お題:意外!それは恨み 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:858字

フォアグラ
(#54)

 フォアグラって知ってる?
 高級食材だから、一般庶民が口にする機会は微々たるものだと思うけれど。
 あのねっとりと脂っこい料理が美味に感じるのは、きっとある程度老いてから。
 だから子供は知らなくていいのよ、まだ、ね。
 美しさの裏には無垢な命を犠牲にしていることなんて、見て見ぬ振りが出来るようになるまでは。

 集合住宅の一室。
 二人の子供たちが二段ベッドの上下に分かれて、気持ちよさそうに眠っている。
 二人は小学生だろうか。ベッドの脇には赤色と黒色のランドセルが並んで置かれている。
 時計の針が午前七時を示す位置まで到達する頃、パタパタと軽い足音が子供部屋に近づく。
 優しく扉が開かれて、現れたのは桃色のエプロンを身につけたうら若き女性だ。
 髪の色は明るい栗色で、ゆるくウェーブがかっている。
 朝早い時間帯であるけれど、既にメイクは済ませているようで、長いまつげと艶めく唇の色が彼女の顔を輝かせていた。
 ほら、起きなさい、朝よ。
 優しい声をかけながら、いやいやをする二人の子供たちを覚醒させる。
 今朝はあなたたちの好きなフレンチトーストを作ったのよ。
 好物の話をされた子供たちは、先ほどまで駄々をこねていたのが嘘のように、布団を蹴り上げたかと思えば、ダイニングの方へ消えていった。
 口角を上げ、右手を口元へやって、上品に微笑む彼女。
 子供部屋の向かい側には夫婦の寝室がある。
 三回、リズミカルにノックをした後で、彼女は扉を開けた。
 キングサイズのベッドが部屋の中央に鎮座している。
 六畳ほどの寝室は、ほとんどベッドだけで埋まっていた。
 布団が山のように盛り上がっている。
 彼女は優しく布団をはいだ。すると丸々と太った男性が仰向けになって眠っていた。
 自らの脂肪が喉元を圧迫しているのか、苦しそうな寝息を立てている。
 彼女は嬉しそうに笑顔を見せた。
 もっと太ってちょうだい。私のために。
 あなたは私にとってのフォアグラなのだから。
 彼女は陰惨に笑った。
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