お題:死にかけの理由 制限時間:30分 読者:54 人 文字数:830字
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カワセミになる ※未完
 ふと見上げると、天窓から大きな鳥が空を飛んでいるのが見えた。鴉のように真っ黒でもないし鷲のような特徴的な両翼を持っているわけでもない。僕はその鳥の名前を知らなかった。猛禽類にはあまり詳しくないのだ。
なかなか良い日ではないだろうか。僕は寝転んだままちらと枕元のデジタル時計を見た。10:23。壁に掛かったカレンダーは5月で、今日の日付である13日以前の日付はすべて大きく×印が書かれていて、今日以降の日付はすべて切り取られている。
 僕はこの日、この世を去る予定だった。
 ここで僕は自分が抱いていた自殺願望の原因についてとやかく論じるつもりはない。すべては僕自身と僕を取り巻く環境が合わなかっただけだ。君も嫌いな人がいたらなるべく関わらないようにするだろう?僕はこの世となんとなく合わなくて、だから死ぬという選択をしたんだ。つまり僕の中の「死」は希望的なものだった。家族を含めたすべての人間は僕の自殺を止めようとはしなかったし、僕もかまってもらいたい訳でもなかったから、遺品整理はすんなり終わった。元々あまり物を持つ人間ではないから、捨てた物といえばカラー版の鳥図鑑2冊と文庫本13冊と何枚かのシャツくらいだ。鳥図鑑はあと2冊あったが、1冊は―僕が一番最初に実母から買い与えられたものだ―死ぬ数日前に実母に返しに行った。さすがの僕でも実母に「遺品整理してて」とは伝えられず、黙ったまま渡した。実母は困ったような顔をしたが、理由も聞かず受け取ってくれた。実母は僕を気にかけてくれた数少ない人間だった。もう一冊は僕が自費で買った大きな図鑑で、写真が多く載せられたものだ。僕はそれを4歳の妹にあげた。妹とは血のつながりはないが、家族に近いような関係になれたと思う。彼女は図鑑の表紙をまじまじとみつめ、「ありがとうお兄ちゃん」と言った。利口な子供だと思う。
 遺品整理が終わって、街に出た。僕とは合わなかったけど、不動産情報を見るかぎりなかなか住みやすい街らしい。
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