お題:トカゲの夕日 必須要素:Twitter 制限時間:30分 読者:33 人 文字数:1596字
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記念日の帰り道
 ある日の夕暮れ。学校が終わり帰り道の中で少年は、塀の上に佇むようにしていたトカゲを見つけた。
「トカゲなんて珍しい」
 普段は何気ない景色などは通り過ぎてしまうのだが、今日はどうしてかその小さな生物に目を奪われる。その日は特別良いことがあったからだろうか。
「なあ、ちょっと話してもいいかな」
 少年は周りに目を配って人が誰も居ないことを確認したのちに、その小さな生物に話しかけた。誰かに見られてしまっては恥ずかしいに違いなかった。
 夕日のオレンジ色の明かりに照らされたトカゲはうんともすんとも言わずにただ茫然と佇んでいる。まるでこちらの声に耳を傾けている様子にも思えた。
「今日、好きな女子に告白したんだよ」少年はその時のことを思い出して声を高くする。
「俺、好きな子に告白するなんて初めてだからさ、滅茶苦茶に緊張しちゃって。今日の朝、女の子に声をかけて『昼休みに屋上に来てほしい』って頼んだんだよ。そうしたら女の子はいいよって簡単に頷いちゃって。その時から『ああ、これはまずいな』って思ってた。昨日、と言うよりもあの子のことを好きになってからずっと、あれこれ考えて来た告白するための台詞があったんだけど、いざ屋上で二人きりになったら全部吹っ飛んだ。『まずいな』って思ってたことが実際に起こっちゃったんだ」
 トカゲは動かない。動かないその横顔は「それがどうした」と言ったような興味のない表情にも見えたし「早く続きを聞かせてくれよ」と言う少年の話を楽しみにしている表情にも見えた。
 少年は後者に違いないなと根拠もなく思い込んで話を続けた。
「頭の中が真っ白になった時って、本当に自分の体が自分の物じゃないような感覚になるんだよな。まるでいう事を聞かないわけ。何か喋れよって思っても、息ばっかりが上がっちゃって声が出なかった。女の子はきょとんと目を丸くして不思議そうにこっちを見て来て、それが次第に不安そうな表情になるわけ。そうこうしている内に『もうダメだ』って頭の中が弾けた瞬間だったかな。『好きです』って声が聞こえて来たんだよ。一瞬誰の声かがわからなかった。でも、目の前の女の子の顔が赤くなって、ちょっと俯いて、そうして『私も』って言ったからようやくわかったんだよ。それは俺の声だったんだって」
 少年は自分の声が大きくなり口調も荒く早くなって、ようやく自分が興奮していることに気付いた。そんな自分に対して一つ笑いが零れて、少しだけ落ち着くように取り繕った。トカゲに対して俺は何を真剣に話してるんだ、と。
 しかし、そこで急に話を止めるのもどこかトカゲに悪い気を抱いてしまったから、話を終わらせるために話を続ける。
「本当、今思い返すと笑っちゃうな。あれこれ台詞を考えて来たくせに、やっと出て来た言葉が『好きです』だなんてさ。いや、まあ単刀直入が良いってこともあるんだなとは身をもって知ったけど。変な言葉にするよりかはずっといい」
 話のキリも良くなっただろう。と他に人間も居ないから自分一人で納得してはもう一度周囲に誰もいないことを確認した。熱くなってしまって周りに目を向けられなかったから、少しだけ心配だった。
「話聞いてくれてありがとうな」
 少年はおもむろにトカゲの写真を撮りたくなった。その小さな生物を記念日に出会った一つの記念として残したくなったのかもしれない。
 携帯電話を取り出して、まだ一度も動いていないトカゲの写真を撮る。音が立った時に逃げてしまうのではと思ったけれども、そんなことも無かった。
 少年は画像を確認する。記念と言うのは自分一人でわかればいいとは思っていたが、誰かに共有したくなった。その相手も思い浮かばなかったから、Twitterに載せればいいかと考える。
 記念。という単語を添えて、夕日に照らされた彼の悠々自適な表情をネットワークに発信した。
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