お題:寒い教室 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:708字

冬の教室
 なぜいまだにこんな古いストーブを使っているんだろう。朝、登校するたびに私は思う。今どき、家でも外でも、こんなものを使って暖をとっているところなんてない。使っているのは学校くらいのもんだ。小学生だったとき、初めて迎えた冬にこいつを見たときには驚いたな。アニメでお餅焼いてるやつだーって。
 けれど、きっと予算だとか場所だとかの都合で仕方ないのだろう。なんてったって公立だ。私立にいったかつての友達は、一教室に一台ついた大型エアコンで夏も冬も快適だと笑っていた。そのときばかりは、なぜ中学受験をしようと思わなかったのか、少しだけ本気で後悔した。まあ、そんなこと今さら言っても仕方ないのだけれど。
 だから私は、今日も仕方なく灯油式の古びたストーブに当たる。授業の合間の休み時間がくるたびに最後尾の席を立って、ストーブの周りをすでに取り囲み始めている人垣に体をねじ込むようにして。教室の中には平気そうな顔をして自分の席で友達と談笑しているやつらもいるけれど、私には気が知れない。休み時間の間だけでも体を温めておかないと、次の授業の間に凍死してしまう。だから、そう、仕方なく私はストーブに当たる。何人かのクラスメイトも、仕方なくストーブに当たっている。そのうちの誰かと、肩が当たってしまうのも、まあ、仕方ない。
 教壇の端に腰かけてストーブに当たりながら、隣に座る北村の様子をちらっとうかがってみる。こいつは、気づいているのだろうか。私たちの肩が触れていることに。仕方なく、私が肩を当てていることに。いつも通りむすっとした顔からは、何も読み取れない。けれど、まあそれでいいのだ。
 私は温かいこの時間が、とても好きだった。
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