お題:激しいババァ 制限時間:2時間 読者:11 人 文字数:1790字

宇宙の始末 ※未完
 解剖実習のバイトをクビになってしまったぼくは、次の仕事を探していた。

 ネットの情報だけでは足りず、駅前のドラッグストアで求人雑誌をぺらぺらと捲りながら、似たような仕事はないかと探してみる、が、あまり条件の合致するものは見当たらない。クビになった瞬間は、ああ、ついにやってしまったな、でもまあ、しょうがないか、くらいの軽い気持ちでいたのに、いざその立場になってみると、同じような職種の少なさにがっかりするし、前みたいに好条件で雇ってもらえるところなんてそうそうないという事実に愕然としてしまう。

 いろいろと大変な仕事だったが、やりがいのある仕事でぼくは好きだった。
 やることと言えば死体の運搬と、こまごました解剖道具の準備。たしかにそれだけと言えばそれだけなのだが、勝手を知らないと、ときには失敗してしまうこともある。
 ぼくらのところにはじつに様々な死体が送られてきた。消化器系の病気で死んでしまった者から警察の検分から回されてきた轢死体まで、その取り扱う範囲は広い。
 なかでもとくに思い出に残っているのが麻薬中毒者の死体だ。麻薬漬けの体を解剖台へ引きあげるのはなかなかに重労働だった。薬品の影響か体重はいくらか重くなっているし、少しでも焦ろうものなら、死体の皮膚が桃の皮でもむくみたいにこそげ落ちてしまう。ぼくはそれを有機溶剤を大量に摂って死んだティーンエイジャーの死体で一度やらかしたことがある。
 
 なぜクビになったのかといえば、こっそり〝戦利品〟を持ち帰っていたことがバレてしまったからだ。
 ぼくはたまに腎臓や尿管、膀胱の一部を切り取って持ち帰っていた。もちろん、焼いて食べるなんてことはしない。ぼくにカニバリズムの趣味はない。興味があるのはその中身だ。合併症によるものなのかしらないが、消化器系がダメになった死体にはよく結石が詰まっている。そしてその中には、ごくまれに、完璧な対称性を伴った石が見つかることがある。星型の、アステロイドにも似たそれは、ぼくに人体の奇跡を思わせる。数学的に美しい、人体の小宇宙に輝く一つの光点。くだらないかもしれないが、ぼくはこの小さな物体が好きでたまらなかった。

 さて、そんな一大事がバレたのに、なぜ警察の厄介になっていないか。なんとまあ、ぼくの上司にあたる解剖助手もまた、こっそりと戦利品を収集していたのだ。人体の透明標本を作るのが夢で、若く骨密度の高い女性の骨盤は貴重だとぼくに教えてくれた(彼の主な仕事は、解剖実習中の撮影と、解剖記録の整理だった。おそらくは撮影された写真もまた、彼の手によって複製され、コレクションの一部となっているのだろう)。

 彼はぼくに、お互いに秘密にし合おうといい、そうして、わずかばかりの口止め料と引き換えに仕事を辞めさせられてしまった。



 それからいくばくかして、ぼくは特殊清掃のバイトを始めた。求人雑誌でもネットでもなく、最終的には知人からの紹介によってバイトを再開することができた。給料はいいし、上司の安井さんはいい人で、おおむね満足していた。安井さんは、ぼくの初仕事の折、死体とその遺留品への抵抗感のなさに最初は戸惑っていたが、ぼくが医大生であることを告げると、あごの無精ひげを指で撫でつけながら、なにか感心したような表情を浮かべていた。

 初仕事から数日後、ぼくにとっては二回目の仕事がやってきた。仕事場所はぼくの住むマンションからさほど遠くないところにあるアパートの一室。数日前からなにかと話題になっていた。ガス漏れの異臭騒ぎから、孤独老人の死体が見つかったというもので、ここら辺では結構な騒ぎになっていた。
 齢は七十半ば、女性。夫は数か月前に介護老人保健施設で病死。残された彼女はキッチンのコンロからガスホースを引っこ抜いて、そいつをそのまま口にくわえて布団の上で寝っ転がっていたらしい。発見されたときには布団は床の色とほとんど同じ色に変色していて、目撃した住人や巡査含め何人かが嘔吐してしまったというから、その清掃もしなければならないのだろう。なんとなく気が滅入る。仕事に向かうバンへ清掃道具を積みこみながら安井さんにそのことを告げた。

 「もっとほかに気分が落ち込むことがあるだろう」

 「死体のことですか?それなら以前お話ししたように、ぼくは
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