お題:理想的な悪役 制限時間:15分 読者:41 人 文字数:887字
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模倣の筋書き
 辛みのきいた熱と刺激が、俺の頬を伝わっていく。
「嘘でしょ、石割くん……」
 ヒリヒリする頬を手でさすりながら眼をあげると、眼に涙をためた彼女の姿。
「俺も、そう想いたかったよ」
 次いで言葉を放ったのは、俺の頬へと拳をめり込ませた張本人。
「……だってお前ら、まだるっこしいからさ」
 高校から知人になった、二人の幼なじみ。
 あまりにも初心(うぶ)な関係に、ちょっとイタズラ心が起きた。
「金輪際、彼女に近寄るなっ……!」
 苦しそうな顔をする親友の顔は、まだ、俺が悪者じゃないって信じたがっている顔だ。

 ――いいねぇ。それでこそ、悪者になったかいがあるってものだ。

「面白かったよ、お前らの反応。まるで、疑いもしなくてさ」
 嘲笑う俺の声に、親友の拳はより硬くなる。
「大切にしろよ、鈍い者同士でな」
「……っ!」

 ――最後に殴られた後、ちょっと意識が飛んで、屋上で寝転んでいた。

「……殴られる必要はなかったんじゃない」
 少し、空を見上げてぼうっとしていると、皮肉気な声。
 ハンカチを差し出してきたのは、眼鏡をかけた少女。
 学園物語風に言うなれば、いかにも委員長と言った風情。
「とはいえこれくらいしないと、あの鈍い二人は進展しなかったぜ」
 俺の言葉に不満があるのか、少女は何も言わない。
「たばこ」
「いいじゃないか。この世界観に浸っている時だけの特権さ」
「進展しない二人に嫌われ、陰にその応援をする悪役ってのも、捻くれていいんじゃないか?」
「……この脚本を書いた人間は、ちょっと歪んでいるわね」
「――理想的な悪役を演じるってのも、難しいもんだな」
「被験者が必要なのよ。……リアルな体験型ゲームってのも、考えものね」

 そう、ここはゲームの世界。
 全てが現実と見まごうばかりに組み立てられたプログラムは、ただし、本物の人間の反応や感情もサンプリングされる。

「で。お前さんが俺の慰めをしてくれるのは、脚本通り? それとも……」
「……どう想う?」

 ――さて。
 薄く微笑む彼女の役割は、悪役を陥れる、魔女だったりするのかね?
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