お題:同性愛の愉快犯 制限時間:15分 読者:59 人 文字数:708字

お前はいつだって真剣なんだよ
「俺と一緒にいるとお前は多分俺のことを好きになると思うけど、それでもいい?」
最初にあったとき、やつはそんなことをのたまった。
見るからに軽薄そうな男だったしそのとき大分酔っていたようだし、そのときは俺はからかわれているんだろうと思ったけど、驚くことにやつは本気でそんな台詞を言っていた。

その次の日やつから連絡があった。連絡先なんか交換してなかったのに、いつの間にかやつは俺の携帯を覗き見ていたのだ。そんなことをされたとのに、俺は少し笑けてしまった。

「今日よかったら映画でも見に行きませんか?」

中学生男子が好きな女の子に送るような、そんなかわいらしいメッセージに俺はつい返信をしてしまった。そのときはまあいいやと思えてしまったのだ。俺は昨日酒場の薄暗い琥珀色のライトに照らされていたやつの薄茶色い巻き毛を思い出していた。

俺はそれまで女の子としか付き合ったことなかったし、もしやつとこれから別れてたとしても二度と男とは付き合わないだろう。だから俺は自分のことを同性愛者とは思っていない。
そういうことをやつに話すと「じゃあ俺が最初で最後の男ということだね」と、出会ったときと同じような軽薄そうな笑みを浮かべた。

やつが最初に言ったことは本当だったし、あの言葉を俺はもっと真剣に考えるべきだったのかもしれない。軽薄そうに思えるけども、やつはいつだって真面目だし、あのときのやつは俺のことを真剣に口説いていたのだろうから。

だから本当に軽薄なのはきっと俺なんだろう。興味本位のようにやつに近づいていって、そしてそのままやつの言ったままにされている。まるで愉快犯のように、俺はやつの恋人になったのだ。

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