お題:昼間の兄弟 制限時間:15分 読者:44 人 文字数:680字

儚くも騒がしい蝉の鳴き声が響く。

刺さるように眩しい西日、額を伝う汗は拭っても拭ってもきりがない。

「なぁ、それ美味しい?」

「美味しいよ」

「イチゴチョコバーなんて甘ったるくないの?」

「チョコミントの方が無理、歯磨き粉みたいだろ」

「またそんなこと言う……なぁ、一口くれ」

「甘ったるいぞ」

「……味見」

眉を下げて、少し弱ったような声でねだってみると、“弟”は思いの外素直に「ん」とアイスを差し出した。
ナッツを混ぜたミルクチョコレートに包まれた、赤と茶色の粒々が混ざったピンク色がとろりと溶け出す。
こぼさないようにがぶりと噛みつくと、思っていたよりもスッキリとした甘さが口のなかに広がった。

「……意外といける」

「そりゃよかった」

「俺のもやろうか」

「いらない」

「……歯磨き粉みたいだから?」

意地悪かなと思いながらそう返すと、拗ねたように目をそらしてイチゴチョコバーにかぶりついた。
分かりやすい反応が可愛らしい。

暴力的なまでの西日が山に隠され、沈み始める。
淡い茜色が美しく、蝉の声が心なしか物寂しく聞こえてきた。

「兄貴」

「ん」

「日が暮れるな」

「……そうだな」

するり、と重ねてくる手を、握り返さずにそっと制する。

「まだだよ。まだ早い」

「……だめか?」

「だめ。……月が顔を出すまでは」

空に星が瞬き。

淡い月明かりに照らされ。

夜の帳が降りきったら。

俺たちは“兄弟”の枠を越える。

「……兄貴。やっぱりあとで、一口ちょうだい」

それはキスをねだる、遠回しの合図。
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