お題:寒い教室 制限時間:15分 読者:68 人 文字数:708字

冬の教室
 なぜいまだにこんな古いストーブを使っているんだろう。朝、登校するたびに私は思う。今どき、家でも外でも、こんなものを使って暖をとっているところなんてない。使っているのは学校くらいのもんだ。小学生だったとき、初めて迎えた冬にこいつを見たときには驚いたな。アニメでお餅焼いてるやつだーって。
 けれど、きっと予算だとか場所だとかの都合で仕方ないのだろう。なんてったって公立だ。私立にいったかつての友達は、一教室に一台ついた大型エアコンで夏も冬も快適だと笑っていた。そのときばかりは、なぜ中学受験をしようと思わなかったのか、少しだけ本気で後悔した。まあ、そんなこと今さら言っても仕方ないのだけれど。
 だから私は、今日も仕方なく灯油式の古びたストーブに当たる。授業の合間の休み時間がくるたびに最後尾の席を立って、ストーブの周りをすでに取り囲み始めている人垣に体をねじ込むようにして。教室の中には平気そうな顔をして自分の席で友達と談笑しているやつらもいるけれど、私には気が知れない。休み時間の間だけでも体を温めておかないと、次の授業の間に凍死してしまう。だから、そう、仕方なく私はストーブに当たる。何人かのクラスメイトも、仕方なくストーブに当たっている。そのうちの誰かと、肩が当たってしまうのも、まあ、仕方ない。
 教壇の端に腰かけてストーブに当たりながら、隣に座る北村の様子をちらっとうかがってみる。こいつは、気づいているのだろうか。私たちの肩が触れていることに。仕方なく、私が肩を当てていることに。いつも通りむすっとした顔からは、何も読み取れない。けれど、まあそれでいいのだ。
 私は温かいこの時間が、とても好きだった。
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
死後 ※未完
作者:わんこ お題:早すぎた血液 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:513字
どくどくと血が流れていく。右手の動脈に傷を負い、血液が大量に流れ出していく。もう意識を保てるのもあと少しだろう。手で傷跡を抑えても無駄なようだ。止めどなく血液は 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ダツ・ Ambrose お題:軽い汁 制限時間:15分 読者:11 人 文字数:1206字
「告白されちゃった」「ぶっ! ぐっほぐっほ……」 啜っていた味噌汁を、彼は吹き出しそうになった。だけどそれを最小限しか零さない所はこういった事態に慣れているとい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ダツ・ Ambrose お題:不思議な体 制限時間:15分 読者:16 人 文字数:1290字
「ということで、今日はあなたにインタビューをしたいと思います」「どういうこと」「まず、いつ頃からその力が使えるようになったのですか」「え、あ、そうね。うーん、半 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:にいろちゃん@Vのモノ お題:今度の孤島 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:204字
また新しい生活が始まった。いつも俺の生活は唐突に終わる。せっかく住み心地がいいようにしたのに。俺が住むことは叶わないらしい。今度の生活はいつも以上に難産だ。無茶 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
bba ※未完
作者:日ノ宮理李@りゅうはきらい お題:暗いババァ 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:1023字
夜道には不審者が現れるから注意しなさいと担任は話してた。それとあまり遅くならないようにも言ってた。 塾で遅くなるから僕にはどうしようもない。誰か一緒に帰ってく 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:南野 ツバサ お題:今度の冥界 制限時間:15分 読者:7 人 文字数:306字
「んん……」 ローズは目を覚ました。 あたり一面には何もない薄暗い空間が広がる。 ひんやりとした空気が肌を撫で、だんだんと頭が冴えてくる。 「そうか……私は… 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:春の躍動 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:1059字
もう四月も半ばを過ぎるというのに雪がちらついている。 気まぐれな春の天気というわけではない。この辺りは、ずいぶんと長い間冬を引きずっていた。 この年になってか 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:でよんし お題:緑の水 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:190字
女子学生を中心に爆発的人気で連日長蛇の列が止まらない人気店があるそうだ。何でも緑色の水を出すお店何だそうで...それで緑の水ってじゃあ一体何なんだ? お茶でもな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:イタリア式の映画 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:320字
愛している、とか聞こえたかもしれない。友人がイタリア映画が見たいとかわけわかんないことを言うからそんな感じのやつを借りてきたらがっつり恋愛映画だった。同性と騒 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:akari お題:不幸な太陽 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:422字
コップに入った水道水。そこに牛乳一滴垂らしても、白く染まることはない。霧散して、間もなく消えてしまうだけだった。 だから、私は重ねることにした。 髪は短く、明 〈続きを読む〉

小宇佐銀次郎の即興 小説


ユーザーアイコン
作者:小宇佐銀次郎 お題:知らぬ間の牢屋 制限時間:15分 読者:65 人 文字数:617字
改札を通って北口に向かっていると、真新しいポスターがでかでかと貼ってあるのが目に入った。「『できない君』も『できる君』に!」 どうやら近くに学習塾ができたらし 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:小宇佐銀次郎 お題:寒い教室 制限時間:15分 読者:68 人 文字数:708字
なぜいまだにこんな古いストーブを使っているんだろう。朝、登校するたびに私は思う。今どき、家でも外でも、こんなものを使って暖をとっているところなんてない。使って 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
とうひ ※未完
作者:小宇佐銀次郎 お題:熱い医者 制限時間:15分 読者:61 人 文字数:458字
医者である父さんのことが自慢だった。 家にはお金がいっぱいあって、経済的な不便は一度だって感じたことなんかなかった。塾だって大手のいいところに通わせてもらえて 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
ブランコ ※未完
作者:小宇佐銀次郎 お題:遠い父 制限時間:15分 読者:170 人 文字数:503字
二丁目の公園で、ブランコが揺れていた。誘われているみたいで、僕はその幼い黄色と赤のブランコに座って軽く地面を蹴った。鎖がギイギイと辛そうに軋んで揺れる。公園に 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:小宇佐銀次郎 お題:商業的な狼 制限時間:15分 読者:181 人 文字数:588字
部屋はぬめりと重たい空気に満たされていた。肌にまとわりつくような、もはや湿度というよりは粘度というのが相応しい、不快な嫌らしさだった。それを掻き分けて、茶封筒 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
異種族採用 ※未完
作者:小宇佐銀次郎 お題:危ない就職 制限時間:15分 読者:161 人 文字数:409字
「はい、次の方どーぞー」 椅子の背もたれに思い切り寄りかかりながら、ドアの外へやる気のない声を放る。朝から始めた採用面接も、もう佳境。窓の外には夜の帳が落ちてい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:小宇佐銀次郎 お題:茶色い囚人 制限時間:15分 読者:193 人 文字数:695字
夜が明けていく。東の空が白んでいく。どこからか聞こえるテレビの音、癇に障る笑い声。くだらない。クダラナイ。僕はそっと目を閉じる。 僕たちは夜に生まれる。夜の帳 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
初夏の記憶 ※未完
作者:小宇佐銀次郎 お題:どす黒いテロリスト 制限時間:15分 読者:169 人 文字数:791字
あの日のことで思い出すのは、いつも父さんの後ろ姿だ。「待って! お父さん、待ってよ!」 どんなに叫んだって父さんが待ってはくれないことを、僕は知っていた。それ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:小宇佐銀次郎 お題:いわゆる電車 制限時間:15分 読者:184 人 文字数:772字
人間、頑張りにも我慢にも限界がある。それが来てしまったら、もう何かにすがるしかなくなるものだ。 キーホルダーにただ一つだけついた鍵を挿し、重い鉄製のドアを開い 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:小宇佐銀次郎 お題:壊れかけの育毛 制限時間:15分 読者:174 人 文字数:634字
部長の指がイライラと机を叩いている。パタパタと。爪がきちんと切られた、柔らかい音だった。「一体どうしろってんだ……!」「まあまあ」 小企業とはいえ、二十八歳の 〈続きを読む〉