お題:素朴な娼婦 必須要素:若者使用不可 制限時間:15分 読者:61 人 文字数:703字

正体見たり枯れ尾花
(#75)

 あいことばを知らなければ相手にしてもらえない。
 そんな噂が巷に流れているものの、性的な興味が芽生えていない私にとっては馬の耳に念仏だった。
 大きな川に架かっている木造の橋、それをあちらの村方面に向かって右側の柳の下。
 毎晩そこに女が立っているらしい。
 いつも濡れた髪をしていて、柳のように下を向きながら客を待っている。
 暗がりにチラと見え隠れする長い黒髪の上を、星のように煌めく水滴が女を装飾している。
 遠くからでも判別できる女の肉感的な肢体に、男は灯りに群がる羽虫の方に引き寄せられていく。
 けれど、大抵の輩は瞬時に女に追い返されている。
 あいことばってェのを言わなきゃア、駄目なんだってよゥ。
 鼻をへし折られた男どもはこぞってそう愚痴を漏らしていたとのことだ。
 子供心に私は野心を抱いた。
 女をものにしてやる。

 元服を迎え、大人の男性として世に認められるようになった私は、友人に連れられて筆おろしを済ませた後、その足で大きな川へと急いだ。
 その夜はちょうど満月で、月明かりが川の流れを明確に映し出していた。
 白い波頭がチラホラと幾つも確認できる。
 私は肌の白い自分の姿も月明かりによって浮き彫りにされている気がして、懐に忍ばせていた藍色の大風呂敷を頭に巻き付けた。
 橋を渡るとギィギィと木材が軋む音がする。
 普段は気にすることなどないけれど、自分が大人になって体重が増えたせいだと勝手に思い込んだ。
 急ぎ足で橋を渡ると、右手の柳の下に人影が見えた。
 髪が長い。女のやわらかい曲線が影になっていても分かる。
 私の心の臓が早鐘のように鼓動し始めた。
作者にコメント

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