お題:絵描きの血痕 制限時間:30分 読者:33 人 文字数:838字

コーヒーカップに絵を描く店員
 ドリップコーヒーが入ったプラスチック製のカップに落書きと共にLINEのIDらしきモノが書いてある。書いていた店員はそのカフェには相応しくないような憂鬱な雰囲気を纏う、声の小さな女だった。僕は奇妙に思って席からカウンター内を盗み見ると女もこちらを見ており、まるで誰かに指示でもされているかのようにぎこちなく微笑みを向けるのであった。気にしないようにやり過ごそうと文庫を開くも文字を追うだけで内容がまるで入ってこない、ましてやその退屈な文庫で暇を潰すより遥かに有意義なわざとらしい現実が目の前にあるのだ。女は僕を観察しているのだろうか、視線が纏わりつくような嫌な感覚があり、自分の内側に熱が篭って少しづつ耳を熱くしていく。反対に指先は冷たくなって、不可解な怖さが早くなる鼓動を意識させた。
 少しだけ残ったカップのコーヒーを持って店を出ようとすると、女が気を利かせた店員を振る舞い「カップ、捨てて置きましょうか」と微笑む。その見透かしたような悪意のある笑顔を無視して、車へと戻った。恥ずかしさと無意味さで息苦しいのに、そのIDを検索する。すると後ろ姿のアイコンと(蝶子)という名前が表示された。地味な印象に似つかわしくない派手な名前からまた気味の悪さを感じるが、退屈を凌ぐにはもってこいの素材が見つかった高揚感も確かにあった。
 (どういうつもりですか?)と試しに送ることにする。するとすぐに既読が付き、(貴方のせいですから笑)と返事が来る。もっと知りたいのに、踏み込んではいけない人間だと流石に分かっている自分もいる。(からかわないでください、普通にお話がしてみたい。)と返事をして駐車場から車を出す。運悪く店のすぐ前の信号に引っかかり、店の中を注意深く眺めてしまった。すると彼女は違う客を相手にしており、忙しく動き回っていた。

(そろそろ仕事が終わります、会いませんか?)

そんなはずは無い。今、返事をするタイミングなんて、無かったじゃないか。

(貴方、誰ですか)

作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:NAO お題:打算的な青春 制限時間:30分 読者:15 人 文字数:1005字
公園の空気が張りつめているのを感じ取らずにはいられなかった。今日、ある人と出会うために僕はここに居る。平凡な高校生に過ぎないが、見捨てずにはいられなかった。「彼 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:さはらさと@鍵開けた お題:彼のにわか雨 制限時間:30分 読者:13 人 文字数:1713字
水底のナイフが錆びて腐る。かつてナイフは登山用品店の棚にあった。買ったのは息子に厳しいサラリーマンだった。小学校入学の祝いに、と言って六歳の息子と妻を連れて富 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:今日の躍動 制限時間:30分 読者:2 人 文字数:1324字
日本の組織は軍隊ではなくオウムの様なカルトである。その証拠に、大日本帝国は天皇を崇拝していた。今で言えば北朝鮮だ。この体質が今の日本企業に受け継がれている。だ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ラメアー お題:恥ずかしい血 制限時間:30分 読者:10 人 文字数:942字
私の血液の色は緑色だ。 まだ物心がつく以前、私はマハナキタル星人という宇宙人に連れ去られその時彼らに自分の血液を緑色にされてしまったのだ。彼らが何故私の血液を 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:もろはし お題:失敗の失敗 制限時間:30分 読者:16 人 文字数:1400字
今日は私の一生涯を掛けた研究の成果が表れる日だ。幼少期にホーキング博士に憧れて以来、私はブラックホールという存在に夢中になった。それから貪るように物理学の勉強を 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
失敗の失敗 ※未完
作者:㍿たもりん お題:失敗の失敗 制限時間:30分 読者:33 人 文字数:996字
中学1年の数学で負の数を習った。マイナスとマイナスを掛けるとプラスになるというのは、当時は直感的に理解できずなかなか馴染めなかった。自分1人の喫煙室に誰か入って 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:昨日の交わり 制限時間:30分 読者:9 人 文字数:1715字
深夜2時の交差点のそば、電柱にもたれかかりながらぼんやりと見える星を眺める。郊外の住宅地は、すっかり寝静まり、通りかかる車もない。タクシー代にはこころもとない財 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
友達 ※未完
作者:おっすぃー お題:初めての血 制限時間:30分 読者:20 人 文字数:503字
彼は優秀な捜査官であった。名はエヴァンス。外宇宙侵略生命体対策室に所属する者、もしくはそれに関連する部署の者で、彼を知らない者はいないだろう。対策室の決して浅く 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:初めての血 制限時間:30分 読者:10 人 文字数:600字
「おれ、実は青なんだ。」 神妙な面持ちで彼が言うと、みんながどっと笑った。彼を囲んでいる友人の、お前の血はなに色だーっ!という問いかけへの答えであった。血は赤い 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:初めての血 制限時間:30分 読者:7 人 文字数:661字
「とりあえず、小鉄はメスだったと。悪かったな、勝手にオスだと思って小鉄にしてしまった。なんなら、今、変える? 鉄子……」「今の名前で充分だわ」「今の名前がわかり 〈続きを読む〉

書店員の即興 小説


ユーザーアイコン
作者:書店員 お題:絵描きの血痕 制限時間:30分 読者:33 人 文字数:838字
ドリップコーヒーが入ったプラスチック製のカップに落書きと共にLINEのIDらしきモノが書いてある。書いていた店員はそのカフェには相応しくないような憂鬱な雰囲気 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:書店員 お題:気高い育毛 必須要素:変なにおい 制限時間:30分 読者:35 人 文字数:1112字
モテたい、モテたい、それ以外には何もいらない。この焦燥感は僕の薄毛に由来しているはずだ、そうに違いない。僕はカツラを許さない、隠し事が嫌いなのだ。しかしながら 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:書店員 お題:愛の耳 必須要素: 制限時間:30分 読者:32 人 文字数:912字
カーテンの隙間を眺めると街灯の明かりが薄っすらと見える。隙間に人影が映ったら、こちらを覗く目と目が合ったら、など考えると怖くてそっと目を閉じる。 私は眠る前に 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:書店員 お題:バイオセリフ 必須要素:CD 制限時間:15分 読者:25 人 文字数:367字
(君にさよなら 僕にさよなら 春にさよなら 行き交う季節よ 私は狂ってはいないか バイオセリフ とびらを壊せバイオセリフ 早くを飛び出せバイオセリフ はやく風 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:書店員 お題:でかい汁 必須要素:ラジオ 制限時間:30分 読者:50 人 文字数:606字
(狂ったように踊れ。) これが祖母の最後の言葉でした。私は祖母の手を強く握っていましたが、祖母の言葉に従い病室で中居くんのようなロックダンスを泣きながら踊りま 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:書店員 お題:小説の瞳 制限時間:15分 読者:51 人 文字数:375字
マグカップの淵についたコーヒーのシミが、いやらしい人間であることを実感させられる。人を見ながら、本を読みながら、ツイッターの画面をひたすらチッチと下に引っ張り 〈続きを読む〉