お題:昨日食べた恨み 制限時間:30分 読者:27 人 文字数:1148字
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たいじ
コワレている、と評されることはあった。
他覚症状があるのであればそうなのだろう。
自覚症状は何一つとしてないけれど、客観的判断が、数値上の診断が全てを決める現代社会で、私の声はどこに影響を及ぼすこともないだろうから黙っているのが最善だ。



喉元過ぎれば熱さを忘れる、という。
私はナイフで肉を引っ掻く。さりさり、という乾いた音が真白な部屋に響き、銀の刃が落ちると真っ赤な肉面がそこから覗いた。

フォークを突き刺した。そこに力は全くない。
寝起きのように現実感がない光景だ。噛み締めても噛み締めても、肉汁だけが溢れて、充実は一つもない。




この頃眠れない。
眠っているのだろうが、眠れていない。
肉体は眠っても精神が眠らない。この体が休んでいるのは確かだが、私の精神は稼働開始から5日、不眠不休だ。


欠けた部分を羨むのは人間の原始的な反応の一つだ。
そこを疑うことは極論、人間自身への疑念に繋がる。
そんな危険なことこそ糾弾されてしかるべきで、むしろ欠点を埋めようとする私の行動こそ人間らしく、賞賛され肯定され理想とされ手本とされるべきなのではないか?


そしてその欠点は多くの場合先天的なものである。
生まれながらに容姿が醜い。生まれながらに頭が悪い。生まれながらに貧乏だ。生まれながらにつまらない。生まれながらに人と関われない。生まれながらに…………。

その「生まれながら」を、神ですら均すことはできなかった。何も変えられず、「生まれながら」の格差がこの世には溢れかえっている。
ただ、真に罪深いのは神ではない。

救いを待っている人間である。
彼らは気づいていない。気づこうともしていない。
彼らは目の前に現状を変えられる力を持ちながら、わざわざ偶像がそれを行使するのを願い、祈り、待っている。

世の中は終わったと嘆かれる。
次の世代はゴミだと憂われる。

では、その終わった世の中を改革するためには?
その問いには誰一人として答えない。それが「真実」だと知り得ないからだ。間違ったことをすれば、この間違った世界はさらに捻り歪んでしまうから。



だから全能たる神を作り出し、好き勝手する。
現在を変えるのは神であり、無力な我々ヒトは無慈悲な世の中の改革を口を開いて待たねばならない。





馬鹿らしい。
私はゴメンだ。だから、「生まれながら」を持つ奴からは奪ってやればいい。「生まれながら」何も持たない私は、そうする権利がある。ちょうど、天性の権能を振りかざす天才たちと同じように、生まれてきた私にはその祝福が与えられているのだから!






「ハレルヤ」
また何度目かの食事をつつがなく終えた。
達成感も充実感もない私の口内には、肉汁と、才能の味がした。
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