お題:彼女と雑草 制限時間:15分 読者:39 人 文字数:1332字

イタイイタイ二人と雑草魂
「ねぇ、岩下くんって何が好きなのかな?」
 ゆみみの問いにわたしは「え? わたしに聞いてんの?」とつい聞き返してしまった。
「そうだよ。ねぇ、岩下くんって何が好きなのかな?」
 肯定即繰り返し。どんだけ自分のことばっかり考えてんだよこいつは、とわたしは苛立った。
 梅平ゆみみは、そういう女だった。ゆみみというのはニックネームでもなんでもなく、本名、紛れもなく戸籍や学生証に記載されている名前だ。
 正直、脳みそのかなりの部分がお花畑でできているんだろうな、と思わせる名前だ。そして、梅平ゆみみはその通りの性格をしている。
 これを「かわいい!」という男もいる。男と女は、正直別の生き物ではないかと思うぐらいの見解の隔たりだ。確かに見てくれはいいが、中身は目に痛い極彩色の花が咲き乱れていて、とてもじゃないが「かわいい」なんてものからは程遠いように思う。
「ねぇ、何かな? 何が好きだと思う?」
 知らねーよ、と言いたくなる。そして、実際に知らない。
 岩下くんというのは、うちの学部にいる野球バカのことだ。坊主頭で、何か金属の棒をかつて振り回していたらしい。今も野球好きらしいが、別に体育会の野球部に入っているわけでもなく、ただただ「どこそこのチームは監督の采配が悪い」とか「どこそこのチームはコーチが無能で若手が育たない」、挙句「あんなんでプロなんだったら俺の方が上手い」などとほざく始末だ。
 自称「俺は甲子園にも行った高校球児」とのことだが、それがウソだということはとっくにバレている。そういうイタイイタイなのであったな野球バカが、岩下くんである。
 ゆみみはどうやら、この岩下くんが好きらしい。イタイイタイ同士でお似合いであるが、何故にわたしを間に挟むのか。わたしはアレか、緩衝剤か何かなのか。互いのイタイイタイなのである棘が刺さらないようにするための。
「お願い、岩下くんに聞いてみて! ゆみみから直接じゃ……きゃっ」
 何が「きゃっ」だ。こっちは「ぐへー」と言いたいのに。
 そう思いつつも、付き合いのいいわたしはちゃんと調べてやった。岩下と直接話すのは正直面倒くさいので、周りのヤツに聞いた。もっとも、岩下にはまともに友達がいないのでそれも苦労したが。
「わかったよ、岩下くんの好み」
「本当?」
 ここで「ありがとう」の一言もないのが、ゆみみという女である。
「『雑草魂』だって」
 ゆみみはきょとんとした。
「え、何それ?」
「『雑草魂』。ちょっと前の野球選手のモットーっていうか人生哲学? みたいなやつ」
 ちょっと前、といったがあの選手はまだ引退してなかったかもしれない、と思い直したが、野球の「や」の字もわからないゆみみに説明してもしょうがないだろう。
「ゆみみよくわかんないけど、そっか、雑草か……」
 数日後、ゆみみと岩下くんがデートしたという話を聞いた。
 それから後、岩下くんはしばらく大学に来なかった。入院していたらしい。
 原因はまさか、と思ってゆみみに問いただすと、彼女は「そうだよ」と不思議そうにうなずいた。
「雑草が好きみたいだからね、ゆみみ雑草でスープを作ってご馳走したんだ」
 お腹イタイイイタイになったんだろうな。
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:ざ冷凍わ お題:彼女と雑草 制限時間:15分 読者:109 人 文字数:1049字
僕の彼女は草むしりが好きらしい。前に一度どうして草むしりなんかが好きなのか聞いたことがある。「世界の真理に近づいた気がするのよ」と彼女はその時答えた。「よくわ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:彼女と雑草 必須要素:イケメン 制限時間:15分 読者:20 人 文字数:863字
「あなたはいつも嘘をつくのね」 恋人からそう言われた竹地シンジは押し黙った。 彼らはちょうど京都を旅行中で、散歩がてらに風雅な土産物屋を物色しているところで、シ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
最強で最弱 ※未完
作者:匿名さん お題:最弱の人体 制限時間:15分 読者:2 人 文字数:469字
Aの腕は無残にも、ほろほろと崩れ去った。上質なクッキーが割れるように、繊細な粉があたりに舞った。……なんともろいことだろう。Aは冷え切った思考を自らの体に向けた 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:yaichiyo お題:君とマンション 制限時間:15分 読者:7 人 文字数:755字
(#58) 夢を見た。 清廉な池の中から白一色の衣服に身を包んだ女性が現れる。けれど、不思議なことに彼女は全く濡れていない。それどころか水面から数センチ上空に浮 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:明日香 お題:寒いピアニスト 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:773字
もう限界、これは本当にやばい、いやいやもう無理でしょ、というところまで来て、私は指を止めた。鍵盤の音が止み、外で暴れる吹雪の音が、柔らかい地鳴りのように聞こえ 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:こぶた お題:冷静と情熱の間にあるのは能力者 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:437字
「この婚活アプリで知り合いました!」「本当に相性のいい相手と出会えます!」そんな謳い文句を掲げる最近人気の婚活アプリがある。このアプリの使用者には、恋情に身を焦 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:ワイルドな終身刑 制限時間:15分 読者:1 人 文字数:587字
「船長、北に怪しい船があります。」若い船員が私を呼ぶ。私は船員から双眼鏡を受け取り、示された方角を確認した。「旋回する。あの船に近づいてはいけない。」私は直ちに 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
※未完
作者:SADAO お題:魅惑の悲劇 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:160字
喜劇があるということは、悲劇もあるということ。 両腕を高々に上げ喜ぶ人がいる対に膝から崩れ落ち泣いて悲しむ人がいる。 あの頃の僕は『自分』のことだけしか考えて 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:夜の夜 制限時間:15分 読者:2 人 文字数:480字
空が茜色に染まっていた。もうすぐ、日が落ちる。 僕は、冷え込みが激しくなってきた季節の空を恨めしく見上げて、マフラーに顔をうずめる。それでも露出した顔が、針に 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:びお~ら お題:かたい四肢切断 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:431字
「龍撃砲撃ちます!」狩人渾身の一撃を喰らった。体が動かない。支えを失い大地に倒れ伏した。「おつかれ〜」「乙乙」「O2、もう一丁」狩人達は口々に挨拶を交わしながら 〈続きを読む〉

雨宮ヤスミの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:愛と欲望の列車 制限時間:15分 読者:26 人 文字数:1128字
アイリちゃんのことが僕は大好きで、だから肉体関係を持ちたいと常々思っていた。 そう言うと「邪な欲望だ」と友達に責められた。女の子のことを性欲処理の道具としか思 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:犯人は豪雪 制限時間:15分 読者:23 人 文字数:1137字
「こんなのよくあるシチュエーションだよ」 どうしてミユキがこんなに落ち着いているのかわからない。わたしは顔をしかめた。 わたしとミユキは大学の同級生で、冬休みを 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:恋の善意 制限時間:15分 読者:15 人 文字数:1202字
先輩のことが好きだ。 ボランティア部で一人でも活動する先輩が好きだ。 僕が入部したいと話したら、笑顔で歓迎してくれた先輩が好きだ。 一緒に校内のゴミを拾ってい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:どす黒い経歴 必須要素:繊細な心理描写 制限時間:1時間 読者:21 人 文字数:3322字 評価:1人
地獄トンネルは、僕らの街にある唯一にして最恐の心霊スポットだ。 山奥にあるレンガを積んだような外観の、いかにもそれっぽいトンネルで、正式名称は別にあるらしいが 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:簡単な水 制限時間:15分 読者:19 人 文字数:1140字
「会いに行けるアイドル」の登場により、アイドルというものは近しい存在になった。 握手会や手渡し会といった「直接会えること」がウリになるとわかると、多くの芸能事 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:トカゲのブランド品 制限時間:15分 読者:20 人 文字数:1070字
「人間至上主義の街」と言われるだけあって、アイソスには亜人の冒険者は少ない。 人型のエルフやドワーフはともかく、獣人種は本当に数えるほどしかいない。 そんな数 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:暗黒の魔法使い 制限時間:15分 読者:34 人 文字数:1419字
「『闇の魔法使い』という童話を書いたのだけれど、聞いてくれるかしら?」「もうタイトルからして嫌な予感しかしないけれど、一応聞くわ」 大鷺高校文芸部の真倉エミリは 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:きちんとしたぬるぬる 制限時間:15分 読者:24 人 文字数:1033字
「え、雑草を料理したい?」 うん、梅平ゆみみはうなずいた。「ゆみみの好きなね、岩下くんが、雑草が好きなんだって!」 わたしは一瞬悩んだ。 岩下という男については 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:彼女と雑草 制限時間:15分 読者:39 人 文字数:1332字
「ねぇ、岩下くんって何が好きなのかな?」 ゆみみの問いにわたしは「え? わたしに聞いてんの?」とつい聞き返してしまった。「そうだよ。ねぇ、岩下くんって何が好きな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:100の踊り 制限時間:15分 読者:27 人 文字数:1215字
「いや、いらないだろそんなヤツ!」 戦士タルトスは声を荒げる。 ここは迷宮の街ファーフィ。タルトスはこの街のダンジョンを攻略し、名を上げようとする冒険者の一人だ 〈続きを読む〉