お題:小説家の娼婦 必須要素:美しい情景描写 制限時間:1時間 読者:56 人 文字数:2087字 評価:0人

葉先さんと佐々木フローラルさん
「葉先さん、海外に行ったら、ポールダンスとかも見れるのかなあ・・・」
つい先ほどから、口をあんぐりと開けて停止していた佐々木さんが、ロードを終えたのか再び動き出したかと思いきや、唐突に、突然に、なんの脈絡もなく、ポールダンスとか言い出したので、僕は佐々木さんを二度見をせざるを得ない状態になった。

こんなものはもうあれだ、呪詛だ。佐々木さんがポールダンスっていう呪詛を唱えたために、僕はその呪詛により二度見してしまうみたいな、なんかそういうのだよこれは。突然にポールダンスって言われたら二度見だよ。パブロフの犬みたいな事になっちゃうよ僕。ポールダンス&二度見。ポールダンス&二度見ってなっちゃうよ。

「ポ、ポールダンス?」
で、ポールダンスってあれかい?あの棒を中心にして回るやつかい?佐々木さんはポールダンスが見たいのかい?
「イエスポール」
佐々木さんは、僕の事を見てイエスポールと言った。そんでサムズアップした。両手でした。そういうとき笑ってたりしてくれていたら本当に、佐々木さん、愛くるしいよ、佐々木さんって僕の中で心の川柳も出るんだけど、しかしいかんせん、そういうときの彼女は真顔だった。

真顔両手サムズアップ。

そこには一種の圧がある。言葉自体は天元突破グレンラガンみたいな響きがあるかもしれないけども、違う。そんなもんじゃない。そういうロマンとかロマンチックとかそういうのじゃないんだよね。圧がある。両手でサムズアップしているとコクピットにのってレバーを握っているみたいな感じがあるんだけども、でも違うんだ。佐々木さんの場合は特に違う。圧だ。最初見た時遠くにいたはずの後ろ姿が次に見た時には目の前にいたみたいな、そういう圧がある。ホラーだ。

「真面目よ私。マジで言ってるのよ?葉先」
という成分がその瞬間佐々木さんの内部から毛穴とかを介してぶああって出てきて一瞬で周りの空気にくっついて広がってあたり一面がそういう成分を含んだ空気になるみたいな。そういうのが佐々木さんにはある。特殊能力が。そんでその空気はまたいいオイニーだもんで、僕にはすぐにわかるという側面も含まれている。フローラルのにおいがする。これがキュアフローラルだったらどれだけよかったかと思うけども、ああ愛でたい。甘食を買ってあげて、頭を撫でたい。一、二時間頭をなでて過ごしたいって思うんだけども、そういう事にはならない。佐々木フローラルはそういう事にはならない。

そんなことをしたら目を突かれる。
「きゃわわ、きゃわわあ!」
とかおふざけをしたらそらもう鋭利な両手の人差し指が飛んでくる。例え眼鏡のガラス越しにでも目を突いてくる。そのインパクトたるや恐ろしいものがある。ジュラシックパークで車越しにティラノサウルスが鼻息をふーんってやった時くらいの恐怖がある!圧倒的な恐怖。心の中のSEもデーン!ってすごい音量のシンバルとか、大太鼓とかが鳴る。鳴りまくり。

そういうわけで、僕は慎重に対処をしなくてはいけなかった。佐々木さんのお話を一端こちらに預からせてもらって、まずは一度受け取りましたよ。ちゃんと受け取りました。という姿勢を見せなくてはいけなかった。両手でこう、包み込む感じで、ハトヤのCMの魚みたいな感じで。僕は佐々木フローラルのポールダンスを包み込んだ。

心の中で、綺麗な風景とかの事を考えてそのような対応に当たった。Windows10の最初のパスワード入れるときの画面の事や、Bingの検索画面の事や、Gmailの背景に設定できるような美しい情景の描写、そういう事を考えて対応に当たった。

「ポールダンスですか・・・」
「・・・」
今、僕と佐々木さんは対面に向かい合っている。その間にちょうど囲碁盤か、将棋盤が入るくらいの間を開けた状態でいる。佐々木さんは僕の渾身のポールダンスですか・・・を、とてもゆっくりとしたうなずきだけでつぶした。そのうなずきもまたなんか恐怖があった。ゆっくりと、軽く上下するだけの感じ。落ち着き払っている感じ。死をかけて戦う人の落ち着き加減。

「どうして?」
「うん、それはね、葉先さん、私もパンティとかブラの間とかにお金を挟んでみたいからさ」
「はあ・・・」
正直わからなかった。僕はそういうことをしたいと思ったことがない。家にいたい。ゲームとかして、佐々木さんがいれば別にあんまなんか外行きたいとか思わない。たまにネットカフェでワンピースを全巻読みたいとか、とらぶるを全巻読みたいって思う事はあるけども、でも、パンティとかブラとかの間にお金を挟みたいと思ったことはない。海苔と海苔の間に梅干しなんかを挟んでそれをお酒のあてにしたいって思う事はあるけども、お金を挟むという事はまずない。

だもんで、正直対処の仕様がわからなかった。佐々木さんの手はいつの間にかサムズアップから両の手の人差し指が突き出ており、それがさながらミサイルの様に見える。対空ミサイルの様に見える。

もうあまり時間が無い様だった。

その手が飛んできそうだった。
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