お題:恐ろしい音楽 制限時間:1時間 読者:201 人 文字数:832字

未完の傑作
 ある高名な作曲家が書いた楽譜が、ちょうど百年後となる年に発見された。
 彼の生家が痛んできたので、修復工事をした際、壁の中から見つかったのである。
 楽譜はいくらか損傷していたものの、最新技術の粋を集め、無事に復元される。
 いったいどんな曲なのだろう、と考えるのはみな同じ。
 早速一流の楽団が集められ、演奏会が開かれる運びとなった。
 満員の会場に、満足顔の復元をした研究者。
 この興奮を伝えたい。そう考えていると、一団から少し離れた所に佇む演奏者の男性を目にする。
 丁度いいと、研究者は、足早に近づいて声をかけた。
「いや、よくぞここまで漕ぎつけられたものだ。見てください、皆さん今か今かと興奮を抑えきれないといった感じです。修復した甲斐があったというものです。あ、もちろん私も期待していますよ」
「はあ」
 妙に気の抜けた返事に、研究者が顔をしかめる。
「どうされました? まさか、楽譜に不備があったとか」
「いえ、楽譜は問題ありませんでした」
「もしかして、偽物……」
「それはないでしょう。彼の作品は何度か演奏していますので、彼のものであることは分かります」
「では一体」
 研究者の質問は、開始のベルに遮られた。
 
 演奏後、研究者は再び同じ人物に声をかける。
「素晴らしい曲じゃないですか。あ、いや、私は音楽の事はまるで詳しくはないですけど、でも素晴らしいことは分かります。まさに、今日のような晴れの日に相応しい。一体、何故未公開だったのかが分からないぐらいですよ」
「ええ、そうですね」
 演奏者は、相変わらず浮かない顔をしている。
「一体どうしたんですか? 演奏前から、そんな調子ですけど」
「彼の事はご存じで?」
「……ええ、まあ。生涯独身だったと聞いてますが」
 そう答えると、演奏者は楽譜を取り出し、ある個所を指さした。
「この曲、彼自身の結婚式で使う予定だったんですよ。ここに書いてあるでしょう。我の愛する伴侶を思うようにって」
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