お題:楽観的な友人 必須要素:栓抜き 制限時間:1時間 読者:30 人 文字数:1198字 評価:1人

泡に消える
悲観の友と思っていた友人が職場で彼女ができてからというもの美容院に通って髪にワックスなど付けたり不要な小物を買いに出かけたり僕にアドバイスなぞするようになったので交流を絶った。アドバイスするというのは今の僕を否定することだ。幸せとは一元的でない。自分の思うしあわせの状態にない人は全てふしあわせではないのだ。ふしあわせの中にこそあるしあわせもある。僕が将来の伴侶にするべきプロポーズはこうだ。「僕と一緒に不幸せになってください」。


深夜の牛丼屋、隣に座った面長の妙に皺のないおじさんにこう言われる。
「君はなかなか良い顔をしているね。」
ゲイに偏見はないがあいにく売春はやっていない。
「はぁ」
「人間というのは齢を取るごとに顔に出るもんだよ。君はまだ若いが人生の全てを知ったような顔をしている。」
人生の全てを知ったつもりはないが確かに現状の坦々とした日々がこの先も続くような気はしている。
「この栓抜きをあげよう。」
おじさんが上着から取り出したのは何の変哲もない栓抜き。
「この栓抜きで瓶を開ければ人生が見えてくる。」
スッと立ち上がり、おもむろに店を後にする。あのおっさん金払ったか?と思った矢先、店員が飛び出して行った。


栓抜きなんて貰っても困る。瓶は捨てるのが面倒くさい。だが栓抜き自体も金属なので捨てるのが億劫で、どこかのゴミ箱に放り投げようかと思いながら入ったスーパーで、瓶ビールが目に入る。酒は眠くなるばかりで楽しくもならないので飲むこともないが妙に説得力のあるおじさんの声が耳に残る。レジに通す。惣菜の手羽先を横に構え、いざ神妙に瓶ビールを開ける。
開けたが、何も起きない。瓶を口につけ冷たい刺激を喉に通してみたがやはり何も起きない。味の濃い手羽先やフライドポテトとともにその香りを楽しんでみたが何も起きなかった。妙に説得力のあるただの変なおじさんだったのだと納得し床に就くと、その日不思議な夢を見た。
始まりは赤ちゃんからで、一人っ子として両親の愛情を一身に受け幼稚園でこそ引っ込み思案であったが小学校では頭はよくないものの友達は多く、6年生では児童会の会長となり寒い冬に雑巾を濡らして床掃除させることをやめさせたりした。中学ではテニス部に入り学友とさわやかな汗を流し県大会止まりではあったが楽しい部活生活を送った。頭の出来は良くなかったが努力は嫌いではなかったため高校では熱心に受験に取り組み、全国で名のある大学の文学部に入った。大いに文学をやりつつ私は恋にバイトに忙しく、毎日今日はいい日だったと呟いて眠りに就いた。
目が覚めると私は僕であった。空虚であった。今までずっと僕であったためにずっと幸せであったが、他人の人生を歩んで見つめてみればこれほどみじめな人生もない。あのおじさんは妙に神様の雰囲気をまとっていたが死神の類だったのかもしれないと思えてくる。

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はろーの即興 小説


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