お題:昨日食べた村 制限時間:15分 読者:57 人 文字数:1028字

ある村の異変
 村中の人間が、外に出て不安げに空を見上げている。太陽も月も雲も星もない、真っ暗な空を。
 夜中に大きな地鳴りがしたことは覚えている。地震のような衝撃で、みんなが目を覚ました。
 そうして外に出てみると、この真っ暗な空だ。
 この空、どうにもおかしい。山間にある村なのに、山が一つも見えない。
 その上、一向に夜が明けない。もしかすると、これは夜ですらないのかもしれない。
 一体何があったのか、と人々は論じ合った。
「ダメだ、おかしな壁ができてる」
 村の外に様子を見に行った一団が帰ってきた。
「北の方は?」
 彼らは無言で首を横に振った。どこへ行っても、柔らかいおかしな壁があって、その先に進めなくなっているのだ。
「もしかすると、地震でこの村は孤立してしまったのでは?」
「山も地震で崩れた可能性があるぞ」
「そんな大きな地震じゃ、隣村もふもとの町も、ひとたまりもあるめぇ」
 推測が推測を呼び、人々は口々に話し合う。
 その内に、ぽつりと何かが空か降ってきた。
 雨だ。
 人々は天を仰ぐ。雲があるようには見えない、しかし真っ暗な雲から、ぽつぽつと水滴が落ちてきていた。
 悲鳴が上がる。
 水滴の落ちたところから、白い煙が上がっている。
 水滴を浴びた人の顔が、しゅうしゅうと音を立てて溶けた。
 村人の間に恐慌が広がり、我先にと皆屋根のある場所へと駆けていく。
 だが、屋根も溶ける。走る内に人々も溶ける。更には、地面まで溶けていく。
 あちこちで怒声と泣き声が響き渡るが、それもだんだんと止んでいく。
 水滴は最早雨から豪雨、更にはバケツをひっくり返したような勢いへと変わり、村の建物を、人を、そして土地すらも溶かしていった。


 「村食い」と呼ばれるドラゴンがいる。
 ドラゴンといっても、彼には翼も角もない。恐ろしい牙も、鋭い爪の生えた足すらもない。
 目も鼻もなく、あるのは大きな口だけだった。
 「村食い」はドラゴンだが、見た目はミミズに似ていた。
 ただ、大きい。途轍もなく大きい。
 山を一巻きにして尚余りある巨体をくねらせて、地中を移動する。
 そして、「村食い」の名の通り、小さな村落を一呑みにする。
 地中を素早く移動し、地鳴りと共にバクリとその大きな口で飲み込む。
 消化は遅い。消化液が出るまで、12時間以上かかると言われている。
 そのため、食われた村人たちは、自分がエサとなったことすら気づかずに死んでいくのだ。
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