お題:簡単なおっさん 制限時間:15分 読者:55 人 文字数:1181字

ハイグレード
「しらばっくれんじゃねぇぞ、おっさん!」
 朝のホームに女子高生の怒声がこだまする。
「テメェ、完全にあたしの尻触ってたじゃねぇか!」
 髪を茶色く染めたヤンキー風の少女が、父親ぐらいの年齢の男性の胸ぐらをつかんでいた。
 男性はメガネをかけた小太りの男性で、「や、やめたまえ」と気弱そうに大汗をかいている。
「うっせぇ、死ね!」
 少女は拳を振りかぶり、男性の顔を殴った。遠巻きに見ていた野次馬たちからもどよめきが起きる。
「ふざけんじゃねぇぞ、おっさん。このまま殺してやろうか!」
「止めなさい」
 私は少女と男の間に割って入った。
「何だテメェ? そこのおっさんが悪いんだぞ! あたしの尻触ったんだよ!」
 恥じらいがないのか、大きな声で尻を触られたことを宣言する少女に、私は深々とため息を吐いた。
「確かに痴漢は卑劣な犯罪だ。だがね、このおじさんにも家族がいて、君のような娘もいるかもしれない。殺すというのはあまりに穏やかではないよ。殺したくなるのもわかるが、人間そんなに簡単なものではない。ここは警察に引き渡し、刑務所にぶち込むのが法治国家における事態の収拾方法というものだろう」
「ワケわかんねーこと言ってんじゃねーぞ!」
 このヤンキー風少女にしてみると、文字数オーバーだったのかもしれない。少女は更にいらだった様子でそう吠えると、私を押しのけて尻餅をついた格好のまま震えている男性に蹴りを入れた。
 ガシャッというおよそ人体から発するとは思えない音がして何事かと見ると、男性の体の一部、スーツの胸元が「割れて」いた。文字通り、瀬戸物の人形が割れたような割れ方であった。
 どちらかと言うと、プラスチックであったが。
「はん! 見たかよ!」
 少女は勝ち誇ったように言った。
「何が人間簡単じゃない、だ。このおっさんは簡単なおっさんじゃねぇか! こうすりゃマジで簡単に……ほら、ほらぁ!」
 少女は男の膝を、腹を、腕を、頭を踏みつける。グシャリガシャリと音がして、確かに簡単に体が割れていく。中身は空洞で、まるっきり昔のプラモデルみたいだった。
 そうか、この男性もか。ようやく私は得心する。
 モナカ構造の痴漢モブだ。
 痴漢モブは、男性からの女性の性的搾取が今も行われていることを示すために、急進的なフェミニスト団体が作った1/1スケールの動くプラモデルだ。満員電車に乗り込ませ、女性の尻や胸を手当たり次第に触ってくる。量産を容易にするために、その多くはモナカ構造のハリボテだ。
「はん、完全に、こんなヤツ、破壊して……!」
「調子に乗らないことだ」
 私は少女腕を取ると、右上の方向にひねってもいだ。少女の腕は肩口でボールジョイントで接続されている。もちろん、引き出し式だ。
 この少女は、痴漢撃退プラモデルで、ちょっといい構造をしているのだ
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:スタンダードタンポポ64 お題:腐った排泄 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:704字
山本『暗い部屋が怖い。狭い場所が怖い。高いところが怖い。締め切った場所が怖い。自分が怖い』--- この夜目が覚めるのは何度目だろう。次目覚めるのは朝、家族の起こ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:スタンダードタンポポ64 お題:無意識の帰り道 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:588字
気づいた。直後、少しだけ何とも言えない気持ちになる。恥ずかしいというかなんというか。胸のあたりや耳の裏がぞわぞわぞくぞくむずむず。そんな感覚。そんな感覚を身に 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:トカゲのあそこ 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:780字
拝啓、橘様。たまたま立ち寄った駅前の本屋で『トカゲのあそこ』という珍妙な本を見つけてから、はや30分が経ちました。いかがお過ごしですか。私は相も変わらず、人ごみ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:DDT お題:綺麗な殺し屋 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:459字
「依頼が入ったら爪を塗ることから始めます」そう語るまりあさん(仮)の表情は柔らかい。「だって万全を尽くしたいので」まりあさんがこの仕事を始めたのは、中学二年生の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:あにぃぃ お題:メジャーな彼氏 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:764字
何となく、私は一人でいいと思う。いや、一人でも良かったのかもしれないと思っている。そう思っているだけで、実際は愛する彼がいて、恐らく何事もなければこのままいずれ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:俺は病気 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:448字
朝、目がさめると、壁が目の前にあった。 いや、壁ではない。少し視線を動かしてみると電気が付いている。寝ぼけた頭でもわかる。これは天井だ。 はっきりと目が覚めて 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
不器用な嘘 ※未完
作者:谷矢チカフミ お題:賢い嘘 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:446字
不審そうな視線に笑顔を返せば、結局は誰も口出しをしない。忠義だの恩だのと言う者達は、主のお気に入りである参謀の私に口出しは出来ない。笑いながらお決まりの言葉を 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:最弱のサラリーマン 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:1071字
静まり返った街中を、レールを軋ませながら電車が走り抜ける。酒で酔って寝ている人、大声で喋る化粧の濃い女性、疲れ切った顔で携帯を見るサラリーマンの群れ。私もその中 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
トラブル回避 ※未完
作者:にい お題:弱いゴリラ 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:886字
真正面から歩いてくる男と目が合ったとき、喧嘩をふっかけられると直感した。血に飢えているやつは目でわかる。そして大体、野獣のような顔つきをしている。幅の狭い道だ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:弱いゴリラ 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:396字
威嚇された一頭のゴリラがすくみ上って、こちらに向かってきた。「今回も、失敗ですね」「うーん、ちゃんと自分を主張できれば、他のゴリラに引けは取らないはずなんだけ 〈続きを読む〉

雨宮ヤスミの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:残念な内側 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:1196字
弟はイイ歳してアニメの美少女キャラに夢中で、姉としては気持ち悪いことこの上なかった。 夫の友人に同じようなオタク趣味の人がいるが、そちらは爽やかだし、弟のよう 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:俺と帝王 制限時間:15分 読者:14 人 文字数:1144字
そいつはディフォルメされたコウモリのような見た目をしていた。身長は50センチ程か、キャラクターグッズとして発売されていたら、女子中学生が目を輝かせて「かわいい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:賢いガールズ 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:1043字
「これ見てくれよ……」 サワダはそう言って自分の右手の甲を指し示す。毛だらけの手の甲には、ぽつぽつと何か針で突かれたような傷跡がいくつもあった。「どうしたんだ、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:未来の信仰 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:1082字
「未来の世界ではすべての宗教は消滅しているだろう」 とある学者が発表したこの言説は、消滅を言い渡された宗教界から激しい反発を受けることになる。「そういうところが 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:苦いぬるぬる 制限時間:15分 読者:28 人 文字数:1256字
男の子の出す白いアレを、わたしは飲んでみたいと思っていた。 その話をすると、訳知り顔でユリはこう言った。「あんなの美味しいもんじゃないわよ。苦くてさ、蕁麻疹も 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:宿命の家事 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:1165字
「わたし、家事がトクイなんですよねー」 彼女はにこやかにそう言った。 なるほど、それは褒められるべき能力なのだろう。しかし、それをアピールする場面は今ではない。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:メジャーな本 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:1377字
「この本はとてもメジャーな本なんですよ」 そう言って後輩が持ってきた本は、聞いたことのないタイトルだった。「『星屑の物語』……。作者は、……誰?」「知らないんで 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:きちんとした星 制限時間:15分 読者:21 人 文字数:1143字
「先生、きちんとした星が描きたいんだけど……」 自由帳を持ってそんなことを言ってきたのは、この1年2組の中でも物静かな外村くんだった。この子が自分から話しかけて 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:燃える宇宙 制限時間:15分 読者:28 人 文字数:1213字
アリサは三好くんのことが好きらしい。 よりにもよって三好くんかよ、と思わなくもないわたしは、とりあえず理由を聞いてみた。「顔。あと、背が高い。運動神経もいいし 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:俺の駄作 制限時間:15分 読者:38 人 文字数:1192字
「駄作ですが、どうぞ読んでください」 とんでもない文面で来たな、と俺はSNSの画面を見て唸った。 この短文投稿SNSでは、ハッシュタグをつけて素人のWEB小説を 〈続きを読む〉