お題:君と許し 制限時間:15分 読者:68 人 文字数:528字

『君と許し』
 跪き、頭を垂れる。床に敷き詰められた緋毛氈、高い窓から射し込むわずかな光を反射して、漂う埃が煌めく。
 呼吸の音さえ伽藍に反響しそうな、張り詰めた沈黙が辺りを支配する。
 ロザリオの石を繰って君は小さく呟く。祈りに似た、その実ひたすら許しを乞うだけの文句を絶え間なく綴る。強張った頬、固く閉ざした目、苦し気に眉根を寄せたその横顔はいっそ脅迫的なほどだ。垂れた髪がかすかに震えている。
 君はまだ知らない。君の神さまは死んでしまったことを。背信と風化と倦怠、それらによって神は息の根を止められた。いまやそれは慣用句か冗句のなかにしか存在しない。
 木偶のような、残骸のような神にそれでも君は祈る。
 僕は君に背後から近づく。俯く花の茎のように細い首筋にそっと触れる。一瞬、君の言葉が途絶える。肩が跳ねる。君が振り返るより早く僕の指先はロザリオの留め金を外す。
 小さく音を立てて、糸で繋いだ鉱石と身代わりのシンボルは床に落ちた。
 もう神はいない。君の神はいない。
 泣き出しそうに歪む君の顔は何よりも美しい。前髪を払って、その眼を覗き込んだ。
 神はもういない。でも、僕がいる。
 祈るならば、縋るならば、僕にすればいい。
 永遠に僕が、許してあげよう。
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
※未完
作者:匿名さん お題:かゆくなる消しゴム 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:592字
走り出した。ビチャビチャと海水で服が濡れて重くなっていく。果てもないような地平線でかつて彼女が海岸で笑っていた。今では、ただの海でしかない。ここからずっと行けば 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:最後の博物館 制限時間:15分 読者:2 人 文字数:494字
小さな頃から通っていた、大事な大事な思い出の場所。 最初は両親と一緒に行った。 初めて来た場所、初めて見る物に興奮が冷めなかったのをよく覚えている。 子供の時 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:神の喜劇 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:312字
こと、とチェス盤に駒が置かれた。それを見ていた男がふーと息を吐いた。「また、手に詰まった」「ふふふ、じゃあまた交換条件が発動かい?」 交換条件。それは互いに手 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:小泉 毬藻 お題:記録にないセリフ 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:391字
先生はボイスレコーダーを再生する。確かに流れてくるのは自分の声なのだが、話の内容を全く覚えていない。「本当に覚えてないんですか?」何度も聞かれたが覚えていない。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:にい お題:死にかけの尿 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:1033字
夜、そっと夫の寝室を確認すると、無事に死んでいた。私は部屋には入らないままで、ほっと息をついた。家に帰るといつも生きているふりをする夫だから、ひょっとして生き 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
愛犬の最後 ※未完
作者:匿名さん お題:死にかけの尿 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:592字
大島良彦は四十年勤務した会社を三月に定年退職した。再雇用で六十五歳まで働くこともできたのだが、ひとまず区切りをつけて自由な身になりたいと考えたのだ。やりたいこと 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:日ノ宮理李@バブみ昆布 お題:純粋な高給取り 制限時間:15分 読者:20 人 文字数:882字
位の高い人だからと窓際に移動させられて2日。「……」 社内メール閲覧と、ネットサーフィンをし続けるのもだんだんと飽きてきた。学生自体とやることが変わらない状態 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:奇妙な恋 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:893字
ああ美しい。私は今日もあの方の虜である。彼はそこら辺の男たちとは見た目が段違いで、声だっていい。性格も優しくて、頭もいい。売れっ子アイドルであるから、私だけの彼 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:サイバシ お題:平和と裏切り 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:670字
「裏切ったな! お前は、俺達を裏切ったんだ!」「許せ勇者……言い訳はしない」戦争があった。人と人とではなく。人と魔による、それぞれの種の存亡を懸けた戦争が。古の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:DDT お題:女の蕎麦 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:435字
蕎麦を打て!祖父からの遺言である。祖父、父、そして私と、このひなびた蕎麦屋を続けるか否か。三代目の士気の見せ所であった。が。はっきりいって、それほど蕎麦に興味が 〈続きを読む〉

此瀬 朔真の即興 小説


ユーザーアイコン
作者:此瀬 朔真 お題:限りなく透明に近い犬 制限時間:30分 読者:49 人 文字数:1417字
くん、と鼻を鳴らす音。かちゃかちゃと固いものがアスファルトを叩く音。へっへと息を弾ませる音。ぱったぱったとやわらかいものが揺れる音。 奇妙な音が先ほどからつい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:此瀬 朔真 お題:君と許し 制限時間:15分 読者:68 人 文字数:528字
跪き、頭を垂れる。床に敷き詰められた緋毛氈、高い窓から射し込むわずかな光を反射して、漂う埃が煌めく。 呼吸の音さえ伽藍に反響しそうな、張り詰めた沈黙が辺りを支 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:此瀬 朔真 お題:簡単な別れ 制限時間:15分 読者:67 人 文字数:926字
めんどくさくなってきた。 緑と白の吹き出しが順番に、だらだらと画面に表示され続ける。綴られていることといえば中身があるようなないような、いつまでも同じところを 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:此瀬 朔真 お題:黒い闇 制限時間:30分 読者:79 人 文字数:1456字
深夜、路地裏。街灯もろくにない、立ち並ぶのは寝静まった民家ばかり。わざと危険な場所を選んで歩くのはこれが仕事だからだ。辺りに紛れる黒いパーカーの、前開きのファ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:此瀬 朔真 お題:12月のぷにぷに 制限時間:15分 読者:70 人 文字数:582字
暗い空からほわほわと、舞い落ちる白。ピンクとブラウン、カスタードのトリコロールの手袋がそれをそうっと受け止める。やわらかな毛糸にとまった雪のひとひらを、こちら 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:此瀬 朔真 お題:過去のガールズ 制限時間:15分 読者:84 人 文字数:1124字
あらまあ、いやだわあははは。大口を開けて笑うご婦人方はどうやら買い物帰り。近所のスーパーのビニール袋、はみ出している長ネギは炎天下にしおれ気味。そりゃそうだ、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:此瀬 朔真 お題:団地妻の人々 制限時間:15分 読者:82 人 文字数:967字
陰口告げ口噂話、根も葉もきりもない井戸端会議。分厚い板チョコみたいな、おんなじ形の建物の群れ。暮らしているのは似たり寄ったりの家族。繰り返されるのは変わり映え 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:此瀬 朔真 お題:苦しみの小説練習 制限時間:30分 読者:81 人 文字数:1107字
バックスペースキーを連打する望月の顔は険しい。書いては消し、書いては消し、書かずに消す。実際に残った文字は、費やした時間に比べると驚くほど少ない。「……あのさ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:此瀬 朔真 お題:愛、それは模倣犯 制限時間:15分 読者:95 人 文字数:671字
「ささやかなテロ」から一か月。学園は相変わらず賑やかで、学生たちが胸を張って闊歩する。変わったことと言えば、「魔王」と「帝王」により強行されそうになった学則の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:此瀬 朔真 お題:燃える愉快犯 制限時間:15分 読者:71 人 文字数:723字
化け猫は笑っていた。いつも通りにやにやと、しかしよく見るとその笑みは普段よりも深い。目が爛々と輝き、口の端はきゅうっと吊り上がっている。「さて、ついにこのとき 〈続きを読む〉