お題:肌寒い小雨 制限時間:15分 読者:28 人 文字数:588字

水際7
朝から強い雨が降っていて、遅刻しそうな身体が、一瞬ひるんですぐに駆け出す。雨のせいかぐんと冷え込んでいて、雨だと暖かくなるときもあるのに、と思う。スタスタと足早に歩く足裏が、地面を覆う水を弾きビタビタと音を鳴らしていた。寝たのが遅かったせいか、うまく起きれず、まぶたが変な方向に引っ張られている感覚がある。乱暴に指先で左右にこすって、うやむやにしようとしたが、余計ひどくなって終わった。
長傘には植物に絵が描かれていて、傘の裏は緑色に光った。まぶたの妙な引っ張りはようやくとれたが、代わりに首の裏がぎゅんぎゅんと痛んでいた。傘の妙な位置を見上げ続けていたせいだと思っていた。傘を持っていない方の手をコートのポケットから引っこ抜き、傘の裏を撫でる。水滴を受け止めている傘はひんやりと冷たかった。水の恩恵を受け続ける植物は、傘の中で育つのだろうか。自分の指先が緑色に照らされている。するすると指を移動させると、植物が描かれていない黄色い部分に突き当たる。そこまで指を移動させて、はじめて自分以外の誰かが、この強い雨の中をひたひたと歩いていた。
傘の裏から指を離し、そのまま自分の首の裏に指先を乗せる。ぐにぐにと手当たり次第に首の裏を指先で押す。押すその一瞬だけ、本来の身体は押し出されて、次の身体が現れる。指先はひんやりとしていて、首の上で滑る。どうやら少し濡れているらしかった。
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