お題:残念な汁 必須要素:ケチャップ 制限時間:1時間 読者:69 人 文字数:1473字

理想と現実のごはん
拝啓 母上様

段々と日が短くなり、夕方は肌寒く感じる今日このごろいかがお過ごしでしょうか。
僕はそろそろ空腹で死にそうです。




雲の厚さが薄くなり、水道の水が温くなってきた。
ついこの間までは、蛇口を捻ると熱湯が出てきていたのだけれど、夏の終わりが手のひらから伝わってくる。

今日はコラムの原稿を担当に送らなきゃ。
薄めに淹れたコーヒーをカップに注ぎ、仕事部屋のデスクに向かう。
ノートパソコンの電源を入れて、起動を待つ間にスマートフォンを取り出してSNSのチェックをする。

今日も青い鳥の広場は色んな話題が飛び交っていた。イギリスの女王が来賓の現国王に対して、前国王夫妻からのプレゼントをさり気なく身につけて握手ををしていただとか。1ヶ月に渡るお祭りが終わったのだとか。

つらつらと眺めては、気になった事柄をメモ代わりにお気に入りに登録していく。
とっくに起動し終わっているノートパソコンの画面に目を向け、お仕事フォルダのショートカットをクリックする。

あー、そういえば書きかけて止めてたんだっけ。

地方郷土料理に見るお味噌文化がどうのこうの、試してみないと想像つかないなって、そんな風に考えながらも、思いつくままにキーを叩いていくつものワードを散らしながら、構成を考え始めた。

―ピンポーン

チャイムが鳴り、ふとモニタの時計を見ると2時間が過ぎていた。

はーい、どちらさまですかと、モニターフォンに出ると、白猫宅配さんだ。
お届け物は九州の実家から届いた野菜と冷凍されている魚とお手紙…。

息子や
たまには野菜も食べなさい、お魚と一緒にお鍋にするといいですよ。

手紙から顔をあげて、途方にくれる。
え、シンクここに引っ越してきてから使ったことすら無いんだけど・・・。
冷蔵庫にはビールとマヨネーズとケチャップしか無いんだけど。

たっぷり10分は悩んだ後、ため息をついてお財布を握りしめた。

近所のスーパーまで車で30分、行って帰ってで1時間。
野菜はあるし、お魚もある。けど鍋がない。鍋が、ない。



うん、スーパーで土鍋が買えるってすごい。便利。
変なところで感心しながら、土鍋の他にも調理器具、調味料なんかを探す。

お鍋かー、○○スープの素って大きな袋のやつあるけど、どれがいいかな。
辛いの苦手なんだよねっと独り言ちながら、豆乳鍋の素っていう袋を手にとった。

おー、豆乳か。白いお鍋ってどうなんだろ、試してみるか。


回想終わり。


はい、今日のお料理はこちらになります。
ドンっ、と真新しいまな板に置かれた尾頭付きのお魚。アコウって言うんですって。グーグル先生ありがとう。

お母様、料理をしたことない僕にこの状態から捌けというんですか。

ええと、まず、内蔵は?とってある?
鱗もとってある?

うん、なんだいけるいける。
さっき買ってきた包丁で・・・あ、うん、無理だこれ。

結局鋏で切るのが初心者におすすめという記事を読んで、鋏に切り替えた。
一口大に切った切り身と適当に刻んだ野菜と鍋に入れ、豆乳スープを注ぎ込んで火にかける。

ちょっとだいぶ身が崩れちゃって見た目は残念な汁物だけど、完成だ。

ここまで5時間かかったけど。
はぁ、お腹空いた。

そうして食べたごはんはとても美味しかった。


仕事に戻って、組み立てた原稿を見返した。
…すごいファンタジーなコラムになってしまっていた。
料理ができないのに料理のコラムを引き受けたことに罪悪感しか残らなかった。

おしまい。
作者にコメント

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