お題:どこかの情事 必須要素:骸骨 制限時間:30分 読者:18 人 文字数:1664字

可愛い姪の友達以上恋人未満な脳筋がうざい
 スケルトン・イン・クローゼット

「知るかボケナス、とっとと帰れすっとこどっこいがぁ」
 派手な音がしてゴミ箱が蹴倒される音が響いた。傍らで銀次が顔をあげる。
「先生、ものに当たるのはよしてくださいよ」
「やかましいその口閉じねえとケツの穴溶接して放り出すぞ。いいかあ、確かにうちはヤクザまがいの弁護士事務所ではあるが」
 弁護士事務所の主、笹部一朗はのんきそうな相手を睨みつけた。身長190に届きそうな堅物そうなにーちゃんである。
「ではあるが、高校生のくっだらねえ悩み相談室になった覚えもカウンセラー開業した覚えもねえ。ガキはとっとと帰って寝ろ」
「ただ俺は借りた部屋に幽霊が出たって言っただけじゃないですか。骸骨のやつ」
「幽霊なんざこの世にいねえ。いたとしたら俺はここに存在してねえ」
 自覚だけはあるらしい。銀次はその高校生、笹部の姪の友達以上彼氏未満という面倒くさい関係性の相手を見た。麦島駿矢十七歳、横浜第三高校二年生。特記事項といえば交通事故で入院し一年留年したことくらいだろうか。
「毎晩枕元に出てきてうるさいんですよ。気の所為で済ませたいんですが、笹部先生なら物件の履歴調べられると思って」
「桜木町から徒歩五分で幽霊無し月一万の物件とかあると思ってんのか」
「飲み屋街の真ん中ならあると思います」
「ていうか金よこせ。相談料」
「引き受けてくれるんですね! ありがとうございます」
 駿矢は礼儀正しく頭を下げた。その頭に笹部は思い切り書類をヒットさせた。しかし、剣道部で鍛え上げた高校生は、微動だにしなかった。「ご指導ありがとうございます」
「剣道やるやつはマゾヒストかなんかかよ! ああこれだから俺は脳筋とは付き合いたくねえ」
 笹部はいいながらパソコンを叩いた。「特になにもねえけどなあ。女とか連れ込んでねえか」
「姉ちゃんが三人と母さんが来ます。あと姪っ子」
「……姪御ちゃんかわいい?」
「ええ、すっごいかわいいですよ」
「俺も可愛かったわー。妹によく似ててよ、ああこれは美人になるわと思ったし美人になったのになにが悲しくてこんな脳筋ゴリラに……」
「あ、水樹っていうんですけどうちの姪、写真見ます?」
「人の話を聞けよこの脳筋ゴリラがよ!」
 蹴り飛ばしてやりたかったが、残念なことに笹部では剣道三段インターハイ優勝者に銃なしで勝てる気がしない。ホルスターに手をやったが、確実に手が回る。後ろに。
「あのへんならサンショウウオ出す店あったな。今日はなにが出るかは知らんが。しばらく事務所の掃除でもしてろよ。終わってまだ俺が覚えてたらそっちにいく」
「はい!」
 元気に駿矢は返事をし、澄み切った目で掃除を始めたので濁りしかない笹部はさらに苛立った。

 妹が死んだのは二十三の時で、その時姪はまだ生まれて半年だった。引き取って育てて現在十七歳、その友達、友達としか認めたくないやつのためにわざわざ夏の夜をビールも飲まずに俺はなにをしてるのかと笹部は思った。部屋の階段を上がり、これがまた男子高校生のくせに片付いた部屋に入る。この脳筋ゴリラの品行方正っぷりが大嫌いだ。
 壁を叩いてみたが、特におかしいものもない。
「別におかしなもんもねえと思うけどな。気の所為だろ」
「そうですか?」
「ああ。いいから学生は勉強してろよ」
 そういう声を聞きながら、笹部は踵を返した。

 翌日、駿矢が息せき切って入ってきた。
「俺の部屋で逮捕者が出たってほんとですか!」
「うん」
「どうして!」
「合い引きの現場にされてた。お前、学校サボること絶対にないからな。合鍵作ったやつが勝手に入り込んで使ってたのさ。骸骨は、そいつらが仕掛けていった投影カメラのいたずらだよ。
 どうしてもあの部屋じゃなきゃいけない理由があったらしくてよ、脅かして追い出したんだと」
「へー!すごいですね!」
 笹部は黙っていた。あの部屋が薬物の受け渡しになっていたとか、彼には知らさなくていい。

















作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:ムチルダ お題:どこかの情事 制限時間:30分 読者:16 人 文字数:1346字
うちのテレビが、どこかのラブホテルに仕掛けられた盗撮カメラにつながっている。 まるで夢みたいな話だ。しかし事実である。いつから、誰が、なんのためになんて知る由 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まいリーン(HS&FEH) お題:破天荒な本 必須要素:骸骨 制限時間:30分 読者:52 人 文字数:1629字
僕の祖父はいわゆる探検家であったそうで、父親から祖父の話は耳にタコができるほど聞かされた。祖父は満州事変に駆り出された関東軍の兵士で、戦果を上げ参謀の座を実力で 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ak お題:怪しい想い 必須要素:骸骨 制限時間:30分 読者:49 人 文字数:646字
「あなたの片思いをこの手で燃やしましょう」本の中に挟まれた秘密の手紙のことを私は十数年間忘れたことはなかった。手に取ったそれは、私が博物館に飾られていた時と同じ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:不思議な稲妻 必須要素:骸骨 制限時間:30分 読者:113 人 文字数:1245字
ああ、消えてしまいたい。毎日がそんな風に思えてしまうのに、あの秋の深まった夜の出来事は、私にこの世界も悪くはないと教えてくれたのだと思う。「それじゃあ、文化祭の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:浅倉くらり お題:有名な食堂 必須要素:骸骨 制限時間:30分 読者:203 人 文字数:1180字
強い風が吹き荒れる。天気予報じゃ今日は快晴だとほざいていた気がするが、山の天気は変わりやすいとも言うし、いつも以上にスカートが短かった気象予報士に悪態をつくのを 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:わたしの好きな絵画 必須要素:骸骨 制限時間:30分 読者:222 人 文字数:2381字
「この世でもっとも長生きな職業は何か知ってる? 歯車工よ。それはなぜかって、彼らの仕事には、鼓動を早める必要なんてまったくないからよ」 彼女は今日もわたしの返答 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:私のプロポーズ 必須要素:骸骨 制限時間:30分 読者:165 人 文字数:807字
黒影が私の視界を完全に覆いきったとき、普通に考えて犯罪に巻きこまれてしまったのかと戦慄した。いきなり全身に分厚い布を被せられてしまったため、何も見えない。一旦 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:凛とした天才 必須要素:骸骨 制限時間:30分 読者:224 人 文字数:1586字
世の中のすべての人間は幸福の為に生きていると仮定したとき、ではその幸福とはどのようなものか。単に欲を満たす、というのは果たして幸福だろうか、あるいは、悟りを開い 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:知らぬ間の夜中 必須要素:骸骨 制限時間:30分 読者:348 人 文字数:1050字
気がついたら、夜中だった。「唯久ー、できたー?」「ぜーんぜん。芽依は出来たの?」お手上げ状態の唯久に私は胸を張って答えた。「出来たよ、一応ね。」私が手にとって見 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
難しい火 ※未完
作者:匿名さん お題:難しい火 必須要素:骸骨 制限時間:30分 読者:246 人 文字数:555字
「人って儚いね」 ぼんやりと硝煙を見上げながら、そう妹が言った。 妹の旦那、つまり私にとって義理弟が交通事故にあい息を引き取ってから、長いようであっという間だっ 〈続きを読む〉

さはらさと@鍵開けたの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:さはらさと@鍵開けた お題:彼のにわか雨 制限時間:30分 読者:13 人 文字数:1713字
水底のナイフが錆びて腐る。かつてナイフは登山用品店の棚にあった。買ったのは息子に厳しいサラリーマンだった。小学校入学の祝いに、と言って六歳の息子と妻を連れて富 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:さはらさと@鍵開けた お題:捨てられた娘 制限時間:30分 読者:29 人 文字数:1519字
拾われた時子供は十二歳だった。天の教会の道端に捨てられていたのだ。天の教会は空へ続く虹の麓にある至高の教会だった。世界すべての教会を統べる大いなる教会、それが 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:さはらさと@鍵開けた お題:静かな血液 制限時間:30分 読者:25 人 文字数:1585字
血液沸騰まで後十五秒。ウィリアム・スタークソンはカウントダウンを始めた。体内のナノマシンが反応して、肉体を作り変えるプロセスが始まる。代謝系はミトコンドリアか 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:さはらさと@鍵開けた お題:どこかの情事 必須要素:骸骨 制限時間:30分 読者:18 人 文字数:1664字
スケルトン・イン・クローゼット「知るかボケナス、とっとと帰れすっとこどっこいがぁ」 派手な音がしてゴミ箱が蹴倒される音が響いた。傍らで銀次が顔をあげる。「先生 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:さはらさと@鍵開けた お題:12月の夢 制限時間:15分 読者:32 人 文字数:999字
三年は自由登校になってしまって、西館は静まりかえっている。推薦が決まってしまって暇をもてあまし、けれどクラスメートのたちのように遊ぶことも出来ない。クラスメー 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:さはらさと@鍵開けた お題:平和と弔い 制限時間:15分 読者:45 人 文字数:702字
男は静かに銃を下ろした。薄紫の煙がそこから立ち上っていた。まだ若い、首筋が細い青年が赤い椅子に座ったまま息絶えていた。こめかみに銃痕、流れる血がソファに染み込 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:さはらさと@鍵開けた お題:きちんとした国 制限時間:15分 読者:38 人 文字数:750字
ビー玉の中に城が見える。静村玲子は子供のときに集めたビー玉の箱を久しぶりに開けた。保育園の行事で飾る薄いピンクの紙が敷いてある上に、赤いビー玉だけが置いてある 〈続きを読む〉