お題:思い出のサーカス 制限時間:30分 読者:85 人 文字数:902字

サァカス
(冷たい牢に閉じ込められた大きな猛獣。
火の上を渡る人間と空を飛ぶ少女。
大きなブランコから手を降る少年と、玉に乗って怪しげに微笑む道化師。)

…ああ。これがきっとサァカスというものだろう。皆がいつも楽しげに床で話して去っていくのだ。

(冷たい牢に閉じ込められた大きな猛獣。
火の上を渡る人間と空を飛ぶ少女。
大きなブランコから手を降る少年と、玉に乗って怪しげに微笑む道化師。)

街の夜はすんとして、灯りがポツポツ着き始める。サァカスのテントはぼうぼうに明るい。
中では騒々しいほどに人が蠢いている。

(冷たい牢に閉じ込められた大きな猛獣。
火の上を渡る人間と空を飛ぶ少女。
大きなブランコから手を降る少年と、玉に乗って怪しげに微笑む道化師。)

花や火や光が飛び交い人々はそこに吸い込まれ、テントはまた一段とぼうぼうぼうぼう、燃え上がる。笑え笑え、歌え歌え。叫びが阿鼻叫喚みたく聞こえるではないか。

(冷たい牢に閉じ込められた大きな猛獣。
火の上を渡る人間と空を飛ぶ少女。
大きなブランコから手を降る少年と、玉に乗って怪しげに微笑む道化師。)

色とりどりのテントを私は外から見ている。ぼうぼうに盛り上がるサァカスの外側は、私一人だけ残してすんと静かに夜が潜んでいる。

(冷たい牢に閉じ込められた大きな猛獣。
火の上を渡る人間と空を飛ぶ少女。
大きなブランコから手を降る少年と、玉に乗って怪しげに微笑む道化師。)

目を覚ませ、目を覚ませ。
それは大きな夢なのだ。それは大きな夢なのだ。
夢のなかをさ迷づて、彼らは彼らを忘却している。
サァカスに吸い込まれていく。脳髄にサァカスが染み付いていく。君達まで見世物になるのかい?

(冷たい牢に閉じ込められた大きな猛獣。
火の上を渡る人間と空を飛ぶ少女。
大きなブランコから手を降る少年と、玉に乗って怪しげに微笑む道化師。)

そして病床に臥せった私を嘲け笑って、虚ろな目で、恍惚に、こう言うのだ。

(冷たい牢に閉じ込められた大きな猛獣。
火の上を渡る人間と空を飛ぶ少女。
大きなブランコから手を降る少年と、玉に乗って怪しげに微笑む道化師。)
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