お題:騙されたうどん 制限時間:1時間 読者:21 人 文字数:1105字

お題が悪いわ絶対
 ドラマ「結婚できない男」で、スパゲティとパスタの違いを語るシーンがあって、それで阿部寛が言うには、決め手は麺の太さらしかった。いい笑顔で延々と語る阿部寛を引き気味に見る女優。私なら、うんうんと頷きながら聞くんだけどな。阿部寛の顔面の価値、絶対パスタやらスパゲティよりは上だ。
 落語「時そば」で、近頃はうどんじゃねーのってくらい太ぇそばが、って語るシーンもある。なるほどうどんのように太いそばというのはどうも美味しくなさそうである。麺において最も重要な項目。それは「太さ」なのだ。
 ぐじゅぐじゅと膿んでしまってろくに生産性のない蘊蓄を披露して、私がなにを言いたいのかというと、美味しいうどんを食いましょうというからやってきたのに、ここは、ここはチェーン店なんでねーの?
「個人営業至上主義なんて古いっすよ」と畑中は言った。「センパイはすぐ曲がったことをしたがる」
 慣れた手つきでちくわの天ぷらをよそう畑中は、顔をひん曲げて続けた。
「よしんばそこでチェーン店より美味しいご飯が食べられたとして、そういうところは衛生管理がなってない」
「でも……美味しいうどんを食いに行こうって言うから、てっきり穴場を教えてくれるのかと」
「僕はただのカップラーメンが好きな大学生です、デブが全員グルメなんて考えも古い」
 彼は二年の東京生活でこさえた脂肪をつまんで笑うと、ぶっかけの特盛を注文した。

「製麺と言うのだし、そばやスパゲティやラーメンがあってもおかしくないんじゃないかな」
 ちくわ天を齧りながら言うと、畑中は嘲笑した。「センパイはすぐ屁理屈を言う」畑中ははたして本当に私と一緒にいて楽しいのか、いまいちわからない。
「ね、スパゲティとパスタの違い……」
「太さでしょ、まあ値は覚えてませんけど」
「近頃はそばじゃねぇのってくらい細いうどんが……」
「上方落語だとあるらしいっすよ『時うどん』」
「へええ、そーなんだ」
 うどんを一口すすると、私は、じゃあじゃあと笑顔で問いかける。
「デートなのに彼女をチェーン店に連れてく、数学科二年畑中クンの心境については?」
 畑中は珍しく沈黙した。きすの天ぷらを割ると、ふてぶてしく呟いた。「……デートじゃないっすもん」
「君デートの定義知らないでしょ。『男女が日時を定めて会うこと』だよ」
 畑中は再び沈黙した。「水族館でも行きます? この後」と、少し照れたように、お茶をすすって言った。
 私はちくわ天の最後の一口を口に入れると、ごちそうさまのポーズをしてから、早くしな、と少しキザに呟いた。「うどんも恋も冷めちまうぜ」
 なにぶん、江戸っ子は気が短いんでね。
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