お題:簡単な水 制限時間:15分 読者:31 人 文字数:660字
[削除]

人生の分かれ目
水が一杯に入ったコップがある。僕はそれに口をつけて、向かいに座る彼女を見た。
「本題に入るね」
重たい口を開けば、彼女はいつも通り柔らかな笑みを浮かべて頷いた。「どんな話でも、真剣に聞くから安心して」
ぽつぽつと溢れる言葉が、少しかさの減ったコップに吸い込まれていく。
「僕と君はもう一緒に住んで、何年になるかな。とにかく、結構長く一緒だと思うんだ。それで」
「うん」
「こう、僕は話すのが下手だから、うまく伝わってないと思うけど。ちゃんと君が好きで」
「うん」
もう一度コップに口をつけて、少し深呼吸をした。
心臓の音がうるさい。自分が何を言いたいのかわからなくなりそうだ。
「えっと、だから、その」
「うん」
「け、結婚、しよう」
下に落とした視線は、上げられなかった。おもむろに取り出した指輪を、震える手でテーブルに乗せた。
うつむいたまま指輪を差し出す僕は、さぞおかしく映ったに違いない。ふふ、と彼女の声が聞こえた。
「…うん、ありがとう。これからよろしくお願いします」
少し涙ぐんだ彼女は、今まで見た中で一番綺麗だった。
「本当はこないだ、レストランに行った時にする予定だったんだ。でも、いざってなると緊張して」
「緊張、してたね。でも美味しい料理を一緒に食べられて嬉しかったの」
もちろん、おうちでゆっくり先のお話をするのも好きだけれど。彼女はティッシュで鼻をかみながら言った。
夜景の見えるレストランで花束を用意、なんてする必要はなかったのだ。
家で水を飲みながらでも、ちゃんと「好き」伝えられるのだから。
この作品をツイート

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:簡単な水 制限時間:15分 読者:59 人 文字数:1140字
「会いに行けるアイドル」の登場により、アイドルというものは近しい存在になった。 握手会や手渡し会といった「直接会えること」がウリになるとわかると、多くの芸能事 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:にここ お題:簡単な水 制限時間:1時間 読者:907 人 文字数:2824字
ぎんたま二次創作 土沖?微々たるものですが、死体損壊系のちとえぐい描写が入ります。のでご注意。目が覚めると口中がひどく乾いていた。着替えも漫ろに便座の並ぶ洗面所 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:スタンダードタンポポ64 お題:無意識の帰り道 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:588字
気づいた。直後、少しだけ何とも言えない気持ちになる。恥ずかしいというかなんというか。胸のあたりや耳の裏がぞわぞわぞくぞくむずむず。そんな感覚。そんな感覚を身に 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:残念な内側 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:1196字
弟はイイ歳してアニメの美少女キャラに夢中で、姉としては気持ち悪いことこの上なかった。 夫の友人に同じようなオタク趣味の人がいるが、そちらは爽やかだし、弟のよう 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:DDT お題:綺麗な殺し屋 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:459字
「依頼が入ったら爪を塗ることから始めます」そう語るまりあさん(仮)の表情は柔らかい。「だって万全を尽くしたいので」まりあさんがこの仕事を始めたのは、中学二年生の 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:あにぃぃ お題:メジャーな彼氏 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:764字
何となく、私は一人でいいと思う。いや、一人でも良かったのかもしれないと思っている。そう思っているだけで、実際は愛する彼がいて、恐らく何事もなければこのままいずれ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
不器用な嘘 ※未完
作者:谷矢チカフミ お題:賢い嘘 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:446字
不審そうな視線に笑顔を返せば、結局は誰も口出しをしない。忠義だの恩だのと言う者達は、主のお気に入りである参謀の私に口出しは出来ない。笑いながらお決まりの言葉を 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:最弱のサラリーマン 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:1071字
静まり返った街中を、レールを軋ませながら電車が走り抜ける。酒で酔って寝ている人、大声で喋る化粧の濃い女性、疲れ切った顔で携帯を見るサラリーマンの群れ。私もその中 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
トラブル回避 ※未完
作者:にい お題:弱いゴリラ 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:886字
真正面から歩いてくる男と目が合ったとき、喧嘩をふっかけられると直感した。血に飢えているやつは目でわかる。そして大体、野獣のような顔つきをしている。幅の狭い道だ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:茂吉 お題:猫の窓 制限時間:15分 読者:7 人 文字数:435字
「なんで猫が家の中にいるんだ?」 愛猫で、さぼトラのペレが絨毯の上に座って、蒼い目をこちらに向けている。家の中には決して入れないようにしていた。室内が汚れること 〈続きを読む〉

匿名さんの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:トカゲのあそこ 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:780字
拝啓、橘様。たまたま立ち寄った駅前の本屋で『トカゲのあそこ』という珍妙な本を見つけてから、はや30分が経ちました。いかがお過ごしですか。私は相も変わらず、人ごみ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:興奮した犬 必須要素:400字以内 制限時間:30分 読者:5 人 文字数:400字
数日前から、愛犬の落ち着きがなくなった。 いつもそわそわとした様子で、あの躾がなった姿勢の面影もない。 厳しく叱ると少しの間大人しくなったが、時間が経つとまた 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:ぐちゃぐちゃの光 必須要素:お盆 制限時間:1時間 読者:4 人 文字数:2043字
「やあ、今年で盆の帰省も最後にせんといかんなあ」 うちの田舎では「はやく」で盆をやる。いわゆる新盆、7月盆などと呼ばれる奴だ。老人の中には未だになれないとぼやく 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:俺は病気 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:448字
朝、目がさめると、壁が目の前にあった。 いや、壁ではない。少し視線を動かしてみると電気が付いている。寝ぼけた頭でもわかる。これは天井だ。 はっきりと目が覚めて 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:弱いゴリラ 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:396字
威嚇された一頭のゴリラがすくみ上って、こちらに向かってきた。「今回も、失敗ですね」「うーん、ちゃんと自分を主張できれば、他のゴリラに引けは取らないはずなんだけ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
開かない扉 ※未完
作者:匿名さん お題:賢い伝承 制限時間:30分 読者:55 人 文字数:2107字
夜の校舎に生徒が侵入することを禁ず、なんてルールは大体どこの学校にも存在している。もちろん僕の学校でもそうだ。 真面目な生徒はもちろんそれに従う。僕は少なくと 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
信頼の価格 ※未完
作者:匿名さん お題:高い税理士 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:370字
誰かが言った。「同じ仕事を頼むなら安いほうにするよ。」別の誰かが言った。「そんな金額、払えるか!」そんな言葉を何度聞いただろうか。高い税理士。それが俺の世間での 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:怪しい虫 必須要素:オリーブオイル 制限時間:1時間 読者:0 人 文字数:1483字
猛暑の中スーパーへ行ったのはやはり間違いだったらしい。平日の休みで気分が高揚してしまったのが運の尽きかもしれない。両手に保冷バッグを持ちながら、夏の暑さを凌ご 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:猫の武器 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:649字
学校からの帰り道、自分が住んでいるマンションのすぐそばの家がネコを飼っている。 そいつは白い毛で包まれて、目が細くてとても可愛らしいやつだ。初めてそいつを見た 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:昼間の瞳 制限時間:30分 読者:4 人 文字数:966字
呪術師は荒い息をなんとか鎮めようと苦労していた。 深呼吸を繰り返し、咳き込み、そこでようやく足を止めることを自分に許すことにした。 立ち止まると、それまで「歩 〈続きを読む〉