お題:つらい「えいっ!」 必須要素:コミケ 制限時間:1時間 読者:59 人 文字数:2337字 評価:0人

いらないことした
ジェフリー・ディーヴァーさんのリンカーンライムシリーズの二作目は、コフィンダンサーで、私はそのタイトルを見た時とても興奮した。
「コフィンダンサー?それは何ですか?対象女性を殺した後に、その人の遺体と踊る人ですか?」
って思ってとても興奮した。その意味の分からなさ?そういうものに興奮した。いけない興奮の仕方なんじゃないかとは思ったんだけども、でも抗えなかった。

興奮した。

で、これは実際読んでみると違う。冷静に考えてみたらそんなの意味ないし、遺体と踊るなんてすごく大変だろうし。とにかく違う。違った。だもんで、三作目のエンプティ―チェアのタイトルを見た時も、気を付けようと思った。

「ハンプティダンプティみたいな!?なんか椅子に縛り付けて?何かを見せる的な?エンプティ―チェア?」
っていう様な事を考えるのはやめようと気を付けた。実際三作目を読んだ時は気を付けてよかったと思った。それは一種の治療法だった。エンプティ―チェア。んで、四作目が石の猿で、これまた私個人的には興奮を禁じ得ないタイトルなんだけども、それはまあ、いい。まだ読んでないし。

ただ、エンプティ―チェアを読んでみて、この世の中には様々な治療法というか、そういうのがあるんだなあって思った。

で、私もやってみようと思った。エンプティ―チェア。

空の椅子を部屋の中央に置いて、そこに誰かを思い浮かべてお話をしてみる。

この字ずらだけだと、こっくりさんか、あるいは一人鬼ごっこみたいななんか異様な感じがあるし、人様には絶対に見せられないので、カーテンは閉め切る事にした。見られたら大変なことになる気がした。新興宗教のような感じがある。

で、
「・・・」
やってみて思ったのは誰も思い浮かばないという事であった。誰も思い浮かばない。誰も椅子に座ってくれない。なんか外国のどっかにある、座ってはいけない椅子くらい誰も座ってくれない。

「なら仕方ない」
そこで、想像力とコネクトしてみることにした。もちろん私の想像力など大したことはないんだけども、でも何もないよりはまし。で、想像力には依り代が必要なので、椅子にコミケのカタログを置いて、それを依り代にする事にした。

この時点で、治療法としてのエンプティ―チェアというものからは大きく乖離していたが、私は私で、何かが見たかったし、何もないままに終わってしまうと本当に意味が無かったので、そのことに気が付くことができなかった。

つってもひらがなを書いた紙を用意したわけじゃないし、お米を入れた人形を用意したわけでもないし、別に何も準備してないし、何があるものかとそのような思いであった。

だもんで、次にエンプティ―チェアをしてみてそこに誰かが座ったときにはとても驚いた。
「おおう!」
って言った。しかし椅子には誰かが座った。私は私自身がエンプティ―チェアをするんだから、おそらく私が誰か知り合い、何か言いたい人、思い残しがある人が座るもんだと思っていたのに、その誰かは私の知らない人であった。

私の知らない人が、カーテンを閉め切った私の部屋の私の椅子に座った。お腹が痛いのだろうか、前かがみで、長い髪の毛が垂れていて、顔が見えなくて、でもなんか、

私は部屋のカーテンを開けた。外の光が入ってきて部屋は明るくなった。

振り向いてみると椅子に座っている人もいなくなっていた。
「・・・」
しかし試しにもう一度カーテンを閉めてみると、椅子に座っている人がまた出てきて、おっとこいつはおっと、と感じた。余計なことしたんじゃないか感が強い。すごく強い。

やばいこれはやばい。
余計なことした。
寝た子を起こした感!

そもそも誰か知らないけども、黒髪の長髪のおそらく女性というだけで、もうあれじゃないか。ベタすぎるじゃないか。さだーこか、かやーこか、あるいはじょゆーうれーの感が出まくり。

駄々洩れじゃないか!

で、あれなんだろ、なんかのタイミングであの知らない人が顔上げたりして、そんで髪の毛の間から顔が見えて、それで私はあれなんだろ?もう駄目なんだろ?

もー、駄目なんだろう?死ぬんだろ?

夏ホラー的ななんかそういうのなんだろ?

自暴自棄になる心を何とかしつつ、とにかくカーテンを開けて、一回冷たいコーヒーとかを飲んで、ブレイクした。

そんでそのままカーテンはあけっぱにして、一回そのことを忘れる努力をした。色々な事を忘れる努力をした。

そしたら意外と忘れれたので、ほっとしてたら、夜の訪れと共に再びその人が椅子に現れたので、もおおお!ってなった。

「・・・」
今度もその人はお腹が痛いのか、前かがみになっていた。でもさっきと違って今度は紙切れを指の間に挟んでいた。

その紙切れはおそらくコミケのカタログをちぎったものであった。

それをなんか、雰囲気だけども、こっちにアピールしてきている気がする。

「と、とる?」
私はワニワニパニックとか、ワンワンパニックとか、そういうのを思い浮かべながら、慎重にその紙切れをとった。

いきなりガッて掴まれたらどうしようかと思いながら、慎重に。一生分の慎重を使う気持ちで。

「・・・」
とった紙切れには、住所が書いてあった。

「近所じゃん」
すごく近所じゃん。歩いて五分くらいの所じゃん。

現実逃避したかったので、そこに実際行って、一軒家だったんだけども、とりあえず、観察した。その家はカーテンを閉め切っている。

んで、試しに駅前に行って、電話ボックスから、警察に、

「あの家から異臭がする」
という通報を匿名でした。

すると、火をつけたみたいな騒ぎになった。


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