お題:僕の好きなカラス 制限時間:15分 読者:115 人 文字数:774字

水際6
駅前にはいろんなものが集まりやすく、吸い込まれたり吐き出されたりする人々でいつもごった返している。その中を、誰より早く道を急ぎたい気分になったり、せかせかとするのが馬鹿らしくなってうんと遅く歩いたりする。駅に備え付けられた売店の壁にはサイネージがあり、今日の星座占いを表示していた。上位五つまでしか表示されていない星座の名前に、自分の星座がないことを一瞬見ただけで分かってしまう。少なくとも五位以内ではないってことだ。
どこの会社もクールビズをやめたらしく、先週まで白や青のワイシャツを着ていた人たちが、誰も彼もが黒いジャケットを着込んでいた。一気に黒ずんだ視界に、季節が変わるたびに感じる妙な新鮮さを感じながら、その群に身を埋める。群の向かう方向はバラバラではなく、大体が同じ方に向かって歩いていた。だからこそ群を成せていた。ピッピッピとあちこちから改札を抜ける音が途切れなく聞こえてくる。改札を抜けた先は横断歩道で、信号機やあたりに張り巡らされた電線の上にはびっちと鳥がとまっていた。駅のバスロータリーには木が点々と植わっており、そこをねぐらにしているようだった。あまり鳥の鳴き声が聞こえないのが気になった。きっと、駅の足音の方が大きいのだ。
黒々としたカラスが、歩道と道路の間の柵に止まって、ジッと横断歩道の方を見つめている。家の近くでも見るが、都会の駅の近くにいるカラスの方が、なぜか一回りくらい大きく見えた。カラス自身がほんとうに大きいのかどうかは、分からない。ただそういうような気がするのであり、そうであったらいいなと思っていた。
カラスの羽は、メラニンによって強固さを得ている。そう本で読んだ。自分の髪の毛を指先でつまむ。前を歩く黒いスーツの、背中のシワをみる。ちょっと色あせた黒だった。ぼくたちはそんなにつよくないのだ、それがいい。
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