お題:今の勇者 必須要素:下駄箱 制限時間:15分 読者:35 人 文字数:683字
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今の勇者
昔の勇者と言えば、歴史の教科書によくよく載っている。悪逆非道の暴君を倒したり、荒廃した村を立て直したり、そういったことをやってのけた人物は、何千年も経った今となっても紙の本の中に生き続けている。しかしそれは昔の勇者の話である。
今の勇者は、下駄箱に生きている。

「下駄箱に住んでるとさ」
勇者は小さな背をピンと張って、もったいぶった口調で話した。「色んなことがわかるんだよ。靴を見ているだけで。この靴底の擦り切れ具合は、アレだな、昨日、デートに行ったな、とか」
「長年、靴を見続けていると、そうなるんですか」
僕は、勇者が座っている段と背丈を合わせるように下駄箱にもたれかかっていた。放課後の学校はすっかり人気が無くなっていて、僕は夕日に照らされたまま勇者といつまでも喋り続けることができた。
「そうだな。で、俺が今居座っているこの下駄箱は、お前の好きな子の靴が入っている下駄箱なんだよな」
「そうですね」
勇者は急に真剣な目で僕を見据えた。わかってますって、と僕は無感情に答える。勇者はニヤリと笑った。
「結論から言うとな、この子はおっさんと付き合ってるよ。金をもらって」
僕は返事をしなかった。勇者は一層笑みを深めて、「靴底を見たら一目瞭然だな」と決め台詞のように言った。
大きな反応を見せたくはなかったが、ふぅ、と気づけば僕はため息を漏らしていた。小さな勇者は僕に目配せをした。
「で、お前はどうするんだ?」
「どうするって」
「どうにかするのか?」
沈黙が訪れた。
どうにかするよ、と僕は答えている。
「今の勇者は、せいぜいそんなことしかできないからね」
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