お題:トカゲの夕日 必須要素:Twitter 制限時間:30分 読者:96 人 文字数:975字

だってすぐ夜になるから
 どういうわけだか、姉は僕の部屋でばかりゲームをする。僕の部屋のブラウン管にゲーム機を繋いで、しんどそうに目を細めてゲームをする。居間の大きなテレビで遊んでくれれば僕も姉もハッピーなのに、ハッピーなはずなのに。

「ああ、くそ。誰よ今の」

 姉はオンライン上のどこかの誰かに毒づきながら、親の仇のように銃を乱射している。これでは嫁のもらい手がいなくても仕方がないと思う。それでも一応、着古したジャージはかすかにいい匂いを放っていて、僕はそれに無性に腹が立った。

「ねえ、せめてもうちょっと静かにしてくんない?」
「あ? うるさいわね、命のやりとりしてるのに、静かになんてしてられますか」
「命のやりとりをしてる人は、合間に携帯をいじったりしないと思う」
「やかましい。ベテランの嗜みよ」

 姉は理屈の通ったことを言わない。そういうところは、少し好きだ。

「あんたもツイッターとかやったらいいのに」
「意味ないよ。つぶやくことなんてないもの」
「つぶやかなくてもいいのよ。暇つぶしになるよ」
「いやだ。やかましいのは嫌い」

 本当はわかってる。いや、多分そうだろうっていうだけだけれど、姉がこの部屋でゲームをするのは、きっと僕が心配をかけているせいなんだ。SNSをすすめてくるのはきっと、少しでも僕と世界を繋げようとしているんだ。

「怖いんでしょ」
「え?」
「あんたは怖いんだ。世界がちゃんと廻ってるのを見るのが怖いんだ」

 姉はコントローラを置いて、僕の大事な毛布を引っぺがした。

「あんた抜きでも世界がちゃんと廻ってるのを見るのが怖いんだ」
「意味わかんない」
「早く出て来なさいよ。あんたも私も、ただでさえカゲみたいにうすのろなんだから。太陽の下に出てこないと、餌も取れずに死んじまうよ」

 ブラウン管の中で、棒立ちの姉が何度も蜂の巣にされて死んでいく。

「ねえ、明日さ、公園まで行ってみようよ。憶えてるでしょ、昔遊んだ公園。ここから5分もかかんない」
「無理だよ」
「無理じゃない」
「無理だよ」

 だって、こんな風に、ちょっとは外に出てみようかなって思う頃には、夜になってしまっているから。太陽はすぐに沈んでしまうから。

 姉はブラウン管を蹴飛ばして部屋を出て行った。そういう粗雑なところも、僕は少しだけ好きだ。

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