お題:怪しいテロリスト 制限時間:30分 読者:15 人 文字数:962字
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トライ&エラー
プログラマーという人種はともすれば小学校の教師に似ている。
少なくとも現職でプログラマーに就いている樋本明はそう考えている。

小学生は言うなれば白色のノートと同じだ。
ノートという最低限の体裁こそ保たれているが、そこには何も書かれていない。
文章作法のあれこれが記されているわけでも、ノートを書く上での目印になるような罫線が引かれているわけでもない。
教師はそのノートに罫線を引き、文章を書く上での作法を制定し、その後の人生というノートを綴る作業に対しての指針を与える。

プログラムもそうだ。
プログラマーはプログラミング言語という枠組みの中において定められた命令を記述し、例外を制定し、実行しなければならないプロセスをCPUに与える。

CPUには気遣いというものがない。
受け渡された命令以上のことをせず、不足することもない。
どころか、少しでも枠組みを外れた記述をすれば、癇癪を起こして実行しなければならない命令を投げ捨てる。
プログラマーが記述した命令のそのすべてが結果としてプログラマーに返ってくる、それがプログラマーだ。

「またエラーか・・・」

樋本明は頭を抱える。
仕事ではない、あくまでも趣味の範囲ではあるものの、今自分が運営しているサービスのログインに関する機能の部分がエラーを起こしている。
ディスプレイにはログインが正常に動作しない旨を示すエラーメッセージとそれが起こった箇所が過不足なく記されている。

「単体テストは問題なく通る。原因があるとすれば結合部だが・・・」

知識と経験を照らし合わせて原因を探る。
表示されているエラーメッセージは原因の表皮しか示していないのを明は経験から理解していた。
考え得るケースを試していき、原因を一つ一つ潰していく。その繰り返し。

「はぁ・・・」

コードを打つ手を止めて、目頭を押さえる。
自分の行動がそのまま自分に返ってくる。
その合理性が好ましくて明はプログラマーをやっているが、それでもこういった先の見えない、正解のない試行錯誤には気が滅入る。

「けど、やんねえとな・・・」

暫しの間をおいて明の部屋には再びコードをタイプする音が響き始める。
白色のノートが正しく記述されるように、黙々と線を引く。
やはり、プログラマーは教師に似ている。
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