お題:つらい「えいっ!」 必須要素:コミケ 制限時間:1時間 読者:80 人 文字数:2337字 評価:0人

いらないことした
ジェフリー・ディーヴァーさんのリンカーンライムシリーズの二作目は、コフィンダンサーで、私はそのタイトルを見た時とても興奮した。
「コフィンダンサー?それは何ですか?対象女性を殺した後に、その人の遺体と踊る人ですか?」
って思ってとても興奮した。その意味の分からなさ?そういうものに興奮した。いけない興奮の仕方なんじゃないかとは思ったんだけども、でも抗えなかった。

興奮した。

で、これは実際読んでみると違う。冷静に考えてみたらそんなの意味ないし、遺体と踊るなんてすごく大変だろうし。とにかく違う。違った。だもんで、三作目のエンプティ―チェアのタイトルを見た時も、気を付けようと思った。

「ハンプティダンプティみたいな!?なんか椅子に縛り付けて?何かを見せる的な?エンプティ―チェア?」
っていう様な事を考えるのはやめようと気を付けた。実際三作目を読んだ時は気を付けてよかったと思った。それは一種の治療法だった。エンプティ―チェア。んで、四作目が石の猿で、これまた私個人的には興奮を禁じ得ないタイトルなんだけども、それはまあ、いい。まだ読んでないし。

ただ、エンプティ―チェアを読んでみて、この世の中には様々な治療法というか、そういうのがあるんだなあって思った。

で、私もやってみようと思った。エンプティ―チェア。

空の椅子を部屋の中央に置いて、そこに誰かを思い浮かべてお話をしてみる。

この字ずらだけだと、こっくりさんか、あるいは一人鬼ごっこみたいななんか異様な感じがあるし、人様には絶対に見せられないので、カーテンは閉め切る事にした。見られたら大変なことになる気がした。新興宗教のような感じがある。

で、
「・・・」
やってみて思ったのは誰も思い浮かばないという事であった。誰も思い浮かばない。誰も椅子に座ってくれない。なんか外国のどっかにある、座ってはいけない椅子くらい誰も座ってくれない。

「なら仕方ない」
そこで、想像力とコネクトしてみることにした。もちろん私の想像力など大したことはないんだけども、でも何もないよりはまし。で、想像力には依り代が必要なので、椅子にコミケのカタログを置いて、それを依り代にする事にした。

この時点で、治療法としてのエンプティ―チェアというものからは大きく乖離していたが、私は私で、何かが見たかったし、何もないままに終わってしまうと本当に意味が無かったので、そのことに気が付くことができなかった。

つってもひらがなを書いた紙を用意したわけじゃないし、お米を入れた人形を用意したわけでもないし、別に何も準備してないし、何があるものかとそのような思いであった。

だもんで、次にエンプティ―チェアをしてみてそこに誰かが座ったときにはとても驚いた。
「おおう!」
って言った。しかし椅子には誰かが座った。私は私自身がエンプティ―チェアをするんだから、おそらく私が誰か知り合い、何か言いたい人、思い残しがある人が座るもんだと思っていたのに、その誰かは私の知らない人であった。

私の知らない人が、カーテンを閉め切った私の部屋の私の椅子に座った。お腹が痛いのだろうか、前かがみで、長い髪の毛が垂れていて、顔が見えなくて、でもなんか、

私は部屋のカーテンを開けた。外の光が入ってきて部屋は明るくなった。

振り向いてみると椅子に座っている人もいなくなっていた。
「・・・」
しかし試しにもう一度カーテンを閉めてみると、椅子に座っている人がまた出てきて、おっとこいつはおっと、と感じた。余計なことしたんじゃないか感が強い。すごく強い。

やばいこれはやばい。
余計なことした。
寝た子を起こした感!

そもそも誰か知らないけども、黒髪の長髪のおそらく女性というだけで、もうあれじゃないか。ベタすぎるじゃないか。さだーこか、かやーこか、あるいはじょゆーうれーの感が出まくり。

駄々洩れじゃないか!

で、あれなんだろ、なんかのタイミングであの知らない人が顔上げたりして、そんで髪の毛の間から顔が見えて、それで私はあれなんだろ?もう駄目なんだろ?

もー、駄目なんだろう?死ぬんだろ?

夏ホラー的ななんかそういうのなんだろ?

自暴自棄になる心を何とかしつつ、とにかくカーテンを開けて、一回冷たいコーヒーとかを飲んで、ブレイクした。

そんでそのままカーテンはあけっぱにして、一回そのことを忘れる努力をした。色々な事を忘れる努力をした。

そしたら意外と忘れれたので、ほっとしてたら、夜の訪れと共に再びその人が椅子に現れたので、もおおお!ってなった。

「・・・」
今度もその人はお腹が痛いのか、前かがみになっていた。でもさっきと違って今度は紙切れを指の間に挟んでいた。

その紙切れはおそらくコミケのカタログをちぎったものであった。

それをなんか、雰囲気だけども、こっちにアピールしてきている気がする。

「と、とる?」
私はワニワニパニックとか、ワンワンパニックとか、そういうのを思い浮かべながら、慎重にその紙切れをとった。

いきなりガッて掴まれたらどうしようかと思いながら、慎重に。一生分の慎重を使う気持ちで。

「・・・」
とった紙切れには、住所が書いてあった。

「近所じゃん」
すごく近所じゃん。歩いて五分くらいの所じゃん。

現実逃避したかったので、そこに実際行って、一軒家だったんだけども、とりあえず、観察した。その家はカーテンを閉め切っている。

んで、試しに駅前に行って、電話ボックスから、警察に、

「あの家から異臭がする」
という通報を匿名でした。

すると、火をつけたみたいな騒ぎになった。


作者にコメント

対戦作品一覧


ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:つらい「えいっ!」 必須要素:コミケ 制限時間:1時間 読者:110 人 文字数:3565字 評価:1人
「えいっ、えいっ……!」 またあのおじさんいるよ、とマナは眉をひそめた。 白髪と長い髭が特徴的なそのホームレスは、マナの通学路にある広い運動公園によく出没する。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:つらい「えいっ!」 必須要素:コミケ 制限時間:1時間 読者:80 人 文字数:2337字 評価:0人
ジェフリー・ディーヴァーさんのリンカーンライムシリーズの二作目は、コフィンダンサーで、私はそのタイトルを見た時とても興奮した。「コフィンダンサー?それは何ですか 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:inout お題:つらい「えいっ!」 必須要素:コミケ 制限時間:1時間 読者:81 人 文字数:3485字 評価:0人
神崎つらいさんが「えいっ!」とやると、幽霊が消し飛ぶのは有名な話だ。どんな怨霊も、どんな呪いもその一言で奇麗に消え去る。後に残るのは森林浴か大神殿かという清浄な 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:にい お題:つらい「えいっ!」 必須要素:コミケ 制限時間:1時間 読者:85 人 文字数:2596字 評価:0人
兄の引っ越しの手伝いをすることになった。就職浪人でいつまでも実家の一室を占領していたおじゃま虫が、ついに出ていくのだ。家族は祝い、喝采し、我慢も続けているとい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:秘吹 雫 お題:つらい「えいっ!」 必須要素:コミケ 制限時間:1時間 読者:46 人 文字数:2042字 評価:0人
「BLファンタジーってあるじゃん?」「あれか、実際はそんなつるっと入らないってやつ」「そうそう。現実的じゃないんだよね。というか真っ赤な嘘で、実際はありえない事 〈続きを読む〉

和委志千雅の即興 小説


ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:斬新な朝日 必須要素:ゴキブリ 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:847字
「え?ええ?」その日の朝日新聞の社説、天声人語は攻めていた。「まるでゴキブリ並みの生命力だ」みたいな事を書いてて、ん?何?これ悪口書いてるのかな?ってなった。し 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:黄金の愉快犯 必須要素:うまい棒 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:805字
散歩していると、犬を連れている人とすれ違った。いつもすれ違う犬だった。その道をある決まった時間に通過すると、必ずと言っていいほど会う。犬の種類はわからないが、秋 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:ありきたりな駄作 必須要素:ゲ○ 制限時間:15分 読者:16 人 文字数:1130字
年末年始はよく吐瀉物と遭遇した。吐瀉物。吐瀉したっていう動詞のやつ。だからまあ、ゲ○だ。「まあ、忘年会とか新年会とかのかなあ・・・」と思ってはいたが、それにして 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:昼のカリスマ 必須要素:犯人は主人公 制限時間:15分 読者:20 人 文字数:972字
ようつべで、禁則事項が増えたとかそういうニュースを見た。危険なやつはダメとか、そういうの。あおり系みたいなのもダメとかなんか、そういうの。赤い方でニュースの事を 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:日本月 必須要素:受験 制限時間:15分 読者:14 人 文字数:990字
月を見ながらお酒を飲もうと思って、ホームセンターに行って、長いはしごを買ってきた。「なにしたなや?」父母にはそのように言われて驚かれた。何せ長いはしごだ。たたん 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:ワイルドなライオン 必須要素:抜け毛 制限時間:15分 読者:16 人 文字数:924字
「せんせー、ライオンはあの顔の周りの毛が全部抜けたらメスになるんですか?」そんな何の脈絡もない質問をされた。ごはんの時間だった。その時間が始まってすぐ、間髪入れ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:暴かれた何か 必須要素:インドカレー 制限時間:15分 読者:23 人 文字数:895字
カレー屋さんに行った。まずまず盛況であるようだった。カウンターにはずらりと人が並び、トイレに近い一席しか空いていなかった。普段だったらその盛況ぶりを見て退散する 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:孤独な逃亡犯 必須要素:イヤホン 制限時間:15分 読者:18 人 文字数:910字
逃亡というのはつらい。逃亡っていう段階ですでにメンタル的に幾らか負担を負っているように思える。「でも、駅弁はおいしい」味付けがちょっと甘いのが玉にきずだけども、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:静かな食器 必須要素:純文学 制限時間:15分 読者:22 人 文字数:930字
実家には食器がたくさんある。食器棚も結構ある。自身、子供のころは、変化を求めて毎日違うコップを使ったり、カレーの度に違う皿を使ったりして、つまらない平坦だと思っ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:男同士の深夜 必須要素:冷え性 制限時間:15分 読者:22 人 文字数:1008字
友人と家飲みをした深夜、布団なんて当然出さないし、片付けもしてない鍋なんかが乗ったままの、炬燵でぐーすか寝ていると、不意に足に何かが触れた。「・・・足だ」足に足 〈続きを読む〉