話 必須要素:もみあげ 制限時間:15分 読者:70 人 文字数:422字
眩い光に包まれて、私は目を開けた。カーテンを閉めていたはずなのに、やけに明るいな。寝過ごしたか……?などと思いつつ目覚めた私の目に映ったのは、光り輝く、ヒトだっ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
※未完
作者:ちゃ お題:暑い性格 必須要素:もみあげ 制限時間:15分 読者:39 人 文字数:492字
どうして彼はいつもいつも、こうして泣くのだろう。隣に座って泣き噦る姿を見ながら考える。とめどなく溢れる涙にも、少しも心揺れない自分は冷血なやつに違いない。よくも 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:阿修羅武器 必須要素:もみあげ 制限時間:15分 読者:93 人 文字数:1046字
「とっさの時使えるように、小刀を忍ばせています」という人がいて感銘を受けた。「ふおおわああ」って思った。そうか、そうだよなあ。そういうことはあるかもしれないなあ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雪山ユウグレ お題:栄光の狐 必須要素:もみあげ 制限時間:15分 読者:56 人 文字数:696字
熱いですからね、気を付けてくださいね。そう念を押された。リコは神妙な顔でその忠告を聞き、そしてその神妙な面持ちのままそうっと両手を差し出す。女将はリコの手にこ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:かたぎり お題:恐ろしいお茶 必須要素:もみあげ 制限時間:15分 読者:83 人 文字数:333字
恐ろしいお茶アランはイタリア人だ髪は金だが黒初めしたもみあげがチャームポイントもともと母国でパスタのオーナーシェフをやっていたのだが来日して茶会を開くことにした 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:餅水 お題:恐ろしいお茶 必須要素:もみあげ 制限時間:15分 読者:78 人 文字数:780字
恐ろしいお茶 俺は緊張していた。 目の前の少女が出したお茶があまりにも異様だったのだ。 「なあ、”ソレ”は本当にただのお茶なんだよな?」 俺の問いに少女はニヤリ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:観月らず@企画 お題:恐ろしいお茶 必須要素:もみあげ 制限時間:15分 読者:138 人 文字数:822字
僕の好きなナガノさんは、今日も長い髪をポニーテールにまとめている。もみあげの部分は結ばずに垂らしているあたりが、活発かつ嫋やかな印象を与えていることを、本人は 〈続きを読む〉

匿名さんの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:魅惑の罪人 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:511字
髪の毛がサラサラだったのだ。少女がクラスメイトに惹かれたのはそれが理由だった。髪の毛がサラサラで浮いた毛が一本もなくて光の反射する形すら美しかった。他の子と同じ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:部屋とYシャツとカップル 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:599字
いくら腕を伸ばそうと袖からは指先しか出ない。いわゆる彼シャツ萌え袖というやつか、感慨深くぶかぶかのワイシャツの襟首を、ぶかぶかともてあそぶ。「こら」バスタオルと 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
愛でつ休みつ ※未完
作者:匿名さん お題:昼の子犬 制限時間:30分 読者:0 人 文字数:687字
目の前で寝そべるゴロウ。ごろんと腹を見せている。縁側の日ざしは暖かく、照らされる彼は心地よさそうに目を細めていた。 菜月は彼の腹をさする。包み込まれるような触 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:夜の妄想 必須要素:オタク 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:411字
星明かりの下で散歩をすると、知らない世界の門が開く。小学生の頃毎日そんな物語ばかり読んでいた。虹色に輝く天使の彫られた石門をくぐって、草原の中に飛び出す話。群青 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
心のディナー ※未完
作者:匿名さん お題:当たり前の愛 制限時間:15分 読者:0 人 文字数:195字
とてつもなく長い歴史を経てしても産まれた以上、必ず立ちはだかる難題、愛人それぞれに形があり、それを感じ取るには当本人でしか知り得ないものもある。与える本人が言っ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:走る言い訳 制限時間:30分 読者:4 人 文字数:1439字
――持久走にマジになるのって、ないよね。 誰かがそう言っていた。いや、誰もがそう言っていた。全力で何かに取り組むのはダサいこと。ガリ勉はつまらない。みんなそう 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:ロシア式の嘘 制限時間:30分 読者:4 人 文字数:1036字
酒場で回りの客を窺いながら1人グラスかたむけていたその女はロシア人だった。――あの男は簡単に落ちそうだわ 彼女は日本人離れした丹誠な顔立ちのセクシーな口から流 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:僕の好きな帝王 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:632字
隣のあいつは生意気だ。僕はペンケースから鉛筆を取るふりをしてそっと様子を伺った。隣に座る佐藤は大口開けてあくびをして、つまらなそうに頬杖をついている。シャーペン 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:調和した行動 必須要素:鬼コーチ 制限時間:30分 読者:2 人 文字数:1009字
「13秒26」少年はストップウォッチを片手に僕を見る。頬を伝う汗がアスファルトの上に落ちた。とめどなく伝う汗を片手で拭うも、まるで意味をなさずにまた流れる。「に 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:理想的な女祭り! 制限時間:15分 読者:1 人 文字数:352字
A子は美人だ。美人だがそれだけだ。B子は料理がプロ並みに上手い。上手いが庶民的な料理しか作れない。C子は資産家だ。だが家柄がいいだけで、C子自身には何の取り柄も 〈続きを読む〉