お題:オレだよオレ、怒り 制限時間:15分 読者:30 人 文字数:1190字

義憤
「もしもし、オレなんだが……」
 詐欺か、と思うような電話だったが、わたしは何故かそのまま電話を切れなかった。
 その日は何だか寂しい夜だった。校舎裏の情景が頭にこびりついて離れなかったからかもしれない。
「ねえ、誰なの?」
「オレだよ。オレの名前を君は忘れてしまっているけれど」
「忘れてしまっている?」
「そうだよ。昔はきっと知っていたはずの名前だよ」
「名乗ってくれれば思い出せるかもしれないのに」
 それはできない、と「オレ」は言った。
「思い出してくれないと、もう意味がなくなってしまう。他の多くの人と同じように、君はオレを忘れてしまったまま大人になる」
「そうして大人になったらどうなるの?」
「普段はヘラヘラしているくせに、SNSでゲームの運営や政治家や有名人にクソリプを飛ばすような大人になってしまう」
 具体的かつとても俗っぽいことを「オレ」は言った。
「何も知らないのに、『仕事しろ』とか『お前なんて最低だ』とか、もっとひどいことも、向こうに人間がいることも忘れて振り回してしまうんだ」
 地獄だな、とわたしは思った。
 そして、その地獄はSNSの上だけじゃない、正に今日の校舎裏で繰り広げられていたのだ。
 暗い。鈍い。そのくせわたし達に逆らった。気持ち悪い。何様のつもり。どういう考え。お前なんていらない。いらないんだ。
 アカウントや電子空間というクッションもなく、ただただ目についてしまったという理由で、人間性を排除されなくてはならない。
「そういうことに対して、君はどう思う?」
「……おかしいよ」
「じゃあ、もうすぐオレの名前も思い出せるだろう」
 電話は来た時と同じように唐突に切れた。発信元は、わたしの番号からだった。

 今日もまた、校舎裏で地獄が始まる。
 壁際に追い詰められ、なじられる。小突き回されながら、財布を取り出させ、中身を全部奪い去る。
「シケてんねえ。これで稼いだら?」
 スマホを取り上げ、出会い系に登録させる。写真を送れば、血に飢えたピラニアのような男どもがすぐに食いついてくるだろう。
「……なあ、もう止めね?」
 わたしの一言に、壁際にいたあいつも、それを取り巻いていたトモダチたちも、一斉にこちらを向いた。全員が意外そうな目でこちらを見ていた。
「止めね、って……こいつ許してやんの?」
「許すも何も、何もしてねーじゃん、こいつ」
「でも昨日、あんたもやってたじゃん。今更いい子ちゃん気どんの? 空気読めてなくない?」
「元は言えばさ」
 わたしは「いい子ちゃん」などと言い出したサオリをにらんだ。
「あんたが授業中にスマホいじってんのがよくないんだろ? だから、没収もされるし、恥もかかされる。サオリ、あんたのけじめのなさだろうが」
 サオリは怯んだようだった。
 そこでわたしは、あの「オレ」のなをおもいだしたn
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