タケル ※未完
「いってきまーす。」
「ちょっと、香住!朝ごはん食べたの?」
「時間が無いからいいー!」
母親の声を背中に、私は玄関の扉を開けた。
「うう、寒いッ……。」
昨日の天気予報によれば今日はこの冬一番の冷え込みだ。
冷たい空気が顔に痛い。
えい、と自分に喝を入れて、私は家の門をかけ出た。
その時、目の端に移った向かいの家の様子に私は足を止めた。
廃屋となって久しい、お向かいの家。
その家の横に重機が止まっていた。
私は直感した。
ーーついに、この日が来たのだと。
◇
小学生の頃、向かいの家には男の子が住んでいた。
タケルと言う名前の元気な子だった。
当時、体の弱かった私は、学校を休みがちだった。
学校を休んだ日は二階の自分の部屋から、元気そうにかけていくタケルを見るのが少ない楽しみだった。
しかし、ある日を境にタケルの姿を見なくなった。
次第にタケルの家の庭には雑草が生い茂り、家は朽ちていった。
あとから親に聞いたところ、どうやら夜逃げをしたという事らしい。
◇
向かいの家なのに話をしたことすら無かったタケル。
いざ取り壊されると思うと、あの頃の事を唐突に思い出す。
元気よく門を開けて、かけていった姿。
すっかり錆びついた門は錆びついた音を立てながら木枯らしに吹かれて揺れる。
「どうしてんのかなぁ……。」
その時、作業員の男の火とが
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