お題:複雑な地下室 制限時間:15分 読者:34 人 文字数:837字

伸ばした手の行方
虚空へ向けて手を伸ばす。

何度も、何度も、手を伸ばしてきた。

だけど、捕まえられたものは一つもなかった。

いつからだろう、現実に嫌気が指したのは。

何度やっても届かないこの想いは止むことをしらない。

涙は枯れることなく、嘆きの湖から零れ落ちる。

いつになったら、私は満ち足りるんだろう。

その答えすら見つけられないまま。

今日も私は生き続ける。

この牢獄の中で。

天井から微かに見える光。

それだけが今の私の、たった一つの救い。

暗くジメジメしたこの場所は、人の精神を病ませる。

胸の鼓動も跳ね返り、生を体感する。

トクン、トクン。

いつまで、この″嫌な音″は奏で続けるのだろう。

目障りだ。

こんなものがあったから、私は…!

壁に手を当てる。

打ち所が悪かったのか、手から血が溢れる。

その感覚に、後悔と快楽を覚える。

血を舐める瞬間、全てが私の中に入ってくるような…。

そして、身体から重要な何かが抜け出してしまうような…。

なんとも言えない感覚。

だけど、それは現実。

今の私が生きているのは、痛みがあるからだ。

もしも痛みがなければ、私は幸せだったのだろうか。

そんなことを考え続けても意味がない。

人が人である以上、痛みから逃れることはできない。

それは、人類が古来に犯した原初の罪。

もしも、なんてものはないけれど、彼らの原罪がなければ、私はいなかったかもしれない。

だけど、それで得られる世界が平和で構築されるものなら、どれだけ嬉しいことなのだろう。

全ては憶測でしかなく、今日も時は緩やかに進む。

掴むことができなかった左手も、今では十分に動く。

だけど、それは本当に正しいのだろうか。

今まで溢してきた私が、誰かに手を伸ばすだなんて。

そうして、始まりの思考に戻る。

結局、私は目に見えるものしか興味がない。

たとえそれで世界が崩壊しようとも。

あぁ、だけど、やっぱり、人は…
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