お題:遅いアレ 制限時間:15分 読者:58 人 文字数:1213字

ミキのアレが弟のせいで来ない話
「アレが来ないのよ……」
 ミキがやけに暗い顔をしているから理由を尋ねると、周りをはばかるようにして言った。
「え、アレが!?」
 わたしは息を飲んだ。アレとはつまり、月の使者のことだろう。かぐや姫的な意味ではない。「チーデルウィーク」と呼んでる友人がいたが、女性特有のアレであろう。
 しかし、アレがこないということは、つまりそういうことで……。
「ミキ、心当たりあるの?」
 彼女はかぶりを振った。
 いや、でも、これはあるんだろう。花の女子高生だし、ミキは割と顔もかわいいから、声を掛けられたりしてどうのこうのってことも、考えられなくはない。
「ないよ……。どうして来てくれないんだろう?」
 あんな辛いものを心待ちにするだなんて、わたしには到底理解できない。だけど、不安に思う者なのかもしれない。
「一応、その……産婦人科とか行った方がいいんじゃないかな?」
「……え?」
 ミキはきょとんとした顔になる。
「な、なんで?」
「いやさ、その、検査とか受けてさ、何もなかったら安心すればいいし、もしもそのデキちゃってたら、それも早いうちのほうが取り返しがつくっていうか、そのまあ、実際取り返しはつかないんだけども、その……」
 同年代の男と手を繋いだこともないわたしは、しどろもどろになりながらもそう並べ立てる。
 わたしの力不足か、ミキは目をぱちくりさせるばかりだ。
「ホントさ、その、恥ずかしいことではないはずのことだから! 男の人とか、産婦人科に行く女はやらしい、みたいな見方してくるかもだけど、そんなのへ、偏見だしさ……」
「いや、何で産婦人科に行くの?」
「だから、生理来てないんでしょ?」
「は? 来てるよ。12歳から欠かさず」
 え。
「いや、アレって、そのアレじゃないの?」
「違うよ。アレはムカつくぐらい順調に来てるよ」
 そう言えばミキは重い方だった。一年の頃から一緒だが、時折それで保健室に行っている。思えば、今月の頭もそれで授業を途中で一度抜けていたっけ。
「じゃ、じゃあ、アレって何?」
「何って、グランダイオウムカデだよ」
 何じゃそら、と今度はわたしが激しく瞬きする番だった。
「え、来ないの? うちには毎月来てたんだよ。こんなおっきいムカデで、わたしがベッドで寝てると、上にのっかってくるの」
 ミキの説明では、そのムカデは3メートルぐらいあり、月に一度ミキの部屋に来ては、寝ている彼女の上を這いまわるのだという。
「それがあると気持ち悪いんだけどさ、何か快感で……」
 ていうか女の子にはみんな来てるものだと思ってた。あっけらかんとミキはそう言った。


「姉ちゃん」
 橋上ミキが家に帰ると、弟が近寄ってきた。弟が中学生になってからは避けられていたので、久々の会話である。
「どうしたの?」
「ずっと言おうと思ってたんだけど、姉ちゃんの部屋にいたデカいムカデ、俺殺しちゃったんだ……」
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