お題:官能的な土地 制限時間:30分 読者:152 人 文字数:1241字
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愛しきオレの大地よ
その土地はしどけなくオレの前に横たわっていた。
何がエロいかと言われると説明に困る。が、住宅街に突如現れた、正方形のだだっぴろい空き地を見た途端、俺の眠っていた官能を呼び覚ましたのだ。
湿っぽい土の香り。時折ぽつぽつと生えている雑草は、少女の生えかけた陰毛を想起させる。
オレは人間の女が好きなはずではなかったのか。なんで土地なんかに欲情している?
わからない。でもきっと土地だったらなんでもいいわけではないのだ。
だって、今まで空き地なんかいくらでも見て来た。なのにオレはただ通り過ぎるばかりだった。
でも、コイツは違う。しっとりとしてよく慣らされているこの地面に横たわり、ひんやりとした土の中に我が身を埋めてしまいたい。そしてコイツと一つになり、永遠に繋がっていたい。
コイツが無機物だからとか、土だとかそういうのは関係ない。そうオレはコイツが人間の男でも、女でも、犬でも猫でも植物でも探し出してきっと見つけてみせる——!
それくらいオレはコイツに惹かれてしまったのだ。

気がつくと、もう辺りは夕暮れ色に染まっていた。
「また明日、会いに来るからな」
オレはヤツにそう呼びかけ、その土地を後にした。
それからオレは、ヤツに毎日会いに行った。
ヤツはいろんな顔を見せてくれた。
雨の日は、たっぷりと水分を含み、瑞々しく潤んだ肢体を。
風が強い日は、草をしならせて乱れる、あられもない姿を、
おれはただ見つめているだけで幸せなはずだった。
あの黒々とした土の香りを嗅いでいるだけで良かった。

しかし、幸福な日々は長くは続かなかった。
「●●邸建設予定地」

いつものようにヤツに会いに行ったある日。
無慈悲な看板がオレの前に立ちはだかった。

なんてことだ。この艶やかな土地が、ブルドーザーに蹂躙されてしまうのだ!
かき回され、穿たれ、杭を打ち込まれて、見知らぬ人間の下に組み敷かれてしまうというのか!

「嫌だ……」

激しい嫉妬がオレの中に渦巻いた。
コイツを誰にも渡したくない。オレのものにしたい……!
これまでひた隠しにしていた欲望が、いっきに噴き上がる。

「よし……」
オレは決意をこめ、土地の周りに張り巡らされているロープをくぐった。

「お前と……ひとつになりたい」
オレは豊穣なる大地に口づけし、ずぶずぶと下半身を埋めていく。
柔らかい土襞は、俺のいきり立ったそれを優しく受け止めてくれた。
快美感がオレの背筋を鋭く貫く。
「たまらねえ……!」
オレは夢中になり、いつしかその身を深く深く、ヤツに埋めていった。

——気づけばオレは、地中奥深くまで来ていた。


ゴゴゴゴ……。

地鳴りが響き、オレの上を何かが通り過ぎて行く音がする。
きっと、ブルドーザー野郎がアイツをぐちゃぐちゃにかき回しているのだろう。
でも、もういいのだ。そんなことはどうでもいい。
今オレは、愛するコイツとひとつになれたのだから。

オレは目を閉じ、土の中で胎児のように身を丸めた。
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