お題:子供の悲しみ 必須要素:にゃんまげ 制限時間:30分 読者:55 人 文字数:851字

僕の幸せ
「おまえなんかペットの猫と同じだ。いや、猫以下だ」
そう言われながら、家族に笑われ、叩かれていた。
「にゃんまげくそ野郎」という変なあだ名まで付けられていた。
いっそ消えてしまいたい。
もう、こんな家は出てやろう。
僕は夜の街へ飛び出した。
『守ろうよ。子供という名の宝物』
そんな看板があちこちに立っていた。
でも、アザだらけの僕を見ても、大人たちは、だれもなにも言ってくれない。
泣いたけれど、やっぱりだれもなにも言ってくれない。
「わー、ケーキ、ちょー美味しそー」
商店街は、着飾った人たちが、イルミネーションを浴びながら、買い物を楽しんでいた。
だれも僕のことは、どうでもいいみたいだった。
いや。もしかすると、僕は透明人間になってしまったんじゃないかな。
だからだれも僕になにも言ってくれないんだ。
僕は、もうだれにもいじめられないことに安心した。少しだけ気が楽になって、夜の街を散歩した。
だけど、無視されるのは、笑われたり叩かれたりするよりも辛かった。
僕は川の橋の欄干にのぼる。
通りかかったお爺さんが、ぎょっとした。街のパトロールをしているお爺さんだ。懐中電灯で顔を照らされた。そして怒鳴られた。
「飛び降りようってのか? 命を粗末にするんじゃない! どこの子だ!?」
「なんだ。見えてるんだ」
「当たり前じゃないか!」
「じゃあ、どうしてさっき、無視をしたの」
「……」
「僕を家に連れて行くの? そのあと僕はどうなるの? ずっと家族にいじめられ続けるだけだよ。お爺さんは僕を助けることができるの?」
「……」
「さようなら」
僕は空中に一歩を踏み出した。

ーーーーーー

僕は助けられた。家族は僕にあきれたのか、無視するようになった。
街の大人たちも、先生も、友達も、僕を前よりも無視した。
辛かった。悲しかった。けれど、もう慣れてしまった。楽だった。もうだれにもなにもされなくてすむから。
僕は今度こそ完全に消えたんだ。体も消えたし、人間らしい感情も消えた。
僕は幸せだった。
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