お題:暗黒の魔法使い 制限時間:15分 読者:52 人 文字数:1419字

魔法使い戦争
「『闇の魔法使い』という童話を書いたのだけれど、聞いてくれるかしら?」
「もうタイトルからして嫌な予感しかしないけれど、一応聞くわ」
 大鷺高校文芸部の真倉エミリは、部活動の一環として周辺の幼稚園や認定こども園、図書館などでオリジナルの絵本や紙芝居の読み聞かせを行っている。
 しかし、その内容というのが筆舌尽くしがたい悪意に満ち溢れているため、巷では「暗黒童話」などと呼ばれ、恐れ親しまれている。
 同高校の美術部で、エミリの友人である七條露子は、その絵本や紙芝居の挿絵を担当しているほか、書かれた作品の試し読みも行っていた。
 存在が有害指定図書とも言われる友人の扱いに思うところはあるものの、その「暗黒」ぶりの一端を担っているのが露子自身の挿絵であることは否めない。下手に制限をかけると、エミリが「暗黒童話」によって発散している黒い部分が、別の方向で暴発しかねないとも思う。今でも十分腹黒いし、これ以上となると自分の身が危ないかもしれない。
 そういうわけで、露子はエミリのやることにあまり待ったを掛けないようにしていた。
「で、どういう話? ファンタジー?」
「それは聞いてのお楽しみよ」

 この世には二種類の魔法使いがいます。
 暗黒に染まった闇の魔法使いと、そこまでではない魔法使い……。

「そこまでではない、って何?」
「半端野郎ね」
「辛辣!」

 暗黒に染まった闇の魔法使いは、多くの人に迷惑をかけています。
 それは、そこまで暗黒ではない闇の魔法使いたちにとっては辛いことでした。
 何故なら、暗黒に染まった闇の魔法使いが人に迷惑をかけることで、そこまでではない闇の魔法使いたちも同じように迷惑な存在だと思われるからです。

「ややこしいわ! 光の魔法使いとかにしたらいいじゃん」
「いいえ、どっちも闇の魔法使いでないと意味がないの」

 闇の魔法使いは、魔法使いをこじらせすぎています。
 だから、満員電車で露骨に女の人のにおいをかいだりします。
 そこまでではない闇の魔法使いたちも、魔法使いをこじらせているので、こっそり女の人のにおいをかいだりもしますが、それはあくまで自然な形を装っています。
 しかし、闇の魔法使いたちが露骨に鼻をふがふがさせるので、いつの間にか「女の人のにおいをかぐ」も痴漢の一種となってしまいました……。

「はい待っておかしい」
「出たわね」
 あまり待ったを掛けないようにしているが、それは心がけの話であり、結局待ったを掛けてしまうのが、七條露子という人間であった。
「魔法使いこじらせるって何? てか満員電車て……。魔法どこ行ったの?」
「ちょっと言ってる意味がわからない」
「いや、明確でしょうが!」
 首を横に振るエミリに、露子は声を荒げた。
「魔法使いって何よ? これって、現代が舞台なの?」
「どこのファンタジーに満員電車が出てくるの?」
「だったら、どこの現代劇に魔法使いが……」
 いや結構出てくるか、と露子は言葉を引っ込めた。
「もしかして、この魔法使いって、童貞ってこと?」
「あら、やっと気づいたの?」
 30歳を過ぎて童貞だと魔法が使えるようになる、という俗説があったのを露子は思い出した。
「え、で、これにおいかぐのが痴漢で、どう進めるわけ?」
「基本的に、魔法使いは女性に触れないものよ。だから、においをかいでいたのに、って魔法使い間で抗争が起きるのよ」
作者にコメント

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